元弓道&バドミントン部による宮崎駿監督最新作『君たちはどう生きるか』徹底考察
『君たちはどう生きるか』
同名の小説から拝借された、人生観を変えてくれそうなタイトル。
公開初日、同居人と共に映画館へ向かいました。
流石はスタジオジブリ、どの映画館のどの上映時間も満席ばかりで新宿某映画館の22時の部がなんとか数席残っている状態でした。それでも最前列しか空席がなく、最前列中央の2席を予約しました。
「人生観が変わりますよ」
そう息巻く同居人でしたが、時間の計算が苦手な私達は上映開始10分前にもかかわらずまだ外を歩いていました。
「ちょっとごめん!」
顔をあげると、先ほどまで隣を歩いていたはずの同居人がいません。きた道を戻ると、路地で声かけしている彼の姿がありました。声かけとは、女性をナンパすることです。上映開始まで残り8分。何をやっているのでしょうか。
「連絡先聞けなかった。やっぱり後ろからの声かけは怖がらせるから良くない」
PDCAが回ります。
なんとか間に合い、同居人が座席までエスコートしてくれました。
「王の席ですよ」
と案内してくれます。
最後まで予約で埋まらなかった玉座に腰を下ろし、いざ鑑賞開始です。
以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。
舞台は戦時中。空襲で家が焼けているシーンから物語は始まります。
戦争を通して「君たちはどう生きるか」という問いを投げかけるのでしょうか。期待に胸が膨らみます。
主人公は牧眞人(まひと)という10歳くらいの男の子です。
母親を亡くし、牧眞人は父親とその再婚相手と共に田舎の屋敷で暮らすことになりました。
ただ、その屋敷には2つの謎がありました。
1つは本を読み過ぎて頭がおかしくなったおじさんが建てた塔があること。
もう1つは牧眞人の周りを飛ぶ1匹のアオサギの存在です。
私は高校時代にバドミントン部を半年で辞め、帰宅部として活動していました。毎日ジャージを着て家の近くの海岸を走っていたのです。あるとき海岸で運悪くバドミントン部のヤンキーと鉢合ってしまい
「お前、走り込みするくらいなら部活もどれよ」
と言われ走って逃げたことがあります。
顔をあげると、頭上には無数のカラスが旋回していました。なにやら不吉ではありませんか。
「ちょ待てよ!」というヤンキーの叫び声と「「「かぁかぁ」」」というカラスの鳴き声が響き渡る夕暮れ、涙の走り込みは今でも忘れません。
上映開始30分ほど経った頃でしょうか、アオサギがぐるぐる飛んでいる様子を観ながら、私はある違和感に気づきます。
「この映画が何を伝えたいのか、全く分からない」
メッセージ性の強いタイトルと裏腹に、話の展開、テーマが全く読み取れないことに困惑し始めていました。
「お待ちしておりました」
アオサギが喋ってしまいました。
戦時中のリアル路線かと思っていましたが、あろうことか物語はファンタジーの世界へと舵を切ります。
なんやかんやあって、牧眞人とアオサギは死闘を繰り広げるのですが、異世界に連れて行かれそうになった牧眞人は間一髪母親に救い出されます。
間一髪といえば、中学時代の弓道部にナルシストな先輩(ナルセン)がいました。
ある日、弓道部女子が公園で遊具の影にいたナルセンを見つけたそうです。そのときナルセンのチャックは全開で、周りにはエロ本が散乱していました。
「先輩、今ここで何してたか正直に言ってください。嘘ついたら、このこと部活中に広めます」
そう言う女子生徒にオナルセンは返します。
「…いやあ〜学校行く途中で眠くなったから、寝てた!」
その後どうなったかは、私がこの話を知っていることからお分かりでしょう。
間一髪助かった牧眞人を観て、私は「良かった」というより「何これ」と思っていました。映画に入り込めず置いていかれていたのです。
なんやかんやあって、牧眞人は本を読み過ぎて頭がおかしくなったおじさんが建てた塔の中に入ります。
そこで牧眞人はアオサギと再び死闘を繰り広げます。弓をひく牧眞人にアオサギが言います。
「心臓はここだ。良く狙えよ。外したらお前の心臓を食ってやる」
牧眞人の放った矢はアオサギには当たりません。
「外したなっ」
