※上記の企画にて空亡茶幻様にご朗読いただいています。ご興味のある方はよろしければ動画と併せてご覧ください。
メリーさんはいま、人間として暮らしているらしい。
俺はＹ。いま工事現場で警備員をしている。
「メリーさんね。あの子だったら、この前、会ったよ。元気にしてた」
隣にいたオッサンが突然そんなことを言いだした。
なんでそんな話になったのか、たしか飲み屋でどーでもいいことを話しながら店にあるテレビを見てたら、昔の怪談みたいな特集が流れて、口裂け女とか、人面犬なんかと一緒にメリーさんが登場したんじゃなかったかな。
現場で知り合ったオッサンの話だから俺も話半分に聞いていたんだけど、ちょっと面白かったからここに書くことにした。
そのオッサンの話では、なんでもメリーさん、人間の男と結婚しているらしい。
細かいことはオッサンも知らない。
いまはある女性の体をメリーさんが借りているってことらしい。
まあ、もともとが怪談だから結構聞いたら恐ろしくなるような理由なんだろうけど。
事件にもなってないってことは、女性自身に身寄りがいないとかそういうことだったんじゃないかな。
いまでは結構幸せに暮らしているらしい。近々子供も生まれるとか。
ただ、オッサンがいうには「人間てさ、いつまでも生きてないだろ。もし旦那が死んだら、メリーさん、また怪異に戻るのかな？」って。
もう恨みが晴れて人間として成仏してくれるならいいんだけど、もし、人間になれることに味を占めていたら、次の体を探すような怪異になったりするのかな？ってそんなことを言ってた。
これはあとから俺が調べて思ったこと。
メリーさんの怪談ってさ。俺もよく知らなかったんだけど、最後、人形を捨てた女の子って行方不明になるんだよね。
そのあと誰もその子のことを見た人はいない、みたいな。
じゃあ、そのあと女の子ってどうなったのか。
どっか誰にも見つからないところに連れ込まれたのかもしれないけど、ひょっとして、いまメリーさんが借りているその女性ってその子だったりしないか。
それにその女の子の家族ってどうなったのか。
そのオッサン、メリーさんが今は人間だってなんで知ってたのか。
ひょっとして呪われたのって、女の子だけじゃなかったのかもしれない。
いや、全部、俺の想像なんだけどさ。