エリザベス女王の国葬を見て思ったこと 新見正則
イギリスは懐かしい第二のふるさと
僕は1993年から5年間、
オックスフォード大学博士課程の大学院生としてイギリスに滞在しました。
僕の人生で2番目に長く暮らした町がオックスフォードです。
1997年8月31日。
その日は朝からどのテレビチャンネルも通常番組を放送していませんでした。
ダイアナ元皇太子妃がパリの交通事故で亡くなった日です。
そして、9月6日。
僕がアメリカの国際会議に参加するためヒースロー空港で出国手続きをしているとき、なんと黙祷の時間となり、空港全体(すべての職員と利用客)が黙祷したのが、昨日のことのように思い出されます。
完璧な葬儀でした
先週、エリザベス女王の国葬が行われました。
懐かしい思いから、NHKの番組を見ました。
以前から計画されていたそうで、エリザベス女王の希望も取り入れられて
見ていて「完璧!」と思えるほど、荘厳でした。
イギリスは日本と同じ議院内閣制で両院での承認が必要です。
沿道には多数の人が集まり、女王を見送っていました。
国をあげての葬儀という印象がテレビ画面から伝わってきます。
天皇皇后両陛下もエリザベス女王の国葬に参列されました。
日本出発時は白いマスク。イギリスでは黒いマスク。
そしてウエストミンスター寺院ではマスクなしでした。
こんなときの席次は、ちょっと気になります。
天皇皇后両陛下はイギリス王室に対面する場所の前から6列目。
アメリカのバイデン大統領夫妻はイギリス王室と同じ場所の前から14列目。
英国連邦(コモンウエルス)の諸国が前方だったとのコメントや、
大統領特別車のビーストの到着が遅れたからとか、いくつか理由があるようです。
僕は「なんだかイギリスらしいな」とたいした根拠もなく感心しました。
伝統を重んじる国
オックスフォード大学には世界中から大学生や大学院生、そして研究者が集っています。世界の大学ランキングのトップの常連です。
研究費は日本やアメリカと同じように単年から数年のものもありますが
長期にわたって巨額な研究費も用意されています。
目先の研究結果に囚われず、先を見据えた研究ができる大学です。
インパクトファクターが高い雑誌に採択されたい。
そんな希望を当時の指導教授に話したところ
「インパクトファクターはアメリカが主導している論文の評価システム。
インパクトファクターを優先するより、歴史のある雑誌に投稿しなさい」
と諭されたことが懐かしいです。
良くも悪くも歴史や伝統を重視する国ですね。
オックスフォード大学は他人種が集まっています。
留学生も多いですが、イギリス国籍を持っている中国系、ブラックアメリカン、
東南アジア出身など、様々なイギリス人もいました。
イギリスは多民族の国だと体感しました。
そしてその多民族のイメージは町に出るともっと実感できるものでした。
いろいろな思いが入り交じる
ところが、エリザベス女王の国葬を執り行う側の人を興味を持って観察しましたが、ほとんどが白人で、2時間近い番組のなかで数人のみ明らかに白人ではない人がいました。沿道で見送る人々には少数の他民族の人がいました。
今日は国葬。みんなの思いが入り交じる
テレビからは荘厳な国葬というイメージが伝わりますが、
実はその国葬に反対している人がいるのだろうと思いました。
オックスフォードで5年も生活したので、生活のための英語、専門家の英語は使えます。しかし、現地の心の奥を知るのはちょっと無理です。
表面的には肯定の言葉でも、実は否定的であったりします。
文章も同様です。
結局5年もイギリスに滞在していながら、彼らの本心はよくわかりませんでした。