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社交不安障がい者が旅をする。#40

泊まっている安ホテルの近くにあったスーパー。
昨日買い物に立ち寄った時、このスーパーの2階にフードコートがあることを発見した。
一品18,000ルピア(180円)くらいで食べられるようで、今日のお昼はここで食べることに決めていた。

11時頃に行ってみても、まだそれほど混み合ってはいない。
適当に安くて美味そうなメニューを注文する。
フードコートでの注文はそれほど難しいこともなく、料理名を伝えるだけで問題なさそうだ。

タイでもよくフードコートで安く飯を食べていたが、インドネシアはタイと明らかに異なる点があった。
それは、外国人の少なさだ。
タイでは街の中心地から少し離れた場所のフードコートでも、外国人の姿をよく見かけた。

だけど、ここでは地元の人しか見かけない。
だから店員さんも当然インドネシア語が通じると思って話かけてくるのだが、僕には何を言っているのかさっぱり分からないのだった。
何か聞かれたら風であれば、とりあえず頷くか首を横に振るかして乗り切る。
そんなでも、一応何とかなった。

そもそも博物館などの観光地に行っても、外国人観光客の姿をあまり見かけなかった。

「たぶんジャカルタに観光しにくる人は少ないんだろうな」

インドネシアにはもっと有名なリゾート地がある。
観光やレクリエーション目当ての人はそちらに行くのだろう。

だけど、ここにはこの国の「リアル」があるように思える。
僕にとって、この混沌を身をもって体験するのも価値あることな気がした。

フードコートで頼んで出てきた料理は、シンプルながらも食べやすかった。
こんな値段でご飯が食べられてしまうのも、今のこの国らしさなんだろうなと思った。

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今日は何をしようかと考えていた。
ゆっくりしていてもよかったが何となく退屈さが勝り、街に出て無料の観光バスにでも乗ってみることにした。

ジャカルタでは観光名所が集中している街の中心地から、観光バスが運行されている。
しかも乗車無料。

バス停に辿り着き、ひとしきり客が乗り込むとバスは走り出した。
何かアナウンスが流れてくるが、インドネシア語なので聞き取れない。
こういう時、他の国だったら現地語の後に英語のアナウンスが流れることが多いが、ここではそんな気の利いたサービスはなかった。
そもそも観光バスに乗ってみても、周りにいるのはヒジャブを被ったインドネシア人のようだった。

しばらく走ると、バスは街を一周して乗車した停留所に戻ってきた。

「もうバスはいいかな」

その場で降車して、次はどうしようかと思案する。

観光地として人気のモスクや教会を見に行ってもいいが、どうせ行っても写真を取るだけでそれ以上のものはない気がする。
そんなことなら博物館に行って、この国についてもっと学んでみよう。

写真を取るだけで終えてしまう場所に行くのは却下して、インドネシア国立博物館に行くことにした。

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チケットを買って入場する。
館内に入ると少し古いインドネシアの巨大な地図が出迎えてくれた。

この国は1000以上の島で構成される、世界一の群島国家だ。
僕がいるジャワ島以外にも、スマトラ島やバリ島、ロンボク島など多くの島がある。
そんな島国に2億人もの人が住んでいる。
人口はインド、中国、アメリカに次ぎ世界第4位だ。

それぞれの島に住む先住民は、それぞれの文化や言語を持っている。
それを一つにまとめ上げたというのは相当なことだ。
オランダの植民地時代を経て、紆余曲折ありながらも今の形で成り立っている。

そういった歴史を知れば知るほど面白くて、ますますのめり込んでしまう。

「オランダの愚民化政策によって虐げられてきたんだ。
やっぱり教育ってほんとに大事だな」

そして、この博物館は2023年9月に火災に見舞われた。
その影響で消失したり、形が損なわれてしまった歴史的遺物もある。

それでも博物館は現在は営業中で、火事で焼けてしまった展示物もそのまま公開されていた。
無惨に焼けてしまった像や壺を見て、現代を生きる僕たちが過去の叡智を学ぶためにも大事にしていきたいと感じた。

博物館にはイスラム教にまつわる展示よりも、ヒンドゥー教の神々や仏陀の像が多く置かれていた。
立派な石像を見るのもまた、興味深いものだった。

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バスに乗ったり街を歩いたりして気になったのはマスクをしている人の多さと、咳やくしゃみをしている人もそれなりにいたことだった。

「風邪流行ってるのかな」

体調を崩すことは避けたい。
自己管理の大切さは、この旅を通して痛感したことだ。

ホテル近くの例のスーパーに戻ってきた僕はマスクを買い、コスパと体に良さそうな夕飯を食べて1日を終えた。

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