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チボー家な日々が終わる

 前回のノートからはやくも1か月以上が経ちました。ほんとに少しずつ、少しずつ感染者が減っているけれど、やっぱりコンスタントに毎日陽性者が出ています。もはや、いつ、どこで、誰がかかってもおかしくない状態。このまま時が過ぎるのを待つしかないのではないだろうか、とも思います。そんな日々の中、季節は過ぎていきます。僕は相変わらず、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、と思いながらも最低限その日にやること(それだけでもかなりたくさんある)だけをこなしていく日々。寝る前、ほんとに寝床に入ってから眠りに落ちるまでに本を読む日々です。たまに、ワクチン当番や他の仕事で出動したときなどのちょっとした隙間時間を利用してまとめ読みをしていました。
 途中経過はこないだ書いたのですが、ついに4月28日の土曜日、世間では大型連休の初日とされる日の夜に、2022年の私の年初の目標にしていたチボー家の人々全13巻(白水Uブックス)を読了しました。
 8巻、つまり戦争の足音がヒタヒタと大きくなってきてから、ジャックとアントワーヌ兄弟をはじめとしたチボー家の人々が第一次世界大戦へむかってひた走る激動の国際情勢の渦に巻き込まれていきます。ダイナミックな展開、特になんとか戦争の不幸から人々を救おうと奮闘するジャックのことばがあちこちで炸裂します。10巻(1914年夏Ⅲ)は!が多発しています…原文もそうなのだろうか…

 ジャックの演説。

 「戦争!諸君は戦争を望まないというのか?だが彼らは戦争を望んでいるのだ!そして、いやおうなしに諸君に戦争をさせようとしている!諸君は、その犠牲者になろうとしている!だが、諸君にも同時に罪があるのだ!なぜか?戦争は、諸君だけがよくこれをやめさせることができるからだ!…(中略)… それはただひとつ!抵抗のために団結するのだ!ぜったい戦争を拒絶するのだ!」(1914年夏Ⅲ P142 )
 
 そしてさらにびっくりマーク多発。

「諸君は聞かされている。『戦争をさせるものは資本主義だ、国家主義の競争だ、金の力だ、軍需工業家だ』と。それらすべて、もちろんそれには違いない。だが諸君、考えてみたまえ。戦争ははたしていかなるものか?それは単に利害関係の衝突なのか?残念ながらそうではない!戦争とは、まさに人間であり、また人間の流す血潮なのだ!戦争とは、動員され、互いに戦いあう国民なのだ!大砲も、小銃も、打つ人なしには打てないのだ!戦争には兵士がいる!そして、資本主義が、こうした利益と死との事業のために必要とする兵士、それこそわれらにほかならないのだ!いかなる法律の力も、いかなる動員令も、わられらなしには、われらの承認なくしては、われらの受け入れ態勢なくしてはあり得ないのだ!すなわち、われらの運命は、われらのうえにだけかかっているのだ!われらこそ、われらの運命を自由にできる。われらは多数ではり、われらは力であるからなのだ!」(1914年夏Ⅲ P143 )

 ジャックはあくまで真っ直ぐです。

「戦争は、何ひとつ人間の生活問題を解決しません!何一つ!それは働くものののみじめな状態をさらにはげしくするだけなのです!」(1914年夏Ⅲ P196 )

 それに対して、「物事ってのはそんなに単純じゃないんだ」と周囲から諭されたり、「個人にはそうかもしれないけど、国家は紛争を解決して、結果として個人には利益をもたらすのでは?」みたいな意見を言われても彼はまっすぐにこう反駁します。

 「ぼくには…暴力が認められません。たとい暴力にたいする場合でも!僕は、心に暴力の下地がひそみこみそうなわずかなすきまさえも残したくないのです!‥・ぼくは、あらゆる戦争を拒否します。たといそれが「正しい」にせよ「正しからざる」にせよ!たとえどんな戦争でも。どこの国がおこしたのか、どういう動機に出たものにせよ!」(1914年夏Ⅲ p198)

 戦争をなんとかしてとめようとしたジャック。
 「世界に平和をとりもどしてやるのだ‥‥」(1914年夏Ⅳ p224)
 とつぶやきながら。しかし彼の努力は空回りを始める。なんとか飛行機を手に入れ、ついにいよいよ実行に移しはじめたとたん…衝撃の展開…読んだ瞬間ボーゼン。

 当時多くの読者がここで終わり、と考えたのもうなずけます。しかし、エピローグが続きます。療養を続けるアントワーヌ、そしてここまでチボー家にかかわってきていた人々のその後が少しずつ、ゆっくりと展開していきます。そして徐々に動きがなくなっていき…最終クライマックスへ…

 連休前に読み終わってよかった。
 たぶん仕事はたくさんあるのでゆっくりなんてできませんが、気持ち的にはゆっくり過ごせそうです。

 最後の解説で、訳者の山内義雄さんが、1971年4月に残したこの言葉が紹介されています。
 
 「もし、今次戦争をもって、単に一場の悪夢として片づけ、これに引き続く省察と検討とを忘れた場合、そこにわれらを待つ恐るべき深淵がある。」

 メディアは今、戦争のニュースで溢れかえっています。
 情勢解説や戦況の行方ばかり注目が集まりがちですが、僕は、ちょっと違う方面から、考えていきたいと思います。

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  そろそろ、プライマリの話もしていかないと。

 (続きます…たぶん…)



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