材料出尽くし銘柄の投資戦略
■狙い
株式投資トレーダーなら避けては通れない「材料出尽くし」による下落。これをどうにか利用できないのかというのがこの記事の狙い。
■「材料出尽くし」売りのメカニズム
どうして「材料出尽くし」の売りが起こるのかは、以下のような理由だと考えられる。
1.悪い決算ではなかったが市場の期待水準に届かなかった(サプライズがなかった)。
2.良い決算だったがゆえにホルダーからの利益確定売りのオーダーが新規買い以上に出てしまった。
3.決算は良かったが、将来予想が保守的だった。or期待外れだった。
4.(決算関係なし)新商品、新規プロジェクト、新たな経営計画、市場変更の実施時期、規模等が明らかになった。
5.その他諸々予期されていたことが実行された。
早い話が、これは「期待で買って事実で売れ」という相場格言通りに市場参加者が動いている証拠でもあり、避けては通れないのがこの「材料出尽くし」である。
■いかに味方に付けるか?利用できるか?
なんでこの「材料出尽くし」を調べようと思ったのかというと、「材料出尽くし」で売られた銘柄は市場の過大な期待を少し裏切っただけで、ファンダメンタルズは平均よりも強い銘柄であり、すぐに回復するだろうから下げ止まったところを拾いに行けば簡単に儲かるのではないかという、身も蓋もない浅知恵を思いついたからだった。
ところが(いや、ありがちだが)、色々情報を集めると同時に、集まった材料の料理方法を考えはじめてみたが、そう簡単に上手くはいかったというのが正直な感想である。
■案外根深い「材料出尽くし」の影響
ここ2年くらい「材料出尽くし銘柄」を追いかけてウォッチしているが、一旦材料出尽くしで大きく売られたら回復するのに時間が掛かる銘柄が多いと感じている。自分が見る限り大雑把に云えば半数近くの銘柄は1ヶ月経っても売られた日の水準に戻ってこない印象がある。極端な例だと「材料出尽くし」日付近がその株価のピークで、1年以上下げ続けているなんていう銘柄もざらである。
大きく下げて、売るに売れなくなって塩漬け状態になってるケースが多いのだろうと思う。所謂「シコリ玉」の状態。こうなってくると一旦上昇してもすぐに「やれやれ」売りが入ってきてなかなか株価が回復しない。
もう一つが、材料出尽くし後、そのままファンダメンタルも崩れてしまうケースだ。これを食らうと悲惨だ(売り方の分析が結果として正しかったということでもあるのだが・・・)。これを掴んでしまったら泣く泣く損切りする他ない。
この「材料出尽くし」、色々利用方法を試みているが、今のところ材料出尽くし売りの価格帯にテクニカルが効いている銘柄に的を絞って売買する戦略がシンプルでとっつきやすいと感じている。
以下に手法を簡単に示す。
■情報収集方法
まずは情報収集の仕方。これは簡単。Googleアラートで「材料出尽くし」というワードを登録するだけ。するとGoogleのメールアドレスに該当のニュース記事等が飛んでくるので1日一回チェックするだけ。ただしこの方法に速報性はないので、デイトレードとかの短期売買には不向き。また情報の速度は最大で二日くらい遅延すると思っておいた方がよい。
■具体的利用方法
・Googleアラートで飛んできた情報をピックアップしてリスト化しておき監視する。またチャート上では材料出尽くしで下落した日の始値に水平線を引いておく。
・逆に「材料出尽くし」の株価が反転し、上記水平線付近まで上昇してきた場合はその銘柄の買い付けは避けるようにする。その水平線が上値抵抗線になる可能性があるからだ。買い向かうのはその価格を上抜いてからで遅くない。
・さらに云えばその価格がテクニカル的にレジスタンスからサポートに転換した場合もっと優位に買いに行ける。
・チャートソフトで水平線価格の交差に対しアラートを仕掛けておくと把握が楽。
・押し込まれて大きく下げた銘柄が特定のラインで下げ渋り始めてきたら材料出尽くし」の水平線を一旦の目標価格に設定した反発を狙うこともできる(後述する固定VWAP)。
■ファンダメンタルのチェック
「材料出尽くし売り」を食らったときのEPSやPERをみておく。例えばEPSが落ちていないのに株価が下がったときは、後に買い戻される可能性が高い。また必ずしもそのレベルまで戻るとはかぎらないが、落ちる前のPERを回復後のターゲットとして意識しておくのも良いだろう。
■若干の留意点
「材料出尽くし」の判断に明確な基準はなく、ニュースの記事を書くライターやアナリストの主観が入ってる場合がある。これはどうみても明確に悪い決算じゃねーかーという場合や、記事を書くタイミングで「材料出尽くし」にされたけど、大引けにかけて価格を大きく挽回し、それほど材料出尽くし売りか?というケースがあったりもする・・・。
■おまけ「材料出尽くし銘柄」のための単純なストラテジー
1.通常ルール(水平線ブレイクアウト)
・材料出尽くし日の始値に水平線を引く
・水平線を終値が越えたら次の日の寄付きでエントリー
・ストップロスは水平線を越える前の最安値付近。
・リスクリワードは1:1以上とする。
2.水平線サポートを確認してから仕掛けるルール
・一度水平線を上にブレイクし、再度価格が水平線まで落ちてきて水平線(付近)で陽線で反発し、水平線がサポートラインとして機能した(レジサポ転換が起きた)ことが確認できてから買い向かう手法。こちらはロスカットラインを水平線のやや下に置けば良いので、リスクリワードを高く設定できる。
・ただしこの場合ターゲットプライスは任意。チャート左側に明確な高値があればそこでもよいが、短期移動平均線を陰線で割り込むまでとかRSIが伸びていって70を超えたらとか、ボリンジャーバンドの+2σ到達とか、天井を示唆するローソク足パターンが出現したら切る等なんらかの手仕舞いルールが必要。
3.その他参考
・従前の高値、安値参照にはzigzagインジケーターが便利。
・長期的投資スタイル。反発が確認出来たら、材料出尽くし日のPERへの戻りがおこることを想定し、長期的投資スタンスを取る方法もある。チャートにあまり翻弄されないので腰を据えて狙える。ただし回復には半年以上かかるケースもある。
・固定VWAPを利用した短期的反発を取る手法(Tradingview専用手法)
他のチャートツールでこれが出来るのかどうかしらないので専用手法としているが・・・。材料出尽くし日を基点とした固定VWAPラインを引き、VWAPラインをローソク足終値が上に抜けたらエントリー。ただし現在価格よりも上に出尽くし水平線があるのならそこをターゲットプライスとし、リスクリワードが悪い場合は手出ししない。
以上簡単ですが今のところ思いつくことをまとめてみました。もう少し別のアプローチで対峙できるアイデアを思いついたら、この記事をまた補足していきたいと考えてます。