第32話 「草間彌生 私の愛のすべて」
(松本市民タイムス リレーコラム 2018年4月5日掲載分)
松本市美術館で開催中の草間彌生展を観に行ってきました。
草間彌生さんは1929年松本生まれ、89歳を迎えた今でも現役で毎日創作活動を続け、「世界で最も人気のあるアーティスト」と呼ばれる、世界的に影響力を持つ芸術家です。松本市内を走る循環バスで赤い水玉模様の「草間彌生バージョン」を見た方も多いと思います。
僕も以前から常設展は何度か観に行っていたのですが、今回は過去最大となる展示数、しかも特別前売りチケットには可愛らしいYAYOIちゃん人形付き!となればこれは行かない訳にはいきません。
水玉アートが代表作の草間さんですが、「そんなに水玉ばかりで何がすごいの?」と思う人も多いのではと思います。
僕も最初はやはりそう思っていた1人でした。だからこそ、とにかく一度美術館を訪れて欲しいなと思うのです。
僕が草間彌生さんの作品に惹かれる理由は、その絵に込められたエネルギーです。
小さな水玉や網目を坦々と延々と積み重ね描き続けていくことで、やがてそれが塊になりうねりになりとても大きなパワーを感じるのです。きっとそれが草間さんが表現したい宇宙や世界観なのかなと思います。もしくはそれは彼女からの問いかけなのかもしれません。「あなたはどう感じるのか。どう生きているのか。」という。
半世紀以上も前、20代の若い女性が窮屈な日本美術界を逃れ単身アメリカに渡り挑戦を始めました。お金も無く、食べるものも買えず、凍えるような寒さの部屋でひたすら絵を描き続けた、その原動力は何だったのでしょう。
神は細部に宿る、という言葉があります。物づくりの場でもよく言われますし、色んな捉え方の有る言葉なのですが、草間さんの絵を見ていてこの言葉を思い出しました。「無限の宇宙も巨大な星々も分解していけば小さな細胞や原子分子であり、それが沢山集まって出来ている。実はその小さなひとつひとつこそチカラが宿り神が宿っているのだろう。」と感じます。途方もない数の小さな水玉を何年も何年も無我夢中で描き続け、そして草間彌生さんは世界的なアーティストになったのです。
今、目の前の紙に向かって、とにかくひとつ水玉を描いてみよう。そしてそれが何ものかになるまで描き続けよう。そんな思いに駆られます。
春4月。これから新しいスタートを切る人達にも是非草間さんの絵を見てパワーを貰って欲しいなと思います。
「草間彌生展」、お勧めです。
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