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捨てる勇気

「断つを決める」と書いて「決断」。経営に限りませんが、どんなことであれ成果を上げようとするのであれば、「やらないこと」を決めるのが最初の一歩になります。

成果のためにどこまで犠牲を払えるのか、何を捨てるのかを決めて腹をくくり、批判されてもぶれずに実際にそれを捨てきれば、大抵のことは実現できます。

経営でいうならば、例えば「利益率の低い売上ブロック」をどうするか、という問題がその典型例。

この点、「Dilutiveな(全体利益率が下がる)売上など意味がないから不要である、捨てて構わない」と皆、口では勇ましいのですが、いざ自分が経営する立場になり売上目標を持つようになると、大多数の人は捨てる勇気を持てません。

「ただでさえ今期の売上目標は厳しいのに、このブロックを失うと予算が達成できないかも。そうなると自分の評価が・・・、地位が・・・、出世が・・・、ボーナスが・・・」といった恐怖に苛まされ、判断ができなくなるケースがほとんど。

ただ、それを認めるのは自分がみみっちいようで悔しいので、「利益率こそ低いが、売上規模は大きいので、内部のコスト構造を改善すれば利益が出るかもしれない」という論点にすり替え、決断を先送りにします。

もちろん実際にそうなる可能性は完全には否定しません。そのための努力は徹底的にすべきでしょう。

ただ、最初の仕切りが誤っていると(価格設定、想定顧客、契約条件等)、どこをどう頑張っても利益が出ないか、利益水準が目標値に到達することがないのが現実。それが故に、これまで現場がどんなに努力しても利益率が改善しなかったのではないでしょうか。

そして、決断を先送りにしているうちに利益率はさらに悪化し、関わるメンバーの士気もダダ下がり。「うちのトップは決断できないよなあ」と社員の信頼を完全に失うケースを何度も見てきました。

腹をくくれば何も怖くない

解決は簡単で、経営が「たとえ短期的に売上が下がったとしても、想定利益率に届かない売上ブロックは断固として捨てる」「その責任は全部自分が負う」と宣言し、何があってもそれを貫くだけでいいのです。

商売を失ってもいいと腹をくくって初めて、本気の値上げ交渉をすることができます。

交渉に成功するケースも多々あるでしょう。その場合は、迫力の勝利、胆力の勝利。刺し違え覚悟で本気で交渉しにきているのか、単なるブラフなのか、相手の目を見れば一瞬で分かるからです。

決裂すれば、覚悟通り実際に手を引けばいいだけなので、何も恐れることはありません。その場合、短期的には売上が下がるでしょうが、その分のリソースを他に回してリカバリーを図ることができますし、何より経営が「利益率の下がる売上ブロックなどいらない!」と勇ましく叫んでいたことが嘘ではなかった、本気だったんだと社員に伝わります。

経営の言葉に信頼が生まれ、次に発する言葉にみんなが真剣に耳を傾けてくれるようになります。この効果は軽視すべきでありません。

もちろん本当に売上予算未達になれば、ペナルティは免れないでしょう。その信賞必罰は明確にすべきです。そうしないと、こうなるからです

ただ、そもそも「責任を取る」覚悟を最初に決めているはずなので、たとえクビになろうとも何も怖くないはずですし、実際に責任を取れば経営全体への信頼を高めることにもなります。

死して経営の信頼を高められるのであれば、経営者として本望でしょう。

もちろん進んでクビになる必要もないので、売上を捨てるような決断は、会社全体を眺めながら「それでも全体予算は達成できる」という判断とセットで行うのが最良です。そのために先手先手で策を練り、売上予算に余裕を持ちながら経営をすることが重要になります。

そこまでしてやりたいかどうか

経営が覚悟を決め、刺し違える勇気を持って取り組めば、解決できない問題はほとんどないと信じています。

解決できないのは、技術的にできないのではなく、そこまでしてやりたくないか、そんなリスクを負うならやらないというだけの話だと自分は思います。


#くじらキャピタル #捨てる勇気 #そこまでしてやりたいかどうか

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