京都市立芸術大学と京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)の名称問題

昨年、京都造形芸術大学が、既存の京都市立芸術大学の名称に酷似する京都芸術大学を名乗り、京都市立芸術大学が京都芸術大学を訴え争っていた件。裁判所から強い和解勧告があって和解が成立したとのこと。私は反対署名の協力もしておりましたが、残念な結果に終わりました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/4599b00ad780826578e51d37654116e4c7fffb62/comments

https://news.yahoo.co.jp/articles/a70ae58bf0a80712f66ca01af45cfdc1c1958b5b

和解は、端的に述べると、旧・京都造形芸術大学が京都芸術大学(Kyoto University of he Arts)を名乗ることは認め、略称の「京都芸大」「京芸」は認めないとの内容。略称の問題以前に、本名の「京都芸術大学」という表記の類似性とブランドが問題なので、実質、旧・京都造形芸術大学側の思惑通りに事が運んだことになります。

法的な問題以前に、ブランド力のある名称を獲得するために、既存の名称に酷似する名称を名乗ることは、ニセモノや盗作、著作権などに敏感であるはずの芸術系の大学にあるまじき行為であると、今でも私は思っております。

大学名は、仕事や就職の際に大きな影響力を持ちます。芸術系の有形無形の作品では、作り手が、どこの大学の出身であるかが参照されることは少なくありません。京都市立芸術大学と京都芸術大学、こんな、ややこしい名前が世の中に併存していることは、卒業生、現役の学生、未来の学生にとって、非常に不幸なことです。

今後、「京都芸大出身です」と自己紹介があった人と出会った時に、いちいち「どっちの京都芸大?」と聞き直さないといけません。和解勧告では京都芸術大学が略称として京都芸大を名乗ってはいけないとなっておりますが、今後、膨大な人数の現役生、卒業生が、それを徹底するとは思えません。悪気がなくても、京都芸術大学を京都芸大と言ってしまうことがあるでしょう。

プロフィールに「京都芸術大学」と書いていた場合、事情を知らない人は、京都市立芸術大学と間違うことは続くでしょうし、「市」の文字が脱落したものかそうでないのかの確認が必要になります(自身のホームページやチラシなどで間違うことはないのですが、新聞や雑誌で紹介される時には必ず起こり得る事故です)。

私自身、これまでも、自分の曲や写真、アイデアを盗用されたことが何度もあり、大変な思いをしてきました。その度に、個人でできる万全の準備を整えて、何とか危機を乗り越えることがでました。今回の事例を見ていると、おそらく、裁判をしていたら、まっとうな判断が出ていたかどうかわかりません。もし、盗用、盗作が問題なしと認められていたらと考えるとゾッとします。

裁判は和解となりましたが、原初的な問題は何ら解決されておらず、実質、京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)の「勝ち」であると私は捉えております。関連領域であるだけに悔しくてたまりませんが、これ以上、何ができる訳でもなく、たただた無力感を感じております。

京都市芸術文化特別奨励者
玲月流 初代篠笛奏者 森田玲

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