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麦子さんの心がほどけて-③

前回の続きです。

ちょうどNLPを習っているところだったので、麦子さんとの関わり方を先生に相談したりしていました。

く「利用者さんで拒否がある方がおられて、そんなに激しく拒否というわけではないんですけど、でも受け入れてくれているわけでもなくて、今はラポール(信頼関係)を築くことを最優先に考えて接しているんですけど、どうしたらいいんですかね?」

そこで先生に聞かれたのが、

先生「何か困っていることがあるんですか?」

く「え…?」

しばしフリーズです…。
えっと…困っていること…?
いや、正に全体的に困っているというか…、いや困って…ないか…?え、え…?どういうこと??

く「困っていること…ですか?」

先生「はい。くーさんがその利用者さんと接していて何かに困っていますか?」

く「……」

改めてそう聞かれるとなんかよく分からなくなりました。もっと信頼してくれて受け入れてもらえたらいいな〜と思ってやっていますが、それを困っているかと聞かれると困り事とはまた少しニュアンスは違うような…。

どちらかというとより良い方に進めていくにはどうしたらいいかが知りたいというか…

そんな感じで先生に伝えると、

先生「くーさんはどうなるとより良いと思っているんですか?」

…いちいち考えさせられます。
えっと〜、

く「お互いに信頼しあえて、その方が今寝たきりなんですけど、体が拘縮したりしないようにしっかり体を動かしてあげたり、施術をしてあげられるようになって、さらには運動したい、リハビリしたいと思ってもらえるようになって、私が来るのを楽しみに待ってくれるようになりたいです」

そうそう、そういうことを望んでやってます!

先生「そういうことを望んでやっているんですね。で、今はそれに向かえてはないですか?」

く「…まだ大分遠い気はしますけど、でも向かえてはいるかもしれないです。最初に比べると少しずつですけど私の存在を認識して慣れてきてくれているかもしれないです」

先生「向かえているかもしれないんですね。そこに何か問題がありそうですか?」

く「…問題は何もないような気がします」

先生「問題はないような気がするんですね」

く「はい…」

そして、別のB先生が

B「その利用者さんの望みは何でしょうね?
どうなりたいと思っておられるのかな?」

く「その方の望みですか??
…そういえば聞いたことなかったです」

B「一度聞いてみてもいいかもしれないですね。体を動かしたり、マッサージを受けたりしたいと思っているのか、何か別の望みがあるのか分からないですもんね。そして、こちらがなぜその体を動かしたり、マッサージをしたりするのか、その目的を伝えてそれがその方の望みと合うかを確認するといいかもしれないですね。

もしかするとその方は寝たきりでいたい、と願っているかもしれないですし、体を動かしたくないと思っているかもしれないですし、体に触れてほしくないと思っている可能性もあるかもしれないですもんね」

そこで気づかされました。

私は自分の会社の方針と、ご家族様の願い

『寝たきりになってしまわないようにリハビリしてほしい、体が拘縮してしまわないようにマッサージと可動域訓練で体を動かしてあげてほしいという願い』

だけで動いていて、ご本人も当然そうなれば良いに決まっていると決めつけていたことに。

もしかするとご本人は今の状態に満足されていて、外野からワーワー言われて無理やり動かされること自体を拒否しているのかもしれないことに。

目からウロコでした。

そこから麦子さんの意思をより尊重するようになれました。

実際、訪問してやっていることはこれまでとさほど変わらないんですけど、私の中の意識だけは明らかに麦子さんの望みに寄り添うという方向にベクトルが向くようになりました。

すると、その頃から麦子さんの態度が少しずつ変わってきたんです。


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