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あり得ないことが起こる  新見正則

メジャー、夢の競演

お休みの日にメジャーリーグをNHK総合でライブで見ました。ポストシーズン、ナショナルリーグ地区シリーズ第5戦です。二勝二敗で迎えた第5戦。このゲームに勝ったチームがナショナルリーグのリーグ優勝決定シリーズに進みます。先発はドジャースが山本由伸選手、パドレスがダルビッシュ有選手です。そして1回裏はダルビッシュ有選手が投げて、大谷翔平選手が一番打者で登場するという夢のような光景でした。

メジャーリーグのポストシーズンで、両チームとも先発が日本人で、そして一番バッターが2冠王を獲得した日本人選手ですよ。まるでマンガのような設定ですよ!
 
僕の子どもの頃なら、そんな場面はまったく想像もできないことで、あり得ない光景です。医師として駆け出しの頃も、そんな場面はあり得ないと思っていました。野茂英雄選手が海を渡り、先鞭を付けました。そしてイチロー選手の活躍などもありましたが、その当時は単に稀な天才スポーツ選手がたまたま現れただけと思っていました。ところが日本人野球選手が世界に通用するようになったのです。それが納得できる瞬間でした。こんなことが起こるんですね。

ノーベル賞はAIが2冠

今年のノーベル物理学賞は人工知能(AI)の中核である機械学習の基礎を築いたアメリカのプリンストン大学のジョン・ホップフィールドとカナダのトロント大学のジェフリー・ヒントンに与えられました。そしてノーベル化学賞は蛋白質の立体構造をAIで予測することに成功したアメリカのワシントン大学のデイビッド・ベイカー、ディープマインド社のデミス・ハサビス、そしてジョン・ジャンバーに与えられました。
 
1984年に公開された映画「ターミネーター」は、コンピューターが暴走し、人間に襲いかかる物語です。AI関係がノーベル物理学賞と化学賞を揃って受賞するとは、ターミネーターの世界ににわかに近づいたイメージです。映画の世界だけのお話で、実際にはあり得ないと思っていたことが現実になってきました。少なくとも現実となる端緒であることは間違いないでしょう。

デミス・ハサビスはゲームオタク

デミス・ハサビスは子どもの頃からチェスの天才で、ゲームオタクで、その後ゲーム会社に入りいろいろなシュミレーションゲームを創り上げます。そして自分自身でディープマインド社を創り、そこでAlphaGo(アルファ碁)というソフトを開発し、碁の名人を破るという結果を残しました。その延長で蛋白質の立体構造を予測するソフトを開発したのです。昔は蛋白質を精製分離し結晶化して、X線分析で立体構造を特定していましたが、まったく別の手法で立体構造の予測が可能になりました。あり得ないことが起こったのです。

ノーベル平和賞、本当にありがとう!

また、ノーベル平和賞は、なんと誰もが予測していなかった、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に与えられました。日本被団協の方々の「まさか自分達が」と驚く光景が放映されていました。僕は原子爆弾が広島と長崎に落とされたのは、日本が降伏しなかったからというのが持論です。しかし、被害の様子を後世に伝えることは本当に意味があると思います。ノーベル平和賞には今まで僕はちょっと懐疑的な立ち位置で眺めていましたが、今回の日本被団協への授与は本当に「ありがとう!」という思いで一杯です。
 
あり得ないことが起こる世の中です。そんな世の中を生き抜くには変化できる自分でいる必要があります。そんなことを再確認させられるこの数日でした。



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