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どんな苦境が訪れてもわたしはPhotoliを選ぶんだ。だって地獄を見たいから

「僕と一緒に地獄を見てください」

わたしが所属する組織、Photoli代表の横尾からこんな言葉をもらったのはまだ2020年が始まったばかりの1月半ばのことでした。

この言葉を聞いたとき、わたしの中に小さな覚悟の種が生まれました。そして、約1年が経過した今、その種は実を付け確固たるものとしてわたしの大切な道標となっています。

今回は2020年という時間の中でわたしがPhotoliに対して抱いた思いの変化を少しだけお話できたら&自分のためにも記録しようと思い、この記事を書くことにしました。

良ければお付き合いください。


Photoliとわたしのこと

申し遅れました、鈴木詩乃です。「Photoli(フォトリ)」という写真のライフスタイルメディアで編集者 / ディレクターとして働いています。

【 Photoliについて 】
写真の撮り方やコツなどをご紹介するメディアです。Instagramを中心にコンテンツをお届けしています。

Web(spのみ) - https://photoli.jp/
Instagram magazine - https://www.instagram.com/photoli_info/

働き方はフリーランス、ただし組織所属。そんな働き方を丸2年ほど続けています。

詳しくは昨年の同じ時期に公開した長ったらしいnoteにも書きましたが……2019年の初め頃、とある企業の正社員として入社が決まっていたのですが、その内定をお断りしてPhotoliを続ける判断をしました。

軽く経歴を話すと、2016年の夏にフリーランスライターとして働き始め、2018年12月にPhotoliにフリーランスのまま編集者としてジョインしました。

今は編集者 / ディレクターとして、自社メディアのコンテンツ企画・編集、クライアントワークの進行管理・ディレクション・企画・コンテンツの編集などに関わっています。

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今の働き方に至るまでには紆余曲折がありました。フリーランスという孤独と仲良しな働き方なので、それ相応に悩みが尽きません。

何時に起きても良いし、何時に寝ても良い。自由に休みを取って良くて、働いた分だけお金をいただけるシンプルな仕組みはとてもわたしに合っていました。

ただし、それが必ずしもいつだって幸せだとは限りません。仲間のいない環境は強い孤独感を生むし、成長環境がないので焦燥感にも駆られます。

自分を癒やしてくれるものは売上しかなくて、口座に入るお金だけが自己肯定感を満たしてくれました。

そんな働き方を2年ほど続けると「ここじゃないどこか」を自然と求めるようになります。その答えはわからないけれど、とにかく新しい環境がほしいと切に願う。

フリーランスを数年続けた人が組織に戻る話をよく耳にしますが、その背景には成長欲や仕事の規模などが挙げられるのだと思います。


フルコミットを選びたかった

話を戻します。Photoliにジョインしたばかりのとき、わたしのコミット量は週に3〜4時間ほどだけというささやかなものでした。

ライターのお仕事のサブ的な立ち位置で編集のお仕事をちょこっと、という感じ。

その後、2019年の春頃に週3日程度、秋頃には週4日程度と、じわじわとコミット量が増えていました。フルコミットには届かないけれど、週のほとんどはPhotoliにいる、そんな具合です。

その証拠に、昨年の年の瀬に書いたnoteでは2020年の目標として「Photoliにフルコミットする!」と意気込んでますからね。

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結論からいうと、この目標は2020年きちんと達成できました。「できました」というか、横尾が叶えてくれました、と言うほうが正確ですが。

ちなみに、なぜフルコミットにこだわっていたのかというと、Photoliという沼に溺れたから、というのが正確な表現になります(笑)。

事業内容に共感したとかもあるんですが、長いこと知っている横尾涼という人間が本気で成長させたいと思っている事業だから、という感じ。

「Photoliのためにできることならなんだって」昨年のわたしはそんな気持ちでしたね……。


フルコミットしたいわたし VS フルコミットするべきじゃないわたし

このときのわたし、意気揚々と「フルコミットする!」だなんて語っていますが、正直リアリティのない目標でした。売上的にも、業務量的にも。

わたしが生きている限りのすべての時間をPhotoliに使いたいという思いはあったけれど、それを望んだとてPhotoliにとってはtoo much。その上、わたしはわたしで暮らすことがままならなくなる、という状態でした。

