2024年8月5日と同程度の過去のショック相場において、買い向かっていたら、その後どうなったのかについての検証。(移動平均線乖離率を使用して)
はじめに:円キャリーショック?
今年(2024年)8月5日(第2週月曜日)の下落、凄かったなあ。拙ポートフォリオも今年に入って積み上げていた含み益は全部飛んで瞬間的に年初来マイナス転換してしまった(その後の反発で7〜8割程度は戻っているが...2024年8月23日現在)。
このように滅多に起こらないパニック的な売りは一般的に「○○ショック」と名前が付くのだが、今回の下落はなんと呼ぶべきなのかネットの情報見ててもよく分からないが、「円キャリーショック」とか「日銀ショック」、「植田ショック」と呼ばれるようになるのだろうか。
世界的に見ても東京市場の下げ方が突出していることを勘案すると、円キャリーの巻き戻しに揺さぶられたのが主たる要因ということなのだろう。
・・・とショックの命名は本題ではないので話を戻す。今後の心構えとして頭の片隅に入れておくことは無駄ではないと思うので、このような暴落は過去どの程度起きていたのか、そして仮に買い向かっていたらどうなっていたのかを主要な(昔から上場している)銘柄を中心に調べてみたので共有してみたい。
どの程度の下落であったのか
今回の暴落、日経平均では値幅過去最大、下落率過去2位という規模であった。これをテクニカル的な視点で捉える方法も色々あるかと思うが、逆張り手法でよく利用される移動平均乖離率を使って調べてみることとした。
移動平均乖離率は現在価格と移動平均との乖離(差)を百分率で計算したもので、一般に25日の単純移動平均線と株価の終値から計算されるものがよく利用されている。
日経平均における8月5日の下落は、25日移動平均乖離率で表現すれば-20.38%であった。この-20%を超える水準の下落は過去何回起きたのかを調べてみると(とはいえTradingviewでトレースできる範囲しか調べてないが)、今回を含め5回起きており、残りの4回は1949年12月、1953年03月、2008年10月、2020年03月の下落であった。調べてみて分かったのだが、1987年10月19日のブラックマンデー(日本市場が影響を受けたのは翌20日の火曜日)の25日移動平均乖離率は-14.33%であり、乖離率という視点で見るとインパクトは今回の方が上だ。
大雑把に言えば、15年に一度レベルの下落であり、30年位投資をしていたら1回か2回はこの程度のことは起きうるともいえるだろう。
落ちるナイフを掴んでみるテスト
では、個別株において今回と同程度の大きな下落のケース時に、落ちるナイフを掴みに行く覚悟で買い向かっていたらどうなるのか、調べてみた。個別銘柄の方がボラティリティーが指数よりも大きくなりがちであり、日経平均よりもチャンス(?)もやや多いはずだと予想していたがその通りだった。
東証に上場する時価総額トップ100銘柄について、25日移動平均の乖離率が-20%を超えたら翌営業日の寄付きで買い、終値が25日移動平均線を上抜いたら(移動平均線に回帰したら)翌営業日に売るという単純なストラテジーを組んで検証してみた(結果は下表参照)。
なお、調査日時点(2024年8月23日)では今回の下落から回復していない(=まだ移動平均線に届いていないのでまだポジションをもったままイグジットできていない)ものも含んでいることに留意して頂きたい(もう少し待ってみないことには今回の暴落によるエントリーがどうなるのかは現時点では全体像がまだハッキリとしていない(一部利益確定できているが、全部ではない)ので途中経過だと考えて欲しい)。→2024年9月27日時点で再調査し、下記の図表は修正済みの物に差し替え済み。
当然ながら取引回数の絶対数がとても少ないので、あまり参考にすべきではないかもしれないが、結論から云えばこのように大きく下げるケースにおいてはトータルでは逆張りがしっかりワークする(した)と断言できるだろう(もちろん勝ちを100%保証するものではないが)。
検証結果について
・個別銘柄の取引データは古いもので1980年代後半からとなっており、概ね30〜40年間程度の期間がある。平均取引回数が約4回。従って個別株においては今回のような下落は10年に一回あるかないかレベルの下落だといえる(つまり指数に比較すれば1.5倍程度頻度が高そうである)。
・データを見て貰えば分かると思うが、取引が全勝となってる銘柄が約4割もあり、案外多い(38銘柄/100銘柄)。
・逆に一度も取引がなかった(=そこまで下げなかった)銘柄数が6であった。←これらの銘柄は感応度が低いというか、強いというべきなのか掘り下げていっても面白いかも・・・。今回はスルーします。
・全体で平均すると勝率は約78%。算出可能な平均プロフィットファクターは約8.7※(取引回数が寡少なのでこの数値はあまり意味がない。全体のプロフィットファクターを算出すると2.80)。1回の取引あたりの平均リターンは8.06%となった。
※全勝のケースは分母の総損失が0となりプロフィットファクターが計算できない。2.80は全体の取引で得られた利益と損失から計算。
頭の片隅に置いておくこと
以上のように、今回のような滅多にない大幅な下落局面であれば、落ちるナイフを掴みに行くのは勝てる(正確には『勝てた』)戦略だといえると思う。だが、10年に一度あるかないかの取引機会でもあるし、今回個別のファンダメンタルズ要因やセクター別の推移、下落する直前のテクニカル的なトレンド等はまったく考慮していない大雑把なものなので、これが最適な対処方法だとは言い切る自信がない。しかし、頭の片隅に置いておくことは重要だろう(慌ててぶん投げる前に冷静な判断も出来るだろうし)。
また今後こういった場面に遭遇した場合、以後のファンダメンタルズの崩れが少なそうな銘柄の中から対象をチョイスし、5〜10銘柄に分散して買い向かうというのが実用的かつ賢明だろうと考えられる。
例えば今回の下落の主犯は円キャリーの巻き戻しではないかと云われているが、そもそもの発端である金利上昇で恩恵を受けそうな金融系や、円高メリットを享受できる国外生産品を輸入販売している小売業等であれば、ファンダメンタルズが大きく崩れるとは考えにくいセクターであり、これらの中からチョイスするのが好手だったのではないかと考えられる。
[蛇足]
なお、過去がそうだったら将来も同様にワークするという保証はないので為念。