アオサギが襲い掛かろうとしたそのとき、意味不明なことが起こりました。意味不明と書きましたが、この映画は基本的に意味不明です。外れたはずの弓矢がアオサギを追いかけるのです。何度もターンしてアオサギを追い詰めていきます。なぜなら、アオサギが落とした羽を使った矢だったからです。なるほど!と思いました。もはや私には、この展開はギリギリセーフに思えたのです。
弓矢と聞いて私の弓道部時代のことが気になった方も少なくないでしょう。
私には部内にライバルがいました。私と弓の実力が同等で、お互い切磋琢磨していました。
弓では決着がつかないので(お互いまるで的に当たらないのです)
「どっちが弓道が上手いか、バスケで決めよう」
という話になりました。
週末の誰もいない校庭で2人だけの1ON1が始まりました。
私がドリブルでライバルを抜こうとしたとき、互いの膝がぶつかりました。打ちどころが悪く、激痛が走ります。私が膝を抱えてうずくまっている隙にライバルはたどたどしいドリブルでゴール下に到着します。
「痛っ…ゴールはそこだ。良く狙えよ」
「外したらもう一度シュートしてやる」
ライバルは何度も何度もシュートを打ちましたが、1本も入りませんでした。どちらが弓道が上手いか決着がつくことはありませんでした。
矢がアオサギの口に命中すると、中から落武者のような髪の汚いおっさんが現れました。醜いできものがある鼻がチャームポイントです。
アオサギといえばTwitterのロゴですが、私がTwitterで女だと思ってフォローしていたアカウントの中身が女の振りをしたおっさんだったことがあります。きれいなアオサギの中から汚いおっさんが現れたシーンを見て、あのときの怒りがこみあげてきました。
右隣に座っている同居人はどんな反応をしているのだろうと思い目をやると、くちばしを大きく開けて寝ていました。
アオサギのくちばしにあいた穴に牧眞人はコルクを詰めて塞ぎます。
以前、同居人と近所のスーパーでワインを買ったはいいものの、自宅にコルク抜きがないという事件がありました。ドライバーやハサミを駆使してコルクをなんとかワインの中に押し込むも、コルクの削りカスが一緒に入ってしまいワインを飲むことは叶いませんでした。
なんやかんやあって、この異世界は本を読み過ぎて頭がおかしくなったおじさんが作ったもので、不安定な積み木によって保たれていることが分かりました。
しかし、インコの将軍が積み木を壊してしまい世界が崩壊します。牧眞人はなんとか異世界から脱出します。手に汗握る展開です。ふと左隣に目をやるとおっさんもくちばしを開けて寝ていました。
私が福岡で街コンに参加した時、自衛隊の本を持ったメガネの男に話しかけられたことがあります。
「私はこの戦闘機について詳し過ぎて、隊長になればって言われているんですよ!」
そう言って本のとあるページを見せてきます。街コンには場違いなとても不安定な男だと感じました。
この街コンで私は120キログラム超の豊満な女性をお持ち帰りすることになったのですが
「ねえ、私たちどうする?(君たちはどう生きるか)」と問われ
「ごめんなさい」と返したことがあります。
「ああ、そう」と言われました。
牧眞人と父親が再会する際、父親は鳥の糞まみれでした。インコのウンコです。糞の表現はとてもリアルでした。流石ジブリといったところでしょうか。私はハトにフンを落とされシャツを洗っていた際に同居人から
「うんがついたね」
と言われたことがあります。クソと思いました。
その後いきなり2年の時が経ち、牧眞人が部屋を出ていくと画面は暗転、スタッフロールが流れ始めました。おしまいです。
後半は話についていけないあまり
「やっぱりジブリの水の表現は良いな」
「古い家を歩くときの足音、すごく凝ってるな」
「お前、走り込みするくらいなら部活もどれよ」
と技術面に集中していました。突然終わったので本当に驚きました。
同居人に映画の感想を聞くと
「俺の好きな映画はトップガン」
と言われました。
そういえば、オナルセンが公園で自分磨きしていたことを私に明かした友人の名は「はやお」でした。
さて、君たちはどう生きるか。映画館でお待ちしております。
P.S
オナルセンが伸びをしながら
「あ〜なんか走りて〜」
と近寄ってきて、2人で学校の周りを走ったことがあります。