哲学消息─Whereabouts of Philosophy─

地方国立大学の人文学部で哲学を教えたり研究したり。といっても、数理哲学史という、とてもマイナーな分野を研究しており、居場所に苦しんでいるとか、いないとか。

哲学消息─Whereabouts of Philosophy─

地方国立大学の人文学部で哲学を教えたり研究したり。といっても、数理哲学史という、とてもマイナーな分野を研究しており、居場所に苦しんでいるとか、いないとか。

最近の記事

哲学は役に立たないのか(3) 哲学の有用性批判に対する,アリストテレスによる哲学の擁護

哲学の有用性批判  哲学の有用性にかんしては,すでに古代ギリシアにおいて懐疑的な批判があった.アテナイの市民,とりわけ若者たちを惑わし,異質な宗教で政治を乱したとして,ソクラテスが告発され処刑された例は,その一つの頂点であろう.こうしてソクラテスの弟子たちは,師の教えをそれぞれ継承していくが,中でもプラトンが哲学の学園アカデメイアを建設し,師の思想を対話篇の中で伝え,哲学を発展させたことは有名である.  哲学ほど,どの時代においてもつねに批判されてきた学問はないだろう.現

    • 「哲学は役に立たない」のか(2)

      前回の記事から、一ヶ月以上空けてしまった。想定していたよりも多くの反応をいただき、ありがたく思う。書きたいときに気軽に書くつもりが、ちょっとハードルが上がってしまった気がして、かえってなかなか書けずにいた。そうしてボヤボヤしているうちに、「役に立つ/役に立たない」という観点から議論を考える意義がそもそもあるのか、疑念が尽きず、徐々に書きたい気持ちが冷えてきているので、冷え切ってしまう前に、とりあえずまた適当に書いてしまおうと思う。 3. さて、「哲学が役に立つ」と言えるのか

      • 「哲学は役に立たない」のか(1)

        1. 「哲学は役に立たない」という発言は、しばしば見られる。社会で活躍している企業人から、あるいは他の専門の研究者から、あるいはどこの誰ぞとも知らない一般の方から。ネットで検索すれば、哲学に対する罵詈雑言はワンサカ出てくる。みんな、そんなに哲学がキライなのか・・・、と感慨深い。哲学のイメージは、どうやらかなり悪いらしい。もしあなたがまだ高校生くらいで、将来大学で哲学を勉強したい、などという気でいたら、どうか覚悟をしてほしい。哲学に対する世間の評価は、たいそう辛いものだからだ。