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リアルビジネスに求められる変化とは? 新たな「ビジネスマッチング」と「収益化」

昨今の新型コロナ感染症の拡大により、ビジネスを取り巻く環境は大きく変化しています。

外食事業者など、リアルの場でのコミュニケーションを前提としたビジネスモデルは厳しい状況に立たされている一方、「Zoom」に代表されるようなオンライン完結型のサービスを提供する事業者はユーザーを大幅に拡大しています。

オープンイノベーションの文脈でも、「オフライン→オンライン」へのビジネス潮流の変化は大きな影響があるでしょう。“リアルで会うことが当たり前”だったビジネスモデルが、with/afterコロナの文脈では“オンラインが当たり前”という前提で議論をし直さなければならない可能性も考えられます。

そんな中、6月5日に行われたのは「【オンラインイベント】with/afterコロナ時代のオープンイノベーションのカタチ」。

神奈川県にて大企業やベンチャー企業との協業によるオープンイノベーションに取り組む「BAK(ビジネス・アクセラレーター・かながわ)」主催で行われました。

ゲスト登壇者は、リアル/オンラインの各々のフィールドで新型コロナ感染症と向き合っている、事業者3社。2つのテーマで行われたトークセッション部分を中心に、イベントレポートをお届けします。

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▼ゲスト事業者
スカイファーム株式会社 代表取締役CEO  木村 拓也氏
2015年7月設立。横浜市を中心に、飲食店向けデリバリー・テイクアウトを簡単にスタートできるフードデリバリーシステムを提供。すべての注文を一元管理し、オペレーションの負荷を最小限におさえながら、効果的に登録店舗の店外収益力向上を進める。
※令和元年度「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」における採択・支援対象企業

Peatix Japan株式会社 シニアマネージャー 畑 洋一郎氏
「出会いと体験を広げる」をミッションに、国内最大のイベント・コミュニティサービス「Peatix(ピーティックス)」を運営。数千のイベントから、自らの趣味や嗜好に合ったイベントをおすすめや検索で見つけ、参加できる。
※令和元年8月に神奈川県と「ウェブサービスの活用によるコミュニティの活性化に関する連携 協定」を締結し、イベントの振興によるコミュニティの活性化に取り組んでいる。

株式会社横浜フリエスポーツクラブ
横浜FC事業部 社会連携グループ 担当部長 花村 仁氏

1998年に誕生した横浜市を本拠地とするJリーグ加盟のサッカークラブ。2007年11月、Jクラブで初めてISO14001を取得。2020年シーズンは2007年以来のJ1リーグで戦う。

▼モデレーター
株式会社野村総合研究所 ビジネスイノベーショングループマネージャー 徳重 剛氏

コロナ禍でビジネスはどう変化したか?

はじめにゲスト事業者3社それぞれから、自己紹介とコロナ禍におけるビジネスの変化について話されました。

花村 仁氏( 株式会社横浜フリエスポーツクラブ [横浜FC] /以下、花村)
「私が属している社会連携グループは、クラブによる地域貢献や、地域の課題解決を担当する部署です。Jリーグの試合が休止したことでチケットや興行の収入が無くなり、大きな影響を受けました。そのため、オンラインイベントの開催やオンラインでの発信をしていく必要があり、選手とともに取り組み始めているところです」

木村 拓也氏(スカイファーム株式会社/以下、木村)
「弊社は法人向けに、お弁当やオードブルを配達する事業を行なっています。コロナ禍では法人の需要は減少しましたが、これまで比較的少なかった個人の方の需要が伸びていますね。今回の緊急事態宣言の中、在宅ワーカーが食事を頼むことも増えており、法人利用と個人利用の境目が、いい意味で曖昧になってきたと感じています」

