岸田総理がウクライナに行けるのか?外務省幹部に取材してみた結果は?
きょう、2月24日はロシアがウクライナ侵攻をはじめてちょうど1年。米国のバイデン大統領はウクライナを電撃訪問して、その存在を世界に改めて見せつけた。
一方のわが国のリーダー、岸田総理はゼレンスキ―大統領から直接お誘いを受けたものの、実行には至らず、気が付けば、G7議長国でありながら、G7で唯一ウクライナ入りしていないリーダーになってしまった。
そんな現状に焦りを募らせ、「必ず行くんだ」と周囲に決意を示す岸田総理だが、そもそも論として、日本の総理が国会開会会期中に、行くことは可能なのか?という問いには各マスコミの検証記事が答えてているか?むしろ、私の関心はそもそも岸田総理がウクライナに行くことにどれほどの意味があるのか?ということに尽きる。
侵攻から1年。再び雪解け、軍事専門家の間ではロシアが本格侵攻をまもなく再開するとみられている。対するウクライナはバイデン氏が訪問したキーウでも空襲警報が鳴り響いていたという。ドイツなどが供与する戦車がウクライナに届けば、東部地域では、独ソ戦以来とみられる、国家VS国家の、本格的な戦車VS戦車の、大砲を打ち合う古典的な戦争がいまにも始まるのだ。
そんな緊迫したなか行くなら、先方のお世話にはなるべくなるべきではない。警備警護は自前で、米国のように秘匿してウクライナに向かって、ゼレンスキ―氏と会談してから「実はいまキーウで会談しました」という形で発表する、それぐらいの芸当が朝飯前でないととても訪問は実現できない。
ただ、自前の警護と情報の秘匿、どちらも日本ではハードルが高い。
まず、自前の警護、外国訪問の際の総理など要人警護について自衛隊法には規定がない。法的根拠がないのだ。つまり自衛隊を連れて行って総理の警護をさせるには法改正が必要だ。戦時中の国に行くのにポリスガードだけでという訳にもいかないだろうけど、実際には現地の軍隊、警察に警護を任せることになるだろう。戦争中の国に陣中見舞い行くのに、「俺の警護もしっかりしてね」では、災害にボランティアにいって、ボランティアしてもらうようなもの。少々迷惑な話だろう。
続いて、情報の秘匿。これにも法改正が必要になる可能性がある。日本でも国会会期中の外国訪問は禁じられているわけではない。ただ、衆参両院のの議院運営委員会の理事会で許可がいる。要は国会への事前伺いが必要なのだ。この議運の理事会というのは非公開が原則だが、与野党20人ほどの議員が出席する、その場で政府側が総理のウクライナ訪問、これは到着まで秘密厳守で、といっても衆参両院で20人×2で40人ほどに通知して、漏れないというのはかなり可能性が低いだろう。
私が外務省幹部に聞いたところ、以上二つの理由から厳しい。だからポーランド行きという日程にして、現地で急きょウクライナに行くというのが秘策として検討課題の一つだったらしいが、それもバイデンさんに先を越されたから、いまさら岸田総理がポーランド訪問します、と発表したら、当然ウクライナ行くんですね、となる。
つまり検討します、といって、後手後手になって、どんどん可能性が狭くなってしまったのが現状だけど、そもそも何のために行くのか?という真の目的が見えづらいのが本当に行けなくなっている理由だろう。
日本は武器の供与一つとっても、戦車やミサイルはもちろん、ウクライナが日本に求めた、対戦車ミサイルや大砲の弾丸さえ供与できない。武器の輸出、供与に厳しい規制をしているからだ。大国ロシアとの消耗戦を強いられ、多くの兵士や兵器、弾丸を失っているウクライナにいくわけだが、そこで岸田総理は次のように話すのか?
「戦車もミサイルも、弾丸の1発も日本は供与できません、ただ、いまG7の議長国なのであなたたちとの連帯を確かめに来ました。私たち日本人はウクライナとともにあります。50億ドル無償援助します」
これでは、湾岸戦争の際の「湾岸トラウマ」を再来させるだけだろう。あのとき、日本は1兆円以上の金を払った。それでも戦後、侵攻を受けたクエートがニューヨークタイムズに出した世界各国への感謝のメッセージに日本は入っていなかった。2015年の集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法改正のとき、私は多くの外務・防衛官僚から当時のことを「屈辱だった」と異口同音に聞いた。これが、いわゆる「湾岸トラウマ」だ。
今回も状況に変わりはない、私はだから戦車や弾丸をガンガン提供できるように法改正をしよう、と訴えたいわけではない。そこは世論を見ながら国会で議論して決めていくこと。日本はたとえ世界からちょっと特殊とみられても憲法9条を基軸とした戦後体制を維持していくのか、または、台湾有事などを見据えて、他国のように侵略を受けている国に対して武器などの供与を可能にするのか。訳の分からないユーチューバー参院議員を首にするかどうかなんかよりはるかに国会で議論するべき重要テーマだ。
ただ、話が少しそれたけど、弾丸の一発も供与できない日本の総理がとにかくウクライナ訪問にこだわることに異議を唱えたい。世界からみたら日本の総理が行って、連帯や協力を口にしたけど、「戦車も弾の一発もあげられません、頑張ってね」、では、「ユー、何しに来たの?」って、むしろ日本への不信を与えるだけではないか?世界は日本の憲法や武器輸出禁止の歴史など踏まえて理解はしくくれない。それより地雷除去などウクライナに絶対的に必要でかつ日本にアドバンテージのある技術の提供に力を入れていけばいい。それこそ、本当の意味での連帯になり、ウクライナに寄り添うことになるのではないか。
ただ、行けばいいってそんな問題ではない。岸田総理はただ「行きたい、行きたい」と駄々っ子のように言うだけではなく、いまの日本の法体系で可能な支援にまず力をいれて、どうすれば日本の支援を世界に発信できるか、ウクライナの人たちのためになるか、ということに思いをめぐらせるべきではないか。そして今後のリーダーのために、自分が障壁と感じたことを国会での法改正のために、与党に求めていく、それが日本のリーダーとしてあるべき姿だろう。
外務省幹部
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サミット
日本のリーダーの存在感
台湾にもしものとき
戦車も
弾丸の一発も
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