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社交不安障がい者が旅をする。#38
シンガポールからインドネシアの首都ジャカルタに、バタム島を経由して船で渡ろうかと思っていた。
だが、船は寝床のプライバシーが確保されていなかったりと過酷な旅になりそうだったので、諦めて飛行機で飛ぶことにした。
「今よりも旅スキルが上がったら挑戦してみよ」
そう思いながら、飛行機を予約した。
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数日間同じ部屋で共に過ごしたマレーシアのおっちゃんに別れを告げ、空港に向かった。
シンガポール・チャンギ国際空港。
東南アジアのハブ空港であるこの空港は、100以上の航空会社の飛行機が乗り入れており、世界で最も忙しい空港の一つだ。
フライトまで少し時間があったので、この空港で最も有名であろう人工滝を見に行ってみた。
朝だからか、それほど人は多くない。
少し歩くと例の滝が見えてきた。
天井から絶え間なく流れる水は、地面の穴に吸い込まれていく。
その周りは、屋内にも関わらず緑に囲まれていた。
写真を撮っている人もちらほら見られる。
よくもまぁこんな大層なものを造ったなと感慨深くなる一方で、一体どういう仕組みになっているんだろうと思っていた。
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数分も見れば飽きてしまったので、搭乗予定の飛行機が出発するターミナルへ移動した。
無事に手続きを済ませて、予定時刻まで待つ。
しかし、チェックインも出国審査も全自動で行われたため、いつもは時間のかかる空港での手続きがものの数分で終わってしまった。
こういうところは、技術の進歩がすごくありがたいなと思った。
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飛行機に乗って僅か数十分ほどで次の国に到着した。
赤道以南の国に来るのはこれが初めてだった。
やって来たのはインドネシアの首都、ジャカルタ。
とりあえずイミグレーションを通過する。
インドネシアも入国の際に、事前にインターネットから税関や健康状態に関する情報を提出する必要があった。
アライバルビザもオンラインで事前取得していたこともあって、全自動のシンガポールほどではないが、あっという間に入国できてしまった。
電車に乗り、市内中心地に向かう。
「まただいぶ混沌とした国に来ちゃったな」
車窓からは、マレーシアやシンガポールでは見かけなかった大量のバイクがらけたたましく走っている。
高層マンションも見える一方で、ボロボロの簡素な家々が目立った。
駅に到着し、Grabカーでホテルまで向かう道すがらも、しばらくぶりの混沌さを眺めていた。
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ホテルに荷物を置き、とりあえず現金を入手しようとATMや通過交換ショップを探しに街を歩いた。
途中でファミマを見つけたので何か買おうとしてみるが、店員さんと言葉が通じずジェスチャーで何とか言いたいことを伝えた。
「そっか、また言葉も通じない国に来たってことでもあるのか」
マレーシアやシンガポールでは英語や中国語でコミュニケーションが取れたので、言葉の壁からもしばらく離れていた。
だけど、ここではそれが通用しない。
改めて、違う国に来たんだなと思わされた。
現金を入手した僕は、もう一つやりたかったことをやろうと思った。
それは、コインランドリーに行くことだった。
シンガポールではランドリーもバカにならない値段だったので、インドネシアでちゃんと洗濯をしたいと思っていたのだ。
ホテルから近場のランドリーを探してみると、1ブロック隣の通りにあるようだった。
洗いたい服を持って行ってみる。
2畳くらいしかない小さなお店のドアを開けると、2人のお姉さんがいた。
1人がいらっしゃいませ的なことを言ってくれる。
「Do you speak English?」
だが、インドネシア語なんてほとんど分からない僕は、彼女らと英語でコミュニケーションが取れないかと試みた。
それを聞いた彼女たちは、顔を見合わせて苦笑いした。
どうやら彼女たちは英語を話せないらしい。
何とかジェスチャーや翻訳アプリで意思疎通を図り、洗濯物と料金を手渡した。
彼女らにとって、インドネシア語も喋れずこんなところに1人でやって来た僕は奇妙で可笑しかったのだろう。
「まあ、ここでは自分が外国人だしな」
最低限、レストランなどで使うフレーズは勉強しようと思った。
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前日あれだけカニを食べて満腹になっても、たった1日で腹は減ってしまう。
何か食べようと思い、日の沈みかけた街を彷徨っていた。
屋台で安いメシを食べるのもいいが、数日ぶりの「混沌」に圧倒された僕は、少し躊躇ってしまっていた。
結局、ホテルの近くにあった、「店内」という概念のあるちゃんとしたレストランに入った。
ネットで調べたインドネシア語を使って、1人ですここで食べます、と言うことを伝えると、席に案内してもらえた。
その後もインドネシア語で注文する。
だけど、ミヌム?と店員さんに聞かれたところで分からない単語を出されて英語で聞き返した。
すると彼女は英語でdrinkと言ってくれた。
どうやらちゃんとしたレストランでは、ある程度は英語が通じるようだ。
この国では、みんながみんな英語を話せるわけではなさそうだ。
言葉に対する一抹の不安を覚えながらも、注文したお粥をベースにした料理は優しい味で、この日1日の疲れを癒した。
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