第16話 「グッドデザイン」

9月末、僕が開発・製作した楽器が今年度のグッドデザイン賞を受賞しました。10月6日付の本紙にも記事を載せていただきましたが、 受賞作品は全く新しい小さなエレキベースです。

4月の応募受付から始まり数ヶ月間に渡る一次二次審査を経ての受賞で、世の大企業達に混じって僕のようなちっぽけな工房が受賞できたことを本当に嬉しく思っています。

今回の受賞作は今までの大きなエレキベースを6割ほどに小型化し、なおかつ普通のベースと同じ低音が出るというものです。「楽器が大きい。重い」という事に対する僕の新しい提案です。 小さくすることで小柄な女性や子供、力の弱いお年寄りや身体に何らかの障がいがあって大きな楽器演奏が困難な方などにも広く演奏を楽しんでもらえるのではないかと思っています。審査員に評価されたのもこの「新しいユーザー層に楽器演奏の楽しみが広がる可能性」でした。

実はこの賞に応募してからずっと、デザインって何だろうと考えていました。

普通は「いいデザイン」と言うと表面的な形や図案、色合いを指すことが多いと思います。

でも、実はデザインというのは商品のお化粧的な部分だけではなく、機能などの設計も含んでいます。特に最近は携帯電話などに見られるように新たな機能を山盛りにした上で、如何に洗練された操作性を実現するかが大切になっています。これもデザインです。

そしてもうひとつ、デザインには「問題解決の方法」という力もあります。

例えば信号機。人や車が皆自分勝手に走ったり歩いたりするととっても危険。それを解決するために信号機がデザインされ、世界共通の色が決められました。

他にも日常のあらゆる場面でデザインは使われています。横断歩道。トイレの男女分け。蛇口の温度を示す赤と青。12等分された時計の文字盤などなど。当たり前になっていて気にもしていないけど、優れたデザインのお陰で人類は便利に安全に暮らしていくことが出来ます。

ふと考えてみれば、世界で最初のデザイナーって実は神様なのかもしれませんね。

この宇宙の全て。原子分子から始まって太陽系、銀河。
地球に海を作り山を作り、たくさんの生物をデザインしそしてオトコとオンナを作った。そして生物の進化までも。

すごいなぁって思いません?

僕はよく材木を製材した時にその断面の美しさに息をのむことがあります。その面を切らなければ全く誰も見るはずの無い秘密の美しさ。神様のデザインに興奮する一瞬です。

(松本市民タイムス リレーコラム 2016年10月30日掲載分)

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