四弘誓願(『摩訶止観』より)
衆生は虚空のごとしといえども、空のごときの衆生を度せんことを誓う。
煩悩は所有なしとしるといえども、所有なき煩悩を断ぜんことを誓う。
衆生の数ははなはだ多しとしるといえども、はなはだ多き衆生を度せん。
煩悩は辺底なしとしるといえども、辺底なき煩悩を断ぜん。
衆生の如は仏の如のごとしとしるといえども、仏の如のごとき衆生を度せん。
煩悩は実相のごとしとしるといえども、実相のごとき煩悩を断ぜん。
法門は永寂なること空のごとしとしるといえども、永寂を修行せんと誓願す。
菩提は所有なしとしるといえども、所有なきなかにわれ、ことさらにこれをもとむ。
法門は空のごとくして所有なしとしるといえども、画繢(がかい)して虚空を荘厳せんと誓願す。
仏道は成所成にあらずとしるといえども、虚空の中に樹を植えて華果を得せしむるがごとし。
法門および仏果、修にあらず不修にあらず、証にあらず得にあらずとしるといえども、証得する所なきをもって、しかも証ししかも得ん。