その祠を壊してはならない(短編)
「その祠を壊してはならない」
祖父のセリフに俺は思わず、内心で笑い声をあげた。
随分とありきたりなことを言う。
言われなくたって、そんな古めかしい祠に興味なんてない。
俺は毎年、田舎に行くがそもそも近づいたことだって一度もない。
そうして俺は成人し、いつの間にか言われなくなった。
ある日、仏間の前を通りかかると中から声が聞こえた。
「その祠を壊してはならない。絶対に」
なんかセリフがちょっと増えた気がする。
話しかけているのは小学生になったばかりの俺の甥っ子にだった。
きっと素直なあの子は祖父の言いつけを守るだろう。
そして、祖父は結局、呪いを誰にも移せずに死ぬのだろう。