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未来をつかもう  新見正則

天皇皇后陛下と同じオックスフォードに留学

天皇皇后両陛下が国賓として訪英し、イギリスの風景がテレビに取り上げられています。そしてお二人の留学先であるオックスフォードも取り上げられています。天皇陛下は1983年に、皇后陛下は1988年に、そして僕は1993年からオックスフォードで勉強を始めました。懐かしいです。

懐かしい、オックスフォードの思い出

僕は医学部を卒業後、外科医を志し、寝食を忘れて外科手技の習得に没頭しました。約8年が経過し、ほぼ大きな手術を含めてなんでも手術ができるようになったころ、今度は突然にサイエンスが勉強したくなり、オックスフォード留学に臨みました。

いま考えても無謀な冒険です

奨学金に応募し、そして選考を経ての留学で、イギリス人でも半分しか取得できない博士号(Doctor of Philosophy)を取得することが条件の留学でした。取得できないときは留学費用の返還を要求されることになっていました。当時は日本の移植医療の幕開けで、移植免疫学を学びたく、なんとゼロから免疫学を異国の地で勉強を始めることになりました。

必死に学んだ5年間

いつも直感で無謀とも思われる挑戦をするのが大好きな僕ですが、本当に無謀だったと今でも思っています。幸いにも上司や同僚にも恵まれ、5年を費やしてなんとか博士課程を卒業することができました。その5年間は一度も日本には帰国しませんでした。心が萎えそうになるのが怖かったのです。

「オペラ座の怪人」の思い出

そんな5年間の留学中に、日本からのお客さんは複数渡英されました。多くの方が当時ロンドンで行われていたミュージカル「オペラ座の怪人」を観たいということで、僕たちもアテンドして、何回も「オペラ座の怪人」をHer Majesty Theaterで観劇しました。

感動、のひとことです

日本では超忙しい外科医生活を送っていましたからミュージカルとは無縁の生活でした。ですから「オペラ座の怪人」も日本では観たことはありませんでした。最初に観たとき、シャンデリアが舞台から天井に吊り上げられる演出をみて、本当にびっくりしました。多数のロウソクで照らされたオペラ座の地下をボートで進むシーンや、幕あい後の後半のスタートシーンの仮面舞踏会など、どれもが感動の連続でした。

オペラを観るたび、よみがえる

そんな「オペラ座の怪人」が映画になり、先日、リマスター版を観に行きました。昔のつらかったオックスフォードの勉学生活が重なり、「オペラ座の怪人」は観るたびに涙もろくなります。

僕の、苦労の末の財産

オックスフォードでは免疫学をゼロから、研究室を持てるまでに勉強させてもらいました。そしてその後は大学で外科学、免疫学、そして東洋医学の3領域の大学院博士課程の指導教授として長く教鞭を取りました。オックスフォードで学んだことは、実は、物の考え方とそして物の書き方でした。

つまり、人を説得する方法です。そしてある理論を展開するときも、また否定するときも本当に正しい思考が必要ということが腑に落ちてわかりました。免疫学の基礎知識はもちろんですが、そんな論理展開の素養が身についたことがその後の僕の本当の財産になりました。

つらいことがあっても、運と縁で未来は拓ける

「オペラ座の怪人」の映画はDVDも持っています。しかし、大きなスクリーンで、大音量で、ミュージカル劇場と同じような環境で観るのは本当に感動的です。主人公の怪人はつらい環境からオペラ座の地下に逃げ込み、そして音楽の天才となります。つらいことがあっても、その後の運と縁で今に繋がる自分を見ていると、主人公と自分が一部は重なり合うようです。


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