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AKB・坂道は本当にオワコンなのか?−AKB48/乃木坂46/欅坂46/日向坂46/櫻坂46

ご覧いただきありがとうございます。
私は普段、IT系企業の新規事業立ち上げを担当しているのですが、櫻坂46好きが高じて、たまにアイドルをビジネスやデータの視点から分析しています。

今回は、ファクトを基にして「AKB・坂道はオワコンなのか?(=ピーク・アイドルしたのか)」を検証していきたいと思います。
数々の人が思い思いに「もうアイドルの時代じゃないよ」ということを言うのですが、それって根拠ある?と思ったのが発端です。

些細なきっかけから始まったこの調査だったのですが、調べていくと実に興味深い結果が分かりました。

①世間の注目が薄れ始めた時点を”ピーク・アイドル”とすると、2011年からとっくにピークアウトが始まっている
②AKB+坂道のシングルの売上初速積上の減速を”ピーク・アイドル”とすると、2019年からピークアウトが始まっている
③過去の成功体験に縛られ、イノベーションのジレンマにハマってしまったことが”ピーク・アイドル”の原因と推定される

では、各節に分けて詳細を説明していきます。
宣伝しておきますと、今回の分析以外にも色々と記事を書いていますので、興味がある方は是非ご覧くださいませ。

▶︎ピークの判断軸は、世間の認知と収益性の2軸

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こちらの画像は、別の記事で欅坂46のビジネスモデルを分析したときのものです。私は、多かれ少なかれアイドルグループのビジネスはこの「認知拡大→ファン化→収益化」の3ステップで成り立っていると考えています。

だとした時に、入り口の「認知」と、出口の「収益性」の2つを定点観測できれば、フェアにビジネスとしてどうなのかを判断していくことができるはずです。

本来であれば、「認知」は統計学に則ったアンケートでもして属性別のブランド認知度を把握すべきでしょうし、「収益性」はきっと運営社内で管理されているであろう1ファンあたりの売上単価(ARPU)や営業利益を見ていくべきでしょう。

ただ、それらの値を私が把握することは困難なので、今回は擬似指標として
認知:Googleでの相対的な検索ボリュームの推移
収益:シングルCDの初週売上
を採用しました。

収益性を見るのにCDの初週売上を採用するのは音楽サブスク全盛の現在から見てどうなんだと思われそうですが、コアな重課金ファンほど握手会や総選挙への投票に熱心だという秋元グループの特性からすると適切な指標だと考えています。
CDの累計売上ではなく初週売上に限定しているのは、リリース日からの経過期間による不公平をなくして評価するためです。

▶︎認知のピークは前田敦子さんが現役の2011年。

検索ボリューム_グループ別

文字が小さくて恐縮ですが、こちらがgoogleトレンドというサービスを使ってAKB48(ピンク) / 乃木坂46(紫色) / 欅坂46・櫻坂46(緑色) / 日向坂46(空色)それぞれ「トピックとしての」検索ボリュームを相対的に示したものになります。

なお、どういった検索キーワードが「トピック」に含まれているかはGoogleにしか分からないですし、あくまで一番多い時点での検索量を100としたときの相対的な検索量を示してくれるサービスなので、それぞれの絶対量がどの程度だったかは誰にもわかりません。

ご覧の通り、2011年6月にあるAKB48ピークが最大値で、坂道系各グループは現在に至るまで、この水準にたどりついていません

2011年6月に何があったかといえば、AKB48の22ndシングル「フライングゲット」に向けた選抜総選挙が行われていました。

前回の総選挙で2位になった前田敦子さんが大島優子さんを破りセンターに返り咲くなどのドラマがあった総選挙です。思い返してみると、全くオタクではない人に向けてもメディアを通じてこの情報は流されていましたし、当時はmixiが十分に広まっていてオンラインでの盛り上がりも「認知」の拡大に寄与していたと推定されます。

この2011年6月をピークにAKB48に関連する検索ボリュームは右肩下がりで進行していきます。したがって、新規のファンが一番増えていた時期は10年前の2011年だったと言えます。

この後、AKB48の認知低下と反比例する形で乃木坂46、そして欅坂46が徐々に認知を広げていきます。

乃木坂46のピークはインフルエンサーがリリースされた2017年から2018年まで続きます。

別記事で指摘した通りですが、ロングテールを狙う坂道系は、人気メンバーへの集中(パレート最適)を狙うAKBと比較すると人気のピークを長く維持し、低下スピードも抑えていくビジネス構造を持っています。その傾向がこの認知のピークの長続きと緩やかな低下にも現れているかと。

認知のピークは10年も前に過ぎていたことが発覚したので、AKBが失った認知を乃木坂・欅坂へシフトしていった結果、収益性で見るとどうだったのか?が次の問いになります。

▶︎収益性のピークは坂道がノっていた2018年

シングル初週売上_積み上げ

こちらの棒グラフは、各グループ・シングルCDの初週売上枚数を積み上げたものです。*

※日向坂46のアザトカワイイは分析対象としたかったので、2020年リリースの初アルバム「ひなたざか」のみシングルでないですが算入しています)

