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BOOKREVIEW             『脳卒中・脳外傷者の自動車運転に関する指導指針』 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会臨床医のための脳卒中・脳外傷者の自動車運転に関する指導指針策定委員会 編

評者:安保雅博先生
(東京慈恵会医科大学リハビリテーション医学講座)

脳卒中・脳外傷者の自動車運転に関する指導指針


わが国の、自動車運転再開のための唯一の指導書

脳卒中・循環器病対策基本法が2018年12月に成立し、2019年12月に施行されました。2020年10月に閣議決定された循環器病対策基本計画では、『高齢者人口がピークを迎える 2040 年までに3年以上の健康寿命の延伸及び循環器病の年齢調整死亡率の減少』が全体目標として掲げられました。

特に、てんかん、失語症等の循環器病の後遺症を有する者に対する就労支援や経済的支援を含めた支援体制の整備や、幅広い病状を呈する循環器病患者の就労支援等への取組が明記されました。

脳損傷患者の社会復帰にとって、自動車運転は実に大きな意義があります。
今まで生活の糧として使用していた人には大問題になります。

しかし、身体障害に加えて、高次脳機能障害、さらにてんかんや高血圧、糖尿病等の合併症が生じると、当事者やご家族、医師をはじめとして医療関係者、行政職の方々は、自動車運転が再開できるかどうか、その判断に窮する場面に多々遭遇します。

本書は、その疑問に明確な答えを提示しています。執筆を担当された先生方は、これまで、わが国の第一線で障害者の自動車運転に関する研究と診療に従事し、国内外の法制度をも熟知されている方ばかりであります。

本書は二部で構成され、第1章は総論として、運転の再開を希望する脳損傷者を前に、知っておくべき再開手順、法制度、医療職の責任、安全運転に必須な運動機能、高次脳機能、薬剤、自動車改造、職業運転手のための指導、患者家族への指導について、わかりやすく要約文と解説文が整理されています。

第2章は各論として、脳卒中、脳外傷、それぞれの疾患について、注目すべきポイントがまとめられ、ついで、これらの疾患に合併しやすい病態、すなわち、てんかん、心臓疾患、糖尿病、高血圧等がある場合の運転時の注意事項が述べられています。さらに、昨今、逆走行やブレーキ・アクセル踏み間違い事故にみられる高齢者の問題にも触れられています。

本書は、表題にあるように、脳卒中者および脳外傷者を対象に記述されていますが、安全な運転に求められる必須な技能がすべて盛り込まれていることから、アルツハイマー型認知症等の変性疾患、パーキンソン病や筋ジストロフィー等の神経・筋疾患、切断等の整形外科疾患、不整脈等の循環器疾患、糖尿病等を有する内部疾患患者の運転再開においても、十分な手引書となります。

本書を、ぜひ、障害者の運転再開指導を行う、すべての専門職の皆さまの座右においていただく一冊として、ご活用いただければと思います。

(※この書評は『作業療法ジャーナル』VOL.55 NO.7に掲載されました。)

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