『初デート』【ショートストーリーのような詩のような何か】
僕はモテない。
小学生の時は足が遅くて、中学の時は球技ができなくて、高校の時は楽器ができなくて、大学の時は酒が弱くて、社会人になっても容量が悪くて。
そんな僕でも恋をした。
大好きなアニメのオフ会で、たまたま隣に座っていた君。
趣味の話で盛り上がり、映画をみる約束をした。
大好きなアニメの映画だ。
初めてのデート、映画を見てからご飯に行った。
行った先はサイゼリヤ。僕がお店を探すより先に言われたのがこんな言葉。
「私はサイゼのエスカルゴが好き、だからサイゼにいきたい」
そして着いたサイゼリヤ。美味しそうにエスカルゴを頬張る君。
食べ終わったらドリンクバーのジュースを片手に映画の感想を語り合う。
これが僕らの初デート。
10年前のそんなことを思い出しながら、君とこれから人生を共に歩んでいく。
俺はモテる。
小学生の時は足が早く、中学ではサッカー部、高校ではバンドに入り、
大学では酒に強く、会社では成績がトップクラス。
人生のどのタイミングでも女に困らなかった。
学生の時はクラスのマドンナと付き合い、今の女は読者モデルをやっている。
出会いの場所はやっぱり合コン。
二軒目の店で口説き、流行りの恋愛物の映画をネタにデートに誘い出す。
映画の筋書きなんて見る前からわかってる。
男と女が出会って恋して、障害を2、3個乗り越えて、最後に子供を作って終わり。
デートの流れもお決まりだ。映画を見た後は、予約していた間接照明が付いているイタリアンに行く。
こいつがやることもお決まりだ。
運ばれてきた料理の写真を撮りまくり、食べる前から最高だったとSNSに投稿する。
俺はニコニコしながら相槌をうち、ちょっとイジればそれでよし。
いい感じのタイミングで店を出る。
さりげなくタクシーに乗り、さらっと自分の家に連れていく。
これがそいつとの初デート。
10年前のそんなことを思い出しながら、今から何十回目かの初デート。