過去に書いたnoteでもこう触れている通り。

フルコミットしたいかどうかと聞かれると、即答できるわけではなかった。それは「したいかどうか」ではなく「するべきかどうか」を考えてしまうからだ。

Photoliは、事業規模がまだまだ大きいとは言えない。人件費が一番収支を圧迫する環境下で「フルコミットしたいんですよね」と言うのはわがままのようにも思えた。

そして、自分のリソースを全てPhotoliに使うことが、Photoliの成長と自分の成長のための最適解なのかどうかもわからなかった。

週3は会社員、週4はフリーランスとしてお互いで得た知見を活かしながら働く流行みたいなものがある。副業を奨励しない会社は悪だ、みたいな風潮すらある。

その中で「一つの組織に所属したい」と願うのは、古びた誤った考えなのではないかと思ってしまった。間違った選択をするのが怖くて怖くて仕方がなかった。

四度目の正直で、本音が聞こえた」 より

フルコミットすることがすごいとかえらいとか、そういうことではありません。でも当時のわたしは「もっとPhotoliに関わる時間を増やしたい」「もっとPhotoliに浸かり込んでいたい」そう思っていました。


でも、叶わない……どうしようかと悩んでいたとき、思いがけないお声がけをいただきました。

仕事仲間でもあり、とあるスタートアップで働く方からのお誘いで、内容は「メディアの運営に関わってくれる契約社員か業務委託の方を探しているんだけど、一緒に働かない?」というもの。

正直、お誘い自体も仕事内容もとても興味深いものでした。シンプルに面白そうだった。

加えて、コミット量は週3〜4程度で良いという。Photoliを知ってくださっている方だったので「もちろん続けながらで大丈夫です」とのこと。めちゃめちゃ好条件じゃないですか……。

「よかったら検討してみてもらえませんか?」という一言をいただいて就いた帰路では、すでにPhotoliとの兼業を検討していました。

自分自身の成長にもつながる環境で、Photoliの知見も活かせる。もちろん得た知見はPhotoliにだって還元できます。

それなら、週3日ほどは企業で働きながら、Photoliを続けるという選択は「アリだな」と思ったわけです。


……本当は、心の中はモヤモヤした感情でいっぱいでした。「本当に良いの? ねえ?」と問いかけられているような。

でも、わたしが望むベストな環境は、今すぐには作れないんです。これ以上Photoliに関わりたいとわたしがどれだけ望んでも、それは現実にはならないのだから。

今振り返ると、自分の感情を一度見ないふりして、論理的なメリットで判断しようとしていたのだと思います。


Photoliとの兼業を考えている──と、代表の横尾に伝えたのはまもなくのこと。話してみると、こう返ってきました。

「いやです。僕と一緒にこのままPhotoliで地獄を見てください」


覚悟の後押しをくれた一言

2019年もPhotoliとの関わり方に悩み、2020年も同じようにPhotoliとの関わり方に悩んでいました。

大変ありがたいことなのですが、わたし自身、Photoliに入ってからの2年間で多くの企業からお誘いをいただいています。雇用形態も組織規模もまちまちで、どのお誘いも嬉しいものばかり。

お誘いくださった企業の方に、結果として失礼なことをしてしまっているような罪悪感でいっぱいになることもあります。お断りしてしまってごめんなさい。

わたしは元来、自分に対する自信が皆無なので「こんなわたしにお声がけしてくださるなんて」といただいたお誘いにはっきりとお断りできない弱さがありました。


でも結局、まとめると「覚悟」ができていなかったんです。

Photoliを選びたいけれど選ぶ自信がないから、他の環境に目を向けようとしてしまうんだなって。

まだ未熟な組織を成長させる自信も、自分の生活さえ不安定な環境でフルコミットできる自信も、なにもかもが足りませんでした。

口では「フルコミットしたい」と言うけれど、それはあくまで安心が保証された上でのもの。そこに伴う責任はすべて横尾に押し付けて甘えようとしていた自分に気が付きました。

「僕と一緒に地獄を見てください」とストレートに伝えられた言葉は、そんなわたしの胸の内を見据えて放った弓矢のように思えました。

強烈すぎて数分ほどは思考停止したけれど、その次に溢れた感情は表現しきれない嬉しさです。

週3とか週4とかではなく、Photoliと正面から向き合いきることでしか見えないものがあって、わたしはそれを見たいと切に願っている。

それならば、その環境は自分で作るしかないわけで、誰の責任でもなく自分の責任として道を作るしかない。そんな当たり前のことに、このときようやく気づいたんです。


相変わらず今年も横尾は自分で発した言葉をすぐに忘れてしまうので、この言葉を発したことをもう忘れているんじゃないかと思います。

でも、彼がどんな思いで語ったのかを考えると、一生をPhotoliにベットしても後悔しないなと、そのときやっと身を持って実感しました。

その後、さまざまな環境の変化もあり、現在はPhotoliでほぼ(*1)フルコミットという形で働かせてもらっています。

わたしの迷いや意思を汲み取って、なんとか実現できるよう形にしてくれる。言葉では語ってくれないけれど、いつだって横尾はそういう人間です。


怖くても不安でも立ち向かいたい。Photoliにはそう思わせる強さがある

わたしは、自分でも引くほど逃げ癖があります。大学だって専門学校だって、2年と続けられずに辞めちゃったような人間なので。

なるべく自分が傷つかないように、深入りしすぎないようにと思って、人とも仕事とも付き合ってきました。長く関係を築けば築くほど、見たくない自分の腐った根幹とかも見えちゃうから。嫌われるのが怖いんです。

