おまじない禁止 朗読：くだんちゃん（噂ノのろいちゃんねる)
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おまじない禁止。
俺が通っていた小学校にはそんな変な決まりごとがあった。しかもこれを結構みんなガチで守っていた。正確にある教室の前でおまじないをしてはいけないなんだけど、そういう決まりにすると敢えてトライする奴が出るから全体で禁止にしているらしい。
もっとも俺が知っているみたいに噂で流れちゃっているからあまり意味はなかったのかもしれないけど。
３階建ての校舎の３階。校舎がＬの字型に交わるところのちょうど角のところに教室一つ分だけでっぱりがあって、その部分に今は使われなくなった教室がある。
普段は物置として使われていて、教室の扉の前にも机やら椅子やらが積まれている。そうやって教室に入れないようになってる。
噂通りなら、その教室の前を通りがかるときに「アブラカタブラ」でも「チチンプイプイ」でもそれこそ「ひらけゴマ」でもいい、どんな些細なおまじないの言葉でも、唱えてしまうと良くないことが起こる。
俺は５年と６年の２年間、３階の教室を使っていたけど、その間だけでも実際にケガをした奴が何人かいた。
だから余計に一部のお調子者を除いて、みんな素直に守っていたんだけど。
昔、その教室に占い好きの女の子がいた。仮にＭとする。
Ｍは少女漫画の雑誌とかテレビの星占いとか、そういうのが好きで、たまにちょっとタロット占いもするくらいの何の変哲もない女子だった。
だが、運の悪いことにそのクラスにいるイジメっ子に目をつけられてしまった。
イジメの度合いがどの程度のものだったのかはわからないけれど、Ｍは周りからは目に見えて暗くなっていったという。
そんなある日、Ｍが交通事故で亡くなってしまった。自分で飛び込んだんじゃないかっていう噂もあったが本当のところは分からない。
問題はそのあと、イジメていた子とその周りで一緒に参加していた子、全部で５人が同じ日に別々の事故で大けがを負った。
その日、テレビの星占いでＭの星座が最高の日と言われていたらしい。
「どんな願いも思い通りに」。そんな一文が添えられていたらしい。
それに気が付いたのはＭと仲が良かったある女子だった。
彼女もまたＭ同様占いが好きだった。
それからは星占いの結果が悪かった生徒が授業中に怪我をしたり、帰り道で事故に遭ったり、と良くないことが起こるようになった。
【Ｍの呪い】
クラスではそう言われるようになり、占いの結果次第で休む生徒が続出。しまいには担任の先生まで心を病んで退職してしまった。
とはいえ、そんなことテレビ局に行ったところで物笑いになるだけ、事情を話してかえって面白おかしく報道なんかされたらたまったものではない。
状況を重く見た当時の校長は霊媒師を呼んで御祓いすることにした。
ところが、御祓いは失敗に終わってしまった。理由は分からない。
ただ、結果、Ｍの呪いに対する恐怖がかえって高まり、いっそう信じられるようになってしまったのは事実だった。
結局、そのクラスを１階の例の教室から一番遠い教室にすることでなんとか呪い自体は収まったように見えた。イジメに加担した児童のほとんどがすでに何らかの報いを得ていたことも無関係ではないのかもしれない。
しかし、そうは言ってもその教室を使おうという気持ちには誰もならなかった。
児童や保護者、はては担任する先生自身に反対され、結局物置にするしかなくなったらしい。
そこからなんで「おまじない禁止」になったのかそこは分かってない。
Ｍが占い好きだったからとか、除霊失敗した時の呪文のせいだとか言われている。
最初のとおり、俺が通っていた時も、噂を信じないで度胸試しをした奴はいたけれど、ちょっとした怪我を含めても何かあった奴は半分くらいだった。実はここまで書いておいてなんだけど、俺がその怪我した半分にいたりもする。
俺も含めてもともとがやんちゃな奴らだったから、怪我をしたのも呪い無関係かもしれない。実際、俺もはしゃいで学校の階段のてっぺんから転がり落ちただけで、大怪我にはならなかった。
あるいはＭの呪いもだんだん弱くなっているのかもしれない。
半分はそうだったらいいなって願いだけど。
テレビとか映画を見てて思わず真似したくなる呪文が出るときがあるけど、俺はそういうときそっとチャンネルを変える。
大人になっても知らずにちょっと冷や汗が出るくらいには俺が信じている話。