残念な幽霊 ※箸休め回です。
とある高校のプールは校舎の一部からその様子を見ることができる。
外階段からのぞき込むとほぼ真下にプールがあるのだ。
随分と不用心なことだと思うが、覗けるのは外階段からだけであり、その出入り口も普段は施錠されているから一応は問題ないということになっている。
もともとは男子校だったものが共学に変わったため、こんな形になっているのだとか。
そして施錠されているのにはもう一つ理由がある。
先ほどの通りの構造なので、外階段に足をかけて勢いよく飛べばプールに直接飛び込むことができる。
そこは元・男子校、度胸試しに飛び込むとするものが当然出るわけで、なんで先にそこに思い至らなかったのかは、後に在籍した生徒も教師もみな疑問で仕方ない。
幸いにも開校以来事故が起こったという話はないので、いまだにプールは移設されずにそのまま使われているのだが、このプールには怪談がある。
毎年、夏になると夜な夜な外階段からプールに飛び込もうとする幽霊がいるというのだ。しかし、非常に残念なことに、その幽霊、プールまで届かないらしく周りのコンクリートの部分に墜落してしまう。
毎夜、バンっ!と実に小気味のいい音を立てて落ちるらしい。
しかも、この幽霊、男子校が共学になり、女子生徒もプールを使用するようになってから現れるようになったようだ。
先のとおり、事故は全く起こっていないから死んだ男子生徒ということもなく、おそらくは男子生徒の生霊ではないかと言われるようになった。
こうして女子とプールに一緒に入りたい男子生徒の怨念?が夜な夜な飛び込むのだという非常に残念な幽霊になってしまった。
余談だが、この幽霊、ほんの少しずつだが音がプールのほうに近づいてきている。
ザパーン!という水に飛び込む音が聞けたら良いことが起こると、水泳部員の間では語り継がれているらしい。