【推し短歌】「“好き”の瓶詰め」のあとがき。
こんにちは。桜小路いをりです。
今回の記事は、先日投稿したこちらの記事の「あとがき」です。
短歌に込めた意味や、作ったときのささやかな想い、裏側などを気ままに綴っていきます。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
1、彗星の雨が磨いた原石は極彩色の音を紡いで
ひとつめは、SixTONESの推し短歌です。
「SixTONES」について、と考えたときに、まず入れたいと思った言葉が「石」と「音」でした。
「原石」にするか「宝石」にするか迷ったのですが、いつまでも「俺らまだ原石さ」と歌う彼らなので、ここは「原石」に。
でも、やっぱり私の目にはどこまでも美しく輝いて見える6人なので、「磨いた」と過去形にしてみました。
また、私は「ABARERO」のカップリングの「彗星の空」が大好きなので、デビュー曲「Imitation Rain」の「雨」と繋げて「彗星の雨」に。
奇しくも、「Imitation Rain(=偽物の雨)」にリンクした言葉になりました。
そして、「紡ぐ」とは、綿・繭を「つむ」にかけて、繊維を引き出して糸にすることです。
SixTONESの6人が、それぞれに培ってきたものを「SixTONES」というひとつに集結させて、そこからたくさんの音楽や言葉を引き出していく。
紡ぎ出された「糸」であるそれらは色とりどりに輝いて、縒り合わせたり織り上げられたりしながら、数え切れないほどの「極彩色」を創り上げる。
そんなイメージで、「紡ぐ」という言葉を入れました。
2、逃げ延びた魔女は歌った 愛を食み心に花を抱え祈って
お次は、「神椿の魔女」ことV.W.Pの推し短歌。
V.W.PのMVを見たり、歌を聴いたりする中で私が感じたのは、そのコンセプトの底にある「魔女狩り」のような不穏さや悲しみでした。
(あとづけですが、この短歌もぱっと見には「魔女狩り」から逃れた女性を描写しているとも捉えられる気がします)
もちろん、歴史上の「魔女狩り」のように命を取られるわけではないけれど、現実の世界って、どうしても「自分らしく在ること」が難しい場合のほうが多くて。
V.W.Pの皆さんの歌声は、「人と違うこと」「自分の思うままに生きること」「『好き』の想いを大切にすること」を肯定してくれるような気がしています。
「仮想世界」という自由な場所と、「現実世界」という少し窮屈な場所の狭間で響く、「愛」や「祈り」。
それをお伝えしたくて、こんな短歌になりました。
「愛を食む」という言葉は、思いついたときに「よしっ」と声に出してしまったほど好きです。
それは、「逃げ伸びた先」で自由になったとき、自分が他の何か、誰かに向ける「愛」かもしれないし、「逃げ伸びる前」に他者から自分に向けられている「愛」かもしれません。ぜひ、お好きなほうで解釈をしてみてください。
3、真心の愛を繋いで生きるから届け、願いよ綿毛となって
幾田りらさんの楽曲「蒲公英」の推し短歌。
「真心の愛」が、実はタンポポの花言葉です。お気づきの方、いらっしゃいましたか?
個人的なお気に入りポイントは、「届け、願いよ」という読点を使った表現。力強くも切実な想いを滲ませたくて、この表記にしてみました。
「届け、願いよ」で少しドキッとするような強めの表現をしつつ、「~となって」という結びでは、ふっと儚く力が抜けて余韻が残る読後感を作っています。
ここ、我ながら強弱のメリハリが効いていて好きです。
また、「愛が途切れぬように繋いで」という歌詞が印象的だったので、「繋いで」という言葉もプラスしました。
この曲が主題歌となっていたドラマ「大奥」の中で、息苦しい場所で必死に生き抜く女将軍の姿も、ほんのり投影してみたつもりです。
さらに、「蒲公英」という言葉を使わない分、花言葉と「綿毛」で「蒲公英」っぽさを演出しています。
4、「好き」という青い光を追いかけて私は踊る蒼い世界で
YOASOBIの「群青」の推し短歌。
この短歌は、「あお」という言葉を2回使っているところが個人的にポイントです。
まずは、「青」と「蒼」の違いについて。
「青」はいわゆる三原色の青をイメージしていただければと思います。鮮やかで澄んでいる、純度高めの「青」です。
対して、「蒼」は、生気のない、くすんだ感じの青色。
「蒼い世界」という言葉は、「群青」のMVのストーリーの中で描かれる「終末の世界」をイメージしています。辛い現実や、苦しい現状も重ねられる言葉でもあるかもしれません。
「好き」という「光」のように真っ直ぐな想いは、どんなに暗くくすんだ「蒼い世界」でも「青く」美しく輝くもの。
「私は踊る」という言葉もMVの映像のストーリーから取っていますが、それだけでなく、軽やかに、しなやかに、たおやかにこの現実を生きていく、という決意表明でもあります。
5、眼差しは凛と光って真っ直ぐで だから私はあなたが好きで
最後は、私の推し全員に言えることをまとめた、これぞ本当の「推し短歌」です。
「凛」という漢字は、冷たい水に触れて、心身から引き締まるような状況を表す文字。
私にとって「推し」は、その姿や作品を見るたび、声を聴くたび、ぴんと背筋が伸びて「私もこう在りたい」と思わせてくれる憧れの存在です。
だからこそ、「心が引き締まる」という意味をもつ「凛」という字は、私にとっての「推し」そのものを表していると言っても過言ではないくらいぴったり。
「推し」へのラブレターのような気持ちで作ったので、凝った表現はせずに、あえて素直な言葉を繋げてみました。
短歌全体の雰囲気を引き締めるべく、「眼差し」という人の表情の中でも印象的な要素にカメラの焦点を当てたところが、個人的にポイントです。
まとめ
自分の作品のいいところは、自分がいちばん分かってあげていなきゃいけない、というのが私のひそかな信条です。
なので、ちょっと自画自賛が過ぎたかな……とは思いつつ、このまま「まとめ」に入っています。
この記事では、「こんな想いを込めて作った」「ここがポイント」という短歌の解説を、つらつらと綴っていきました。
でも、これはあくまでも私自身の解釈であり、「正解」ではありません。
だから、もしあなたが「この短歌はこういう意味だと思ったんだけど……」と違う解釈をしていても、「間違い」ではありません。
その解釈を、ぜひ大切にしてあげてください。
そして、私が込めた想い以上の意味をこの短歌たちに見出してくださったことに、お礼を言わせてください。私の紡いだ言葉に、新たな命を吹き込んでくださって、ありがとうございます。
もちろん、この解説を読んで、「なるほど!」と納得してくださったあなたにも。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
推し短歌、考えていてとても楽しかったので、また投稿してみたいなと思っています。
そして!
ひとつだけ、宣伝させてください。
本日発売の『別冊カドカワ YOASOBI総力特集』の中の「私たちの”YOASOBI体験談”」に、桜小路いをりの文章を、ほんの少し掲載していただいきました。(掲載されているペンネームは、下の名前のみです。ぜひ探してみてください。)
YOASOBIへの愛に溢れた素敵な一冊に、私の想いも寄せることができて、とても嬉しいです。
ぜひぜひ、お手に取ってみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。 私の記事が、皆さんの心にほんのひと欠片でも残っていたら、とても嬉しいです。 皆さんのもとにも、素敵なことがたくさん舞い込んで来ますように。