祖母が見た狐火(朗読:はこわけあみ様)

これは祖母が幼少のころに経験した話です。
もう80年くらい前、年代でいえば戦中~終戦間際の頃ですから、町の中に街灯などは今ほどありません。
ましてや山の中など日が沈んでしまえば一面真っ暗。ひとたび迷えば慣れた人でも命の危険があるほどで、動き回ることはせず、朝日が昇るまで木のむろなどを探して隠れているしかありません。
祖母曰く、こういうときに助けてくれるのが『狐火』だそうです。
最初は遠くふわっと小さな炎が見え、それに近づこうとすると、また遠くにふわっと小さな炎が見える。こうしてそれを順番に追いかけるといつの間にか人里の近くまで行ける。
ともすれば山の奥に迷い込ませてその命を奪いそうなものですが、祖母は「きっと助けてくれているんじゃないかな」と、折しも戦中、あるいは帰ってきた土地の人たちなのかもしれないとも言っていました。
祖母も、夜、大人と一緒に山を歩いていた時に遠くに浮かぶ小さな火を見たことがあるそうです。
それは決して人が持つかがり火のようなものではなかったとのことですが、不思議と恐ろしいとは思わなかったと言います。
こうした怪異は全国津々浦々で見られるそうですが、科学的にはいまだ原因は解明されていないようです。


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