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社交不安障がい者が旅をする。#50
「タクシー、出租车じゃなくて的士なんだ」
早速、自分が知っている中国語との明らかな「違い」を見つけて、おもしろッとテンションが上がってしまっている自分がいた。
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9時間半の飛行機旅を経て降り立ったのは、この旅最後の目的地、香港だ。
オーストラリアに滞在したのは1日半だけだったが、街を巡るだけなら割と十分かなという気がした。
だけど、あそこはとにかく雰囲気が最高で、観光というよりは定住したい場所だということが分かった。
「その内オーストラリアを車で一周とかしよ」
そんなことを思いながら離豪した。
最初、香港を訪れようとは思っていなかった。
だが、シドニーから名古屋までのフライトを調べていたところ、香港経由だと安く済ませられるということが分かった。
「だったら香港も回ってみよ」
いつもの僕の旅スタイルだ。
乗り換えのある安いフライトで、乗り継ぎ先の国も回ってみる。
1人気ままにどこでも行けるからこそ、できる旅スタイルかもしれない。
搭乗した飛行機内で、乗客相手に仕事をしていたキャビンクルーのお兄さんは、英語、広東語、普通話が堪能だった。
会社員時代、Meetupで僕より一回り年上の香港出身の友達ができた。
彼は日本で英語の先生をしているが、広東語はもちろん、北京語の知識も持ち合わせていた。
香港に行こうと決めてから、Youtubeを漁っていると、たまたま周庭氏のチャンネルを見つけた。
興味を惹かれて見てみると、彼女が広東語で話している動画が流れ始めた。
それを見て、暴風雨中の落雷級のショックが、僕の中で走った。
「なにこれ、全く聞き取れないんだけど…
完全に別の言語じゃん!」
初めてまともに広東語で話している様子を目の当たりにして、僕が慣れ親しんだ普通话との違いを知ったからだった。
そんなことを経験していたので、来ることになってから、香港ってどんなとこだろう、と興味が湧いていた。
それに、この旅が中国内地からスタートして中国香港で一旦締めくくりになるのもまた、悪くないじゃん、と思わせるのだった。
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飛行機を降り立って入港する。
イミグレーションは至って普通だ。
中国内地のパスポート所持者、中華民国のパスポート所持者と、その他外国のパスポート所持者で受付場所が異なる以外は。
手続きを済ませて到着フロアに出ると、早速面白いものを見つけた。
Taxiという英語表記の上に書かれていたのは、「的士」という文字だ。
「あれ、“出租车”じゃないんだ」
北京語でタクシーは“出租车”と言う。
一応、“Bus”は“巴士”と言えたりするが、“的士”もそれと似た感じなのかな。
発音も“Taxi”にちょっと似てるし。
香港といえば、1997年までイギリスの植民地だった。
こんなところにも、その頃の影響というか、名残があるんだな。
いきなり、公共表示の中に自分の知らないものを見つけて、面白いなとテンションが上がった。
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エアポートエクスプレスに乗って香港島にやって来た。
地下鉄に乗り換えて、宿の最寄り駅まで移動する。
街の表示で使われているのは、全て繁体字。
駅や電車の中でのアナウンスは、広東語、北京語、英語の順で3回流れる。
アナウンス忙しいなと思いながらも、唯一全く聞き取れない広東語を注意深く聞いてみると、新たな発見があった。
例えば、北京語でドアを意味する“车门”の発音は“chemen”だが、広東語では“cemun”のような音になっている。
よく聞いてみると、北京語と似ている部分も多そうだ。
それに、文法は広東語と北京語で差異はなさそうに聞こえる。
周庭氏のYoutubeで広東語を聞いた時は全く別の言語かと思ったが、これも中国語の中の一言語なんだなと理解した。
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そうこうしていると、目的の駅に到着した。
電車を降りて地上を目指す。
駅に併設されているSOGOを横目に、階段を登った。
地上に出ると、およそ今まで見たことのない景色が広がっていた。
走っているいくつかのバスには「角」が生えていて、上海や北京で見かけたのもを彷彿とさせる。
しかし、それらのバスは観光用なのか、イギリス植民地時代の名残なのか、欧風のデザインをしている。
背景になっている建物は、理路整然と区分けされたマンションのようで、壁面には部屋ごとに室外機がびっしりと並んでいた。
「なんだこれ」
それは、僕のこれまでの人生において見て来たどことも似つかない、独特な景色だった。
道路の両端に立ち並んでいるビルは、それなりに高さがある。
それが道に沿って延々と続いていた。
ビルは、商業施設もあれば、人が住むマンションもある。
ここが、世界でも有数の人口過密地域だと言うことは事前に知っていたが、実際に来てみると、なるほどと、身体がそれを理解した。
なんとか宿を見つけてチェックインする。
「街巡りは明日にしよう」
時刻は夜7時。
今日はこのまま休むことにした。
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