現代のビジネス環境では、迅速かつ的確な意思決定が求められています。しかし、一人であらゆる視点を持つことは困難です。私は、最終的な意思決定者(CEO)として、複数のAIエージェント達と事業運営・議論できる環境を求めていました。
そこで、戦略、マーケ、技術、財務、法務など、各専門領域の「仮想役員」の役割を担うAIエージェント達が議論を行うマルチエージェント議論アプリを開発しました。
本記事では、このアプリがどのようにして個人や大企業での意思決定を強力に支援するか、マルチエージェント議論アプリをどのように開発したか(Replit Agentでの開発方法、SWARM実装内容)を解説します。
コンセプト
このマルチエージェント議論アプリは、SWARMフレームワークを活用して実現されています。ユーザーであるCEOは、専門知識を持つ仮想的なAIエージェントを設定し、彼らとの議論を通じて意思決定を行います。各エージェントの役割や知識背景は自由にカスタマイズ可能で、これにより多角的な視点からのアドバイスや懸念事項の洗い出し、改善案を得ることができます。
主要機能と利点
多角的な議論:各部署の背景知識を持ち、各部署の役割を担うAIエージェントの達と議論できるため、幅広い視点で考察しながら方針案を導きます。
ユーザー自身がエージェントを設定可能:必要に応じてエージェントの役割や知識をカスタマイズできます。
PMOエージェントによる効率的な意思決定サポート:各エージェントの主張を踏まえ、PMOエージェントが議論を整理し、最適な方針案を提示します。
具体的で実践的な議論:議論を深化させるために資料のアップロードが求められることがあります。追加情報をアップすることで、エージェント達はより深い議論を展開します。
ユースケース例
ケース1:1人CEOが事業における意思決定をするために使う場合
個人開発者が、自身の開発したAIアプリをどのように配布・販売しようか悩んでいるとします。以下3つの選択肢について検討していますが、自身が負担するコストやメンテナンス労力、配布準備のための技術的難易度、購入者満足度の観点でトレードオフがあり、落としどころを見つけるのが難しいと感じています。
有料ブログでソースコードを全公開
exe化して有料配布
VMサーバーでホストし一定期間のみ稼働
そんな時、本アプリを使ったら、AIエージェント達はどのように議論をし、どのような提案をしてくれるでしょうか?
実際に試してみた動画をご覧ください!
上記のデモでは、以下のAIエージェントを議論に参加させました。
戦略・ビジネスモデルエージェント:事業継続性やブランド価値を考慮して最適な配布方法を検討。
市場・顧客分析エージェント:顧客満足度やUXを分析。
技術・プロダクト開発エージェント:技術的なハードルやセキュリティ、メンテナンス難易度を評価。
財務・運用コスト分析エージェント:各配布方法のコスト試算。
法務・ライセンスエージェント:法的リスクの検討。
サポート・コミュニティ運営エージェント:サポート体制や顧客満足度への影響を分析。
PMOエージェント: 各エージェントから提示された意見をとりまとめ、全体俯瞰した視点から方向性を提示。部門間で齟齬がある場合や対立する案が出た場合は、中立的な立場で利害調整を行い、合意点を見出す。
ユーザーが投げかけた議題に対して、1周目の議論では「利用者に高品質で最新の体験を提供しつつ、APIキーの管理等の面でセキュリティ対策が最も強固であるため、VMサーバーでのホスティングを推奨する」という方針案が出ました。ただし、運用コストが高くなることが懸念されるため、各選択肢の詳細なコスト分析レポートを提示することや、法的リスクの評価・市場トレンド等に関する追加データを提示するよう、要求されました。
そこで、要求された追加資料(ChatGPTに作らせたダミーデータ)をアップロードしたところ、2周目の議論が開始され、PMOエージェントによる総括は以下のようになりました。
資料を追加したことで、運用コストに関する懸念点が払拭され、VMサーバーでのホスティングを中心に事業を拡大し、サブスクリプションモデルを採用する方針で合意が取れました!
ケース2:企業において複数部署間の意見整合をするために使う場合
異なる立場の人が、トレードオフの関係にあるような議題に対して意見を出し合い、合意形成していく場面は、企業においてもよくあると思います。
例えば、ある企業が自社のIoT製品に二段階認証を導入すべきか否か、検討している場面が挙げられます。セキュリティ強化、ユーザー利便性、開発コストやリソースのバランスを考慮する必要があり、多くの部署が関与しながら落としどころを見つける必要のある、複雑な意思決定です。
本アプリを使って議論させてみたところ、「全面導入案」「部分的導入案」「オプション導入案」の3つの選択肢が議題に挙がり、方針案としては「部分的導入案」が提案されました。
まとめ
上記のケースから、このマルチエージェント議論アプリは個人から大企業まで、さまざまな規模での意思決定を強力に支援できそうだということがわかりました。各エージェントが専門的な視点から意見を出し合い、PMOエージェントがそれらを統合することで、バランスの取れた方針を導き出すことができます。
有料パートのご案内
本アプリは、AI開発ツールReplit Agentを使って開発・デプロイしました。
以降のパートでは、Replit Agentを使ったSWARMアプリ開発プロセスのコツと、アプリの実装内容(設計内容・SWARMフレームワーク活用コード)を紹介します。
オープンソースのフレームワークがたくさん登場する昨今、「これは何に使えるのだろう?」と試行錯誤する方も多いと思います。そんな時、フレームワークを使った試作品をReplit Agentでパパっと作ることができれば、イメージが沸き、新たな活用方法が見つかるかもしれません。ぜひ参考にしてみてください!
Replit Agentを使った開発プロセスのコツ