これを見ると、2018年に大きく収益性が伸び(重課金しやすい熱心なファンが多くつき)、2019年にドカンと収益性を下げていることがわかります。

2018年は、欅坂46が「ガラスを割れ!」をリリースし、、、

乃木坂46も「シンクロニシティ」でレコ大を取るなど、坂道系のトンマナが定まって、その躍進が決定的に見えた年でもありました。

新規のファンの獲得に苦戦しているAKB48も、2018年までは既存の重課金ファンが機能し、収益性は最盛期と比較しても十分な水準であったのではないかと推察されます。

この3グループの呼吸が見事にあって、最高の収益性を達成した年が2018年だったと言えるのではないでしょうか。

問題はここからです。

2019年になると各グループともに問題を抱えました。

AKB48:NGT48の山口真帆さんが暴行にあったとされる事件が発生し炎上
欅坂46:9thシングル制作に失敗し、グループ活動が停滞
乃木坂46:世代交代を進めようとしたが、十分な成果に至らず

こうした状況の中で新星・日向坂46が「キュン」で鮮烈なデビューを飾り、AKB+坂道で見ると2015年の水準になんとか踏みとどまった状況です。

コロナ禍の2020年になると、制作が思うようにいかないため2019年のリベンジをすることなく収益性はさらに低下しています。
これはミュージシャン全般に共通する事象だっととは思うのですが、「娯楽」というカテゴリーにアイドルが属するのであれば、2019年の時点で確実に”ピーク・アイドル”してしまっていると言えるでしょう。

奇しくも、2018年の第69回紅白歌合戦には、超実力派のあいみょんさんが初出場し、現在大ブレイク中のNiziUの姉貴分にあたるTWICE、長年の雌伏の時を経て現在大活躍中のLittle Glee Monsterも出ていて、なんとなく時代の変化を感じるリストになっております。

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(おまけ)
ちなみに、各グループのシングル別に初週売上を図にするとこうなります。

シングル初週売上_グループ別

AKB48(ピンク) / 乃木坂46(紫)色 / 欅坂46・櫻坂46(緑色) / 日向坂46(空色)で示していて、点の箇所がリリース日になります。
実線は4作品での平均をつなげた移動平均線というものになります。

これだけ見ると「おっAKBが意外と頑張ってるけど、坂道の凋落がヤバイ」と思ってしまうのですが、この節冒頭のグラフに綺麗に集計していくと全然そんなことはないよ、という罠です。

▶︎”ピーク・アイドル”は、なぜ起きた?=イノベーションのジレンマ

ということで、どこまで確信を持って語られていたかは定かではないですが、広く世間からのピーク・アイドルは2011年にすでに起きていて、熱心なファンのピーク・アイドルも2019年に起きた、すなわち「オワコン化しつつあるのは事実」ということが結論になりそうです。

これはなんで起きたのか?を考えていくと「イノベーションのジレンマ」なるもので説明がつきそうです。

イノベーションのジレンマp03

成功している勝ち組企業は、すでにある製品やサービスを”改善”していくことで、より多くの顧客を捕まえようとします。
そうすると、いつの間にか顧客になりうる人の多くが欲しがっている性能(品質やテイスト)から外れたハイスペック商材になってしまいます。
そこを狙って最初は粗悪品に見えるほど性能(品質)が低い競合が現れて、競合も”改善”していくことで、いつの間にか多くの顧客が求める性能(品質)にたどり着き、ボリュームゾーンを取られちゃう。。。

というのがイノベーションのジレンマです。

AKBグループは、まさに革命だったと思います。
あえて顔が整い過ぎているメンバーを揃えることなく「会えるアイドル」というジャンルを生み出し、グループ内での競争をファンへ公開することでより一層の熱狂を生み、握手券や投票券の制度で収益化効率を極限まで上げる。

この方法がうまくいき過ぎたが故に、後継となる坂道グループでビジネスモデルでのイノベーションを起こすことができなかったのではないでしょうか。

確かに、別記事で指摘した通り、人気メンバーへの集中(パレート最適)を狙うAKBからロングテールを狙う坂道系へのシフトは1つの改善だったかもしれません。また、Youtubeという新興メディアを果敢に活用して生み出した熱狂が欅坂46だったかもしれません。

ただ、根本の仕組みはAKB48の焼き直しです。つまりイノベーションではなく改善を繰り返してきたのではないかと。
例えるならば、iPhoneのシリーズを色々出してみたり、カラーバリエーションを増やしてみることはしてきたのですが、例えばairpodsなど第二のハードウェアを生み出したり、サードパーティーを引き入れてエコシステム化したAppStoreのような仕組みは作れなかったということです。

これではその時点でいるファンをグループ間で移動させ何となく流行っている感を出すのが精一杯で、抜本的に全体のパイを拡大するために新規のファンを増やすことや、劇的に課金効率を上げることは叶いませんよね。

運営がイノベーションのジレンマにハマってしまった理由はよく分かりますし、改善施策の精度も先ほど上げたように恐ろしく高いと思います。
ただ、それでは劇的な何かが起きはしないということです。

その結果、サブスクの動画サービスと短尺×非言語SNSを使いこなしたNiziUの後塵を拝すに至ったのではと思います。

現在、ある種の劇薬が投与された状態だと思うので、ここから大胆に戦略を練り直してくるのではないかと期待しています。何せ天下のSonyですし、NiziUもSonyだから知見も共有しているだろうし。

なので、オワコン化しかけているAKB+坂道がリスタートをどう切っていくか、それを目撃できることが私の最大の楽しみです。

今後も櫻坂46を中心に応援していきます!
ご覧いただきありがとうございました。

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