1分シマウマ
特に祈る神もいないので、朝礼の一分間の黙祷中、私はサバンナのシマウマになる。頭の中で草原を歩き、乾いた風に立髪を靡かせる。草食動物にしては派手に思えるあの縞模様は、仲間同士で群れることで、肉食獣の目には草原と同じに見えるらしい。いわば、生きるための没個性。
ありがちな制服の会社に勤め、可もなく不可もなく、黙祷は一応目を瞑って過ごす私のこれもまたそう、生存戦略だ。
と、見慣れない人が壇上で話し始める。新任の役員。若くてイケメンでさぞかしモテるんだろうなあと眺めていたら目が合った。近づいてきて手を取られる。何で?
「今話した通り、我が社のワークライフバランス向上実現のモデルロールになってくれませんか?」
キラキラした瞳が目の前に迫る。
眩しくて目を逸らしたいのに、そこに映り込んだ私が嬉しそうに、ねえ!嵐が来るわよ!と叫んでいる。
頭の中のシマウマは、驚いてとっくに彼方に走り去っていた。
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先週に引き続き、下記の企画に参加させていただきました。ありがとうございました。
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