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子育て中に読みたい一冊

最近読んだ本が面白かったので紹介します。

俵万智が書いたありがとうのかんづめというエッセイ集です。

小学生男子の子育てに奮闘する日々を、短歌とエッセイで描いた一冊。小学生男子の生活や日々の言動が少しおバカで面白い。笑いながらページをめくっていると、その中にハッとするような純な発言もあり、思わず考えこんでしまうこともありました。

中でも好きなエピソードは、小学生の息子が自宅で友達とカードゲームをしていた時の話。

子供たちが真剣にゲームをしていたある日、友達が負けて大泣きしてしまいます。その日は仲直りできないままに帰っていき、それを見ていた作者が「喧嘩するぐらいならカードゲーム以外の遊びをしたら?」とアドバイスをします。
後日、再び友達が自宅に来てまたカードゲームをしています。ところが、今度はずいぶん楽しそうです。会話を聞いてみると「ちぇっ、また勝っちゃって大変だよ」「あーあ、負けちゃったけど楽だなあ」と和気あいあいの雰囲気。
詳しく聞いてみると、ゲームの勝者がカードをまとめたり配ったりするというルールを付け加えたんだそうです。友達同士で悪い雰囲気になるのが嫌で、二人でルールを新たに考えたのです。
「カードゲーム以外の遊びをすれば?」という親の意見は、表面的に問題を避けただけで、本質的な問題の解決には至っていなかったと作者は気がつきます。
このエピソードに、子育ての面白さや難しさが詰まっているように思いました。

作者の息子が幼少期は東京で、そこから仙台へ。そして震災を機に仙台から石垣島へ移住したことで、都会と田舎の環境の違いが際立ったり、逆に意外な共通点が見えてきたりという描写も新鮮でした。

短歌をタイトルにしたエッセイなので、短歌の触れ方を学ぶ本としても面白かったです。育児日記や育児エッセイは数あれど、短歌も交えた本はこの一冊だけだと思います。
キラキラした育児の瞬間を切り取った短歌も、広がりのあるエッセイも、両方楽しめて、繰り返し読みたくなる一冊でした。

今小学生ぐらいの子を育てている方々、これから子育てに励む方々にお勧めしたい本です。

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