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社交不安障がい者が旅をする。#34

お昼に食べに行ったのは中華料理のお店だった。
メニューの中で一番安い、4.5ドルの糯米叉烧饭を頼んだ。
出てきたのは小さな小皿に0.5合くらいのご飯と焼豚が乗ったのもだった。

「少なっ」

味は間違いなく美味かったが、値段相応かなと思ってしまった。

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午後になってもホステルのロビーで過ごしていた。
だけど、ずっとスマホを見ているのも目と脳が疲れるので出掛けることにした。

Google mapを開き、どこに行こうか思案する。
すると、先日ブックマークしていたSingapore national museum が目に入った。
しかも、宿から1時間くらい歩けばいける距離だ。
それほど暑くもないし、散歩しながら向かうことにした。

しばらく歩くと途中で雨が降ってしまった。
通りかかった商店街で雨宿りをする。
その間、近くにモスクがあったので雨を避けながら見に行った。

シンガポールには中華系の人が占める割合が多い。
そんな国にもモスクがあるのもまた、この国の面白いところだなと思った。

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モスクの裏手に行くと、カラフルな建物が連なって商店街になっていた。
一つ一つのお店をよく見るとトルコ料理やトルコ系の雑貨を売っているようだ。

「半年前くらいにトルコに行ったけど、こんな感じだったっけ」

アヤソフィアとか行ったな〜などと思い出しつつ、シンガポールにはトルコ系の人もいるんだなと思った。

少し見て回っていると、きれいな見た目で食欲をそそるパン屋さんに遭遇した。
ちょっと高いけど何か一つでも食べたい気になってしまい、列に並んだ。

そうして買ったのはプレッツェルと呼ばれるパンだ。
コスパの良さと独特な見た目に惹かれて買ってしまった。
シナモンがたっぷりかかっていて、菓子パン好きにはたまらない逸品だ。
食べてみると、まあ、想像通りの味ではあったのだが、せっかく海外にいるんだしこういうのも楽しまなきゃなと思って満足した。

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おやつを食べている間に雨は上がっていた。
今のうちだと思い、歩みを再開した。

20分もしない内に、目的の博物館に到着した。
建物の一部は改修中だったが、見学はできるようだ。
中に入ってスタッフさんの案内に従うまま進んでいく。
チケットカウンターまで行ってクレカ払いできますか?と聞こうすると、料金はいらないと言われて受付済みを証明するシールをもらった。

「無料でいいんだ」

そう思いながら展示室に足を踏み入れた。

シンガポールが歴史の表舞台に姿を現すようになったのは、14世紀からのようだ。
当時はシンガプーラと呼ばれていた。
これは、サンスクリット語で「獅子の街」という意味らしい。

「なるほど、シンボルのマーライオンも、この名前に由来してるのかな」

地政学的に重要な位置にあるこの地域は当時、開運の要衝として栄えた。
中国やインドを始め、世界各地から貿易商人がここを訪れたようだ。

そして時は流れ1819年、産業革命真っ只中で栄華を極めていたイギリスから、Stamford Raffles 卿とWilliam Farquharがやって来た。
彼らはマレーの統治者たちに、イギリスとの貿易港を開かないかと持ちかけた。
これがきっかけでアラビアやアフリカから商人や船が訪れるようになり、シンガポールは東南アジアの貿易の中心地となる。

1867年、シンガポールは近隣のメラカやペナンと共にイギリスの植民地となった。
イギリスが繁栄すればするほど、シンガポールもその恩恵を享受した。
この頃から中国や南アジアなどからの移民により、シンガポールの人口は膨れ上がった。

第二次世界大戦直前、アジアでの地位を守るため、イギリスはシンガポールを軍事拠点とし、「東のジブラルタル」などと呼ばれるようになった。

そんな中1941年12月8日、シンガポールは史上初の戦争を経験した。
日本兵が突如として街を爆撃したのだ。
それと同時に彼らは、マラヤの北東海岸から上陸し侵略を始めた。
それから70日後、戦争は誰もが驚く結果となった。
イギリスが日本に降伏したのだ。
日本軍はマレー半島とシンガポールを占領した。

1942年2月15日、シンガポールは日本の占領下に置かれ、名を昭南島と改められた。
戦争が続く中、シンガポールの人々は食糧と燃料の不足や病気、さらには日本兵による暴行やハラスメントに苦しめられた。
この統治は、1945年に日本が敗戦するまで続いた。

第二次世界大戦終戦後。
一旦はイギリスの植民地に戻ったシンガポールだったが、アジアやアフリカで独立運動の波が押し寄せていた。
シンガポールも例にもれなかった。
1959年、シンガポールは自治政府を樹立し、初の一般選挙が行われた。
その結果、人民行動党の総裁Lee Kuan Yewがシンガポールの初代総統となった。

Lee総統と議会の官僚たちはシンガポールの独立を切望した。
1965年、シンガポールはマレーシアから分離する形で、完全な独立国家となった。
その後、人民行動党の独裁という形が続いたが、1980年代には経済面で成功し、今日のような国となった。

過去の歴史を振り返ると、そんな経緯があったらしい。
今の多様性は、この国の地政学的な立地によるところが大きいんだなと思った。
そして、世界は繋がっているということも実感する。
シンガポールの歴史を知ることで、これまでの世界の動向が見えてきた。

「歴史を勉強するのめちゃくちゃ面白いわ」

こんな面白いものを無料で見れていいの?なんて思ってしまうほどだった。
Marina Bay Sandsとかマーライオンとかを見に行くのもいい。
だけどやっぱり僕は、こういった博物館や美術館に行く方が楽しいなと思ってしまうのだった。

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