畑 洋一郎氏(Peatix Japan株式会社/以下、畑)
「コロナ前はオフラインのイベントがほとんどでしたが、2020年5月時点では95%程度がオンライン開催になりました。週に約85,000人がPeatixを介してイベントに参加し、人数だけで見るとコロナ前よりも活性化している状況です。Peatixはもともとオフラインのイベント向けだったため、オンラインイベントに対応できるよう、プラットフォームを整えてきました」

ビジネスマッチングの再定義「コロナフォロー × コロナアゲインスト」

1つ目のトークセッションのテーマは「ビジネスマッチングの再定義」。

ゲスト事業者3社のうち、コロナの環境下がビジネスに追い風になる企業(コロナフォロー)と、反対にビジネスに向かい風になる企業(コロナアゲインスト)のマッチングを想定した場合、どのようなビジネスの形が考えられそうか。モデレーターの徳重氏から仮説が展開されました。

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徳重「コロナの影響を受け外出を控える傾向が続くと考えられるため、スタジアムにきてくださる方には、これまでより価値を高めて訴求していく必要がある。そこで、スカイファームさんのデリバリーサービスを活用して、スタジアムまで美味しい食事を届けることで新しい価値を作ることが考えられるのではないでしょうか」

花村「球技場周辺のスタジアムグルメのさらなる充実は、課題感として既に持っていました。デリバリーを導入することで、お客さまの選択肢を増やすことができるのはメリットですね」

木村「周辺の飲食店が、横浜らしさのあるスタジアムグルメをつくることで付加価値を提供することができるのではないかと思います。そのスタジアムグルメを家やオフィスに届けることで、デリバリーフードを食べながら在宅で観戦をするのも一つの手ですね」

議論となったのは、観客席までに食べ物を運ぶオペレーション上の課題。例えば、指定席が決まっていない中、盛り上がって電話に気づきづらいお客さんをどのように探すか、外部の配達業者がスタジアム内に入ることによるセキュリティの問題など、オペレーションを考えるといくつかの課題が浮かび上がります。

これらのオペレーションの課題を解決するために「エントランスにカウンターを設けることで、場所が明確になり、スタジアムの中に入らずに受け渡しができる」というアイデアも挙がります。
セッションの終盤ではスカイファーム木村氏からデリバリー事業者側視点として、「飲食店側への課題解決」についての考えも共有されました。

木村「デリバリーの事業者としては『実際の来店につながり、飲食店の本当の収益につなげられるようにすること』が課題ですね。逼迫している飲食店にソリューションを提供しながら、1年、3年、5年というスパンの中で、デリバリー事業が社会にとってどのような形で『必要なサービス』としていくかが重要だと考えています」

オンラインイベントの収益化への挑戦 コアなファンへの訴求は収益の源泉になるか?

2つ目のセッションテーマは「オンラインイベントの収益化への挑戦」。

多くのイベントがオンライン化された昨今、無料イベントも多く開催されています。そんな状況下において、いかにオンラインイベントを収益化するのか。多くの方が気になるであろうこのテーマについて、冒頭にモデレーター徳重氏より、以下のように仮説が展開されました。

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徳重「オンラインイベントを収益化するためには、ファンクラブ会員など熱量の高い人に対してより高い価値を提供していくことが考えられます。例えばリアルではできない選手との近い距離でのコミュニケーション体験を提供することで、収益化が図れるのではないでしょうか」

花村「実際に横浜FCでもそのような試みを行なっています。『選手とお家時間』というテーマでオンラインイベントを実施し、オンラインを活用した選手との近いコミュニケーション体験の提供を試みています」

後半で行われたのは、オンラインイベント・マーケティングに対して具体的な知見を持つ株式会社PMAによる事例紹介。VR空間上で行われたイベント事例や、オンラインイベントのポジショニングマップなど、収益化を考えるにあたってヒントとなるアイデアが紹介されました。

