クロサワ映画と戦後の日本から考える。これから「どうなるか。」ではなく、「どうしたい。」のか。
75年目の終戦記念日、私は、黒澤明監督の映画を観まくっていた。
あと、5作品でコンプだ。
ここ数日で15作品ほど一気に観た。
(古い映画って、u-nextにいろいろありますね!)
この15年ほど、黒澤映画で私の好きな揺るぎない堂々の1位は、
「用心棒」だったのですが、
(ここでも語ってます↑↑↑)
クロサワ映画と戦後シリーズ2をアップするにあたって、
1位の座が揺らぎました。
「素晴らしき日曜日」を観てしまったので。
うううううううううう。
これは、コロナで世の中が動転している今、現代の皆様もぜひ必観の映画、と思います。
所持金35円の男女カップルが、どうやってお金を使わずに、週に一度しか会えない日曜日にデートを楽しむかを試行錯誤する涙の映画です。
公開が1947年なので、実際の制作はまだぜんぜん戦後の混乱の中であって、リアルタイムの感覚だと思います。GHQからのいろんな禁止事例や、制約事項もまだまだたくさんあった頃です。その中で、これだけの表現をやり遂げた黒澤監督も凄いし、そして、役者さんがまたいい。。。恥ずかしながらお名前存じ上げなかった、カップル役の俳優のお二人だったのですが、
沼崎 勲さんから滲み出てくる生まれながらの本来の明るさによって、暗いストーリーが支えられている。これが、森雅之さんだったなら、もうなんかいくら這い上がろうとしても絶望を与えるんでしょう。(褒めてます。)
冒頭は、彼氏さんが待ち合わせ場所で路上に落ちているちびっちゃい煙草の吸い殻を拾おうか迷って凝視しているシーンから始まります。拾おうとしたのを当たり前の様に、手ではらうことで登場する彼女役の中北 千枝子さん。
こういうちょっとした行動や、それから、瓦礫の上でおにぎりを食べていたら視界に入ってくる戦争孤児の存在などで、現実の凄まじさを目の当たりにしました。
だけど、作中、一番ハッとしたのは、「ぬいぐるみ」の存在でした。
黒澤映画では「生きる」や「醜聞(スキャンダル)」の何作品かでも、ぬいぐるみの演出を観ましたが、(「生きる」のウサギのおもちゃ、私、買いました笑)
この作品では特に、ぬいぐるみにインパクトがありました。
偶然、彼女の手さげの中を覗いてみたら、見つけてしまった小さな小さな熊のマスコット・・・。
これは、「純血」を象徴しているのかな?
これを見て、彼氏さんは改心します。
最後の「第四の壁」も、新しかった!!!!!
早くもヌーベルバーグの香りがしてます。
黒澤明監督というと、ものすごく男臭いイメージですが、初期の頃は、こんなに爽やかな軽やかだったんだなと、「七人の侍」や、「椿三十郎」の作品を知っているからこそ、
なおさら、ギャップが凄かったです。
そして軽やかさの中に、重さもある。上がったり下がったりジェットコースターみたいですが、最後は、ちゃんと、というか、ガッツリこれ以上無いってくらい観客の側に居ます。寄り沿います。
イメージすることが、今、世の中で一番大事と考える私にとって、
あのラストは、本当にうったえかけてくるシーンでした。
これから「どうなるか。」ではなく、「どうしたい。」のか。
戦後を生き抜いた先人達に、教えてもらった今年の終戦記念日でした。
最後に、私、何回も描いてみた「熊のぬいぐるみ」を載せておきます。
う~~~~~~~ん、何度描いてもあの熊ちゃん、描けないの!
【8/26追記】勝手にクロサワ論2の動画も作りました(*^o^*)
◉戦後、GHQにて行われた”WGIP(ウォー ギルト インフォメーション プログラム”とその影響下の映画について。
◉戦後の黒澤映画表現においてのリアルな闇市描写について。
◉黒澤時代物における〝城”と〝鎧”と〝馬”までの経緯について。
◉「七人の侍」と「荒野の七人」に見る、日本の”勘”と米国の”人徳”について。
◉戦時中は、熊本で特攻隊を送り出す指導官兼、写真撮影部隊だった俳優 三船敏郎さんの”菊千代”から→”鷲津武時”までの遍歴。
◉山田五十鈴、浪花千栄子、杉村春子、原節子、私の好きな女優さん達について。
主に、以上の点について考察して、勝手にクロサワ論!
映画雑談しています。