BOOK REVIEW 『フローチャート産業医漢方薬』
評者
和田健太朗先生
(日本鋼管福山病院 腎臓内科部長・
透析センター長)
中村純先生の監修、新見正則先生と三上修先生の執筆により、
「フローチャート漢方薬」シリーズに新刊が出た!
今回は「産業医漢方薬」である。
副題に「主治医の邪魔はしません」とあるが、なぜこのような文言が入っているのかは、本書を読み進めばすぐに理解できるだろう。
新見先生が労働衛生コンサルタント資格をお持ちで、産業医の仕事も兼務してこられたことは、以前ご本人から何度かお聞きしており、産業医業務に造詣が深いことを存じ上げていた。
しかし、「産業医」と「漢方薬」という一見不思議な組み合わせを見事に繋ぎ合わせ、遂に本書の発刊に至られた。このことは産業医界にとって大きなインパクトであり、大きなパラダイムシフトになる可能性もあるのではないかと感じている。
産業医+漢方薬。
今までこのようなキーワードを見たことはない。
本書の表紙をご覧になった際に「両者に何の関係があるの?」と疑問を抱かれる方もいるかもしれない。
そんな方々にお勧めするのは、まず「コラム」から読んでみることである。従来、フローチャート漢方薬シリーズでは、毎回、各著者と新見先生のコラム(その他数名の先生も)が所々に織り込まれているのであるが、私はこのフローチャートの新刊が出るたび、まずはコラムを一通り読むことを何よりの楽しみにしている。本書のコラムは斬新でユニークなものばかりである。それだけでなく、読者にとって大変参考になるクリニカルパールも所々に散りばめられており、魅力満載である。
さらに、実際の「症候→処方」のフローチャートも非常にすっきりまとまっており、不要なものはがっさりとそぎ落とされている。
働く人たちからの日常的な相談の90%以上は、本書のフローチャートで対応できるといって過言ではない。各種症候・診断・治療内容から各種漢方薬を選択するに至る根拠まで、各見開きページの下段を読み進めていけば、本書が最速最短コースで産業医業務に関わる実践的な漢方診療を学ぶための優れた良書であることはすぐに理解できるだろう。
私自身、長年大手の企業病院の腎臓内科医として勤務している関係もあり、産業医科大学から定期的に出向・派遣されてくる若手の産業医と接する機会が多い。彼らにもぜひ勧めたい一冊である。
また、現在産業医業務についておられる医師やこれから産業医を目指す医師だけでなく、産業医と契約を結んでいる事業所の担当者の方々にも本書の一読を強く勧めたい。本書はこのような魅力あふれる一冊である。