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[BOOK REVIEW]『医療者のためのChatGPT ―面倒な事務作業、自己学習、研究・論文にも―』(著者:松井健太郎先生、香田将英先生、吉田和生先生)

評者
鈴木 航太 先生
(慶應義塾大学精神・神経科学教室)


本書は、AI技術を医療現場でどのように活用できるかを具体的に示した一冊である。現役の精神科医師3名によって執筆されており、医療者が日常的に直面する煩雑な事務作業や学術活動の支援に焦点を当て、ChatGPTの実践的な利用法を詳細に解説している。

業務メールの作成、標語のアイデア出し、当直表の作成といった日常的な事務作業の効率化に役立つ具体的な手法が紹介されており、多忙な医療者にとってすぐに役立つ解決策が提供されている。さらに、本書の魅力は、自己学習や研究活動にも応用可能な点にある。例えば、複雑で長い文章の要約や知識の整理といった日常の学習支援だけでなく、臨床疑問をリサーチクエスチョンの形にしていく手法、論文執筆のポイント、査読対応の進め方など、研究の各フェーズでの具体的な利用法が示されている。こうした内容は、医療者が学問的・実務的な両面で効率的に業務を進めるための道標となるだろう。

また、ChatGPT初心者にも配慮された構成となっており、基本的な操作や使い方から段階的に学べるように設計されている。著者も「ChatGPTについて知り、身の回りで活用できる『型』をお伝えします」と「型」の重要性を強調した上で、そこから独自の応用を見つけていく楽しさも提案している。本書は2023年12月に出版された書籍であるが、生成AIはそれ以後も急速に進化を遂げており、ChatGPTも新しいバージョンで大幅な機能拡張が行われた。しかしながら、本書はその普遍的な活用法を「型」として示しており、今後も価値を持ち続けるだろう

これらの多面的なアプローチにより、本書は医療分野でのAI活用の入門書としてだけでなく、実務にも直結する実用書としての価値を持つ。AIを活用して医療現場の効率化を目指そうとする、すべての医療者にお勧めしたい一冊である。

本書評は公益財団法人日本精神衛生会発行の『心と社会』No.198に掲載されたものです。日本精神衛生会ならびに鈴木航太先生ご承諾のもと転載しております。

www.amazon.co.jp/dp/4880029262

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