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ブレインダイブとテレパシー—古代の神話から現代のエンターテイメントへ

藤子・F・不二雄の世界に去年からハマってます。
『ドラえもん』の未来道具は、ただのSF的なガジェットではなく、人間の欲望や倫理に深く切り込む要素が満載です。
「タイムマシン」で過去をやり直したいと願う気持ちや、「どこでもドア」で楽をしたい気持ちには、僕たちの日常の欲望がそのまま映し出されています。その道具が引き起こす問題は、便利さの裏にある葛藤やジレンマを描いていて、まさに現代のテクノロジーに通じるテーマですよね。

また、藤子不二雄の短編集もめちゃくちゃ面白く、これまで読んでこなかったことを悔やむほどの内容です。
藤子不二雄ってこんなにパンクな人だったんだ…!

その影響でSF小説をよく読むようになったのですが、特に古いSF作品にはテレパシーのような概念が頻繁に登場することに気づきました。
テレパシーは世界でありえないものの代表格的ポジションですからね。

子どもの頃から見ていたX-MENのテレパシー

テレパシーという概念とその進化

ブレインダイブとテレパシーを語る前に、テレパシーが時代とともにどのように人々に寄り添ってきたのか少し書いてみたいと思います。

テレパシーという概念は、古代から存在していたと考えられます。
古代人にとって、「言葉を介さずに他者の思考や感情を感じ取る」能力は、シャーマンや巫女、預言者など特別な存在に与えられた神聖な力として捉えられていました。
例えば、古代ギリシャのデルポイの神託では、「神の声」を受け取り、それを通じて人々の思考や未来を伝える役割を果たしていました。これは、現代でいうところのテレパシー的な概念に通じるものと言えるでしょう。

デルポイ

この時代、人々は「他者の心にアクセスする」ことで、相互理解を深め、人間関係を強化し、コミュニティの結束を高めていました。

しかし、中世ヨーロッパにおいては、「テレパシー的な概念」は魔術や悪魔崇拝と結びつけられることが多く、異端として排斥されました。この時代、人々は「心を読まれる」という行為に対して強い恐怖心を抱いていたのです。

黒ミサ

テレパシーという概念が生まれてから、まだ140年ほどしか経っていません。
1882年にフレデリック・W・H・マイヤースが「テレパシー」という言葉を提唱したことは、この概念を科学やスピリチュアルの文脈で再定義する契機となりました。当時は電信や無線の発明が進み、目に見えない力が現実のものとして受け入れられ始めた時代。だからこそ、テレパシーのアイデアも「ありえない」と断じられず、むしろ新しい科学の可能性として捉えられたのです。

そして、冷戦時代には超能力の研究が国家レベルで行われました。「リモート・ビューイング」の研究やESPカードの利用は、テレパシーを科学的に証明しようとする試みであり、テレパシーが軍事や諜報の文脈で脚光を浴びた時代を象徴しています。

あたらしくんもよく使ってるESPカード

https://youtu.be/CjdQME-Tjwc?si=jggZxezrXy4gWtzt

このように、テレパシーは時代背景によって科学、スピリチュアル、政治のいずれにも作用し、その影響は多岐にわたりました。

SF作品においても、この概念は多彩な形で進化しています。
たとえば:

  • アルフレッド・ベスター『分解された男』
    テレパシーが一般化した社会で、他者の秘密が簡単に覗かれるようになり、それによって発生するプライバシーの喪失や社会的葛藤を鋭く描いています。

分解された男
  • フィリップ・K・ディック『ユービック』
    テレパシーが商業や犯罪に利用される社会を描写し、商品化による利益追求やその弊害を描き出しています。

ユービック

テレパシーが商品化される概念がおもしろすぎる。
これらの物語は、テレパシーが社会や個人に及ぼす影響を探求し、その未来を示唆しています。

古代からSFにおいてテレパシーは、「他者の心を覗きたい」という人間の好奇心と、「心が読まれる恐怖」という二重性を描きました。

ブレインダイブとテレパシー

このように時代ごとに進化してきたテレパシーの概念を、現代のエンターテイメントとして再構築したのが「ブレインダイブ」です。
テレパシーが持つ「他者の心を知りたい」という欲望と「心を読まれる恐怖」は、観客の驚きや興奮として巧みに形を変えています。
観客が体験するのは、まさに現代版のテレパシー。
しかも、それがマジックとして「ありえないけど目の前で起きている」という形で実現されるのが面白いところだと思います。

観客は心を読まれている体験をし、まるでSFの中にいるかのような錯覚を楽しむことができるのです。

いや、むしろ怖がられます。

SFではテレパシーが進化や遺伝による能力として描かれることが多いですが、ブレインダイブはマジックを駆使して、それをエンターテイメントとして実現しています。
ブレインダイブは、テレパシーが宗教的・神秘的・科学的な意味を持った歴史を、エンターテイメントとして昇華した現代版と言えます。

SFの中では、テレパシーはスパイ活動や正義や国のために使われることが多いですが、ブレインダイブは純粋に観客を驚かせ、楽しませることを目的としたエンターテイメントです。

僕はそれが今の時代にとって一番素敵で意義のあるテレパシーの使い方だと思います。

それでは!

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しんのすけ
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