Photoliで過ごしているこの2年間は、まさに自分が露呈していくような時間でした。取り繕ってきた化けの皮がジリジリと剥がされていて、目を背けたくなるような自分の嫌なところがどうしても見えてしまう。

できないことも多くて、想像以上にネガティブで、人に甘えていて、ちゃんと怠惰。みるみるうちにバレていく素性を見て、横尾を含めメンバーのみんなは呆れてしまわないだろうかと不安でした。

でも、その心配は杞憂に終わりました。むしろそれらしく演じるように振る舞ってしまうわたしに対して、横尾はとても厳しかったです。向き合うことから逃げているわたしの性格に気づいていたからでしょう。

直接言われたことはないけれど「逃げんな」と伝えられているような気がしました。まあ、冒頭の地獄発言はそれに該当するものかもしれませんが。


2021年の志はもっとしんどい地獄を見ることです

2020年の一年間を振り返ると、わたしは自分自身の行動に合格点は愚か及第点すらあげることはできません。

覚悟を決めるには、それ相当の時間がかかります。実際、働く中で責任感がないだとか、コンフォートゾーンにいるだとか、横尾にはちゃめちゃ怒られもしました。

少しずつ意識は変わってきているにせよ、春も夏も秋も、自分の行動に甘さや怠惰さがあったことは正直否めません。

それでも、春より夏、夏より秋、秋より今のほうがきちんと地獄を覗いている感覚があります。まだまだ随分とぬるいもんですが、それでもたしかな手応えがあります。

今のわたしなら未来のPhotoliをもっとよくできるっていう、その過程で出会うであろう見たことのない地獄もみんなとなら乗り越えられるっていう、そういう手応えが。

「フルコミットさせてくれ」と言ったからには、その言葉に責任を持てる人間にならなくちゃ。もっとつらい試練、大歓迎だよ。わたしの今は、そういう心持ちです。

***

何度も言っていることですが、Photoliはメンバーみんながとても優秀です。各分野のプロフェッショナルであり、一流のクリエイターです。

だからちょっとでも気を抜くと自分のアイデンティティをすぐに見失いそうになります。「わたし、Photoliに必要かな?」と(この間も、深夜にそんなことを考えてしまって横尾にDMしたらま〜怒られた)。

「必要かな?」じゃないんです。「必要だ」と言い切れるだけのことを、わたしはしなくちゃならない。Photoliがわたしになにかを与えてくれるわけじゃなくて、Photoliを作るのは私たちなんだから。

そんな簡単で単純なことを理解するのに、わたしは一年間という時間を費やしてしまいました。

でも、もう逃げも隠れもしない。わたしはPhotoliの未来を明るくするために生きる覚悟ができたので。


昨年のわたし、生意気にもnoteの締めでこんなことを書いていました。

──Photoliを通して、わたしは横尾に夢を見せたい。でも、ひとりじゃ難しいから、みんなで夢を形にしたい。

そうして生み出す世界では、ひとりでも多く写真に関わり、写真を楽しみ、写真を通して小さなしあわせを見つけてほしい。

生半可な気持ちでこんなこと書くなよと過去のわたしを小突きたい気持ちもありますが、この言葉は今も本音です。


さて、どんな話題で2020年を振り返ろうかとすごく悩んだのですが、前回から引き続き横尾語録を引用してテーマを設定しました。いかがでしたか…?

わたし以外にこういう記事かなんかでPhotoliのことを記録する人がいないので、前回の記事もなんか面白がって読んでいただいたみたいです。

とはいえ、書いている本人は毎回不安です。わざわざ書くまでもないかもしれない話をつらつらと……と思ってしまうので。

今回もある種のエンターテインメントとして読んでいただきつつ、なんならPhotoliがちょっと好きになってもらえたら良いな。そんな思いで書きました。

最後までご覧いただきありがとうございました。来年もPhotoliをどうぞよろしくお願いします。良いお年をお迎えくださいね〜




*1)
いろいろな方が読んでくださるかもしれないので、誤解のないように添えますが、現在でもフリーランスとしての執筆のお仕事は一部継続しています。

執筆の場合、個人請けするほうがスムーズというケースのほうが多いため、Photoliを介さず直接お請けしているという感じです。現在は月2〜4本程度を個人名義でお請けしているので「ほぼ」と記載しました。ご理解ください。

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