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第42話 「NAMM Show」

  (松本市民タイムス リレーコラム 2019年2月21日掲載分)



2019年1月にロサンゼルスの南、アナハイムで開催された楽器展に自分の工房で作った楽器を出展してきました。

NAMM(ナム)ショーは一般人入場不可の世界最大の楽器展示会。
楽器業界の人しか入場できないのにもかかわらず世界中から10万人が集まり、出展ブース数も2千を超えます。

NAMMは楽器製作者にとって憧れのイベントです。空港からバスで会場に向かい巨大なコンベンションホールの前に立つだけで胸が高鳴ります。

会場に入るとギターの音が耳に飛び込んできます。世界中のバイヤーが新しい楽器を見逃すまいと真剣に試奏をしています。有名ミュージシャンによるデモ演奏もあちこちで繰り広げられ、人々がブースを幾重にも取り囲んでいます。地上3階地下1階の広大な会場には沢山のブースが並び、急ぎ足で見ても2日間では足りないくらい。

その熱気を見ていると、やっぱりアメリカにはかなわないなぁと感じます。音楽や楽器に対する情熱が日本人とは一桁違う感じです。カントリーミュージックなどが昔から生活に根付いているからでしょうか。

周りを歩く人々の外見からしてもちょっと違います。鋲がいっぱいついた革ジャン。鼻ピアス。髪が緑色。腕や肩がびっしりと入れ墨なんて人たちが普通にビジネスをしています。日本の展示会ではあまり見られない、ロックの本場ならではの怪しい雰囲気。

でも、そういった人たちを見ながら少しウキウキしている自分を発見します。
やっぱりロックにはこういう危険そうで胡散臭いエネルギーが欲しい。そういう、何かを手に入れてやろうと企んでるエネルギーこそがアメリカンドリームを支えて来たのです。

近隣のホテルロビーでもライブ演奏が毎日深夜まで続きます。
ステージ前までぎっしり立ち見で埋まるのですが、アメリカってすごいなと思ったのはパンクファッションの荒っぽそうな若者が、車椅子の人が近づくと笑顔でスッと場所を開けるのです。爆音の中ステージかぶり付きで車椅子の男性が両手を振り上げて楽しんでいるのを見て、日本との差を感じつつも僕も嬉しい気分になりました。

NAMMは自分が世界に繋がる場所。様々なブースを見、人と会い、気持ちが高ぶります。会場には若い人も多いけれど僕と同世代やもっと上の怪しいオヤジ達がうようよしててみんな何かしらかっこいい。うん、アメリカなんだ、ここは。そう感じます。

嬉しい事に今回展示した楽器はイギリスやドイツのバイヤーに気に入られてほぼ完売しました。今頃それぞれの国の楽器店の店頭に並んでいる事でしょう。

(画像は、実際に2019年のNAMM Showに展示した楽器たちです)


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