オンラインイベント会場を「VR」で再現

株式会社PMAからはじめに紹介されたのは、広島県が推進するAI人材開発プラットフォーム「ひろしまQuest」のオンラインイベント開催事例です。新型コロナウィルス感染拡大防止のためにイベントをオンライン化し、VR空間上でイベント会場を再現して発表会を実施。参加者はアバターとなり会場を動き回ることができ、会場内には広島を感じてもらえるように、宮島の鳥居やお好み焼きのコテなどを設置するなどの工夫を行なったとのことでした。

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VR空間上でのライブイベント、オンラインセミナー、バーチャル握手会など「オンラインでイベントを開催する」といっても、形式は多種多様。イベントの目的や対象人数の規模によって、さまざまな形式が取られています。オンラインイベントのポジショニングマップと合わせて5つに分けて、オンラインイベント形式の整理・事例紹介が行われました。

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①オンラインセミナー(ウェビナー)
概要:登録制、オープン問わずいわゆる「セミナー」をそのままオンライン上に移したもの。登壇者の公演や発表を様々な媒体を用いて聞くという形式のものが主流。質問は音声ではなくコメントやチャットで受け付けることが多い。
ツール例:Zoom/VRアプリCluster/ストリーミングサービスV-cubeなど

②オンライントークショー
概要:Zoomを用いて行われるトークショー。一方向のコミュニケーションが主体となる。スター選手のトークショーなども行われているが、選手の中にはお家エクササイズを紹介するといった、普段は見ることのできない選手の姿でファンと交流するものも。

③オンラインお茶会
概要:トークショー系と同じ形に加え、相互コミュニケーションを含む座談会が含まれる。食品メーカーの事例では、サンプリング商品が事前に送付され、食べながらや飲みながら話を聞くケースもある。お茶会形式ではめずらしい、クラウドファンディングのリターンとして、参加券を入手できる事例も。

④オンラインサイン・握手会系
概要:主に事前応募もしくはチケットや対象となる商品を事前に購入し、購入者に対し出演者がオープンまたはクローズなオンライン環境で相互のコミュニケーションを行う。例えば、CDへサインする様子を生配信し後日郵送や、30秒間1対1で会話ができるなど
ツール例:握手会アプリRE:meet LIVE/オンラインギフトアプリTetote
※どちらも試運用段階

⑤VR展示会等(デザイン系)
概要:3Dアニメーションを用いた、ゲーム感覚のオンライン展示会&ショッピングサイト。VRヘッドセットを用いたVR空間での展示会も行われている


以上が、PMAの整理による5つのオンラインイベント形式。特に「④サイン会や握手会」の形は、収益化において強いコンテンツ力を持つのではないかと議論がされました。

またオンラインのイベントは、オフライン開催よりも参加人数が増える傾向があり「イベント自体が広告媒体としての収益化のポテンシャルがあるのでは」という話も。ターゲティングされた何万人という参加者に商品を訴求できることは、広告出稿のメリットも高まると考えられます。

そのほかにも、オンラインでの適切な価格帯を設定することで、購買者が増えた結果、収益が担保されるといったケースも考えられます。また、イベント開催自体で収益が上がらずとも、オンラインイベントが顧客体験の入り口になることで、その後の収益化につなぐこともでいます。

オンラインイベントの収益化は、大きな可能性を秘めており、さまざまな示唆に富んだセッションとなりました。

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※最後に※
「SHIN みなとみらい」facebookページの紹介

今回のイベントでは、主にリアルビジネスに変化が起きている今、新たなビジネスマッチングの形は何か、オンラインにおける収益化の形は何かということが多角的に議論されました。
With/Afterコロナの時代においては、今回のテーマは読者の方にとっても共通の関心事だったのではないでしょうか。

神奈川県が運営するベンチャー企業の成長促進拠点「SHINみなとみらい」では、これからの県経済を担っていくベンチャー企業や、ベンチャー企業と連携して新しい事業を始めようとする企業の皆さんをお繋ぎし、サポートしていく機能を担います。

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