リクライニングベッド(朗読:絢河岸 苺様)
これは友人がとある職員として病院で働いていた時の話。
その病院には普段使われていない部屋がありました。
入院用の個室なんですけど、その部屋のリクライニングベッドにいわくがあり、どうしても部屋が足りないとき以外は使わないようにしていたそうです。
「スイッチを押してもいないのに頭の部分が勝手に持ち上がる」そんな誤作動がときどきあったそうです。
そして、この誤作動が起きた時、そのベッドを使っていた人は必ず近いうちに亡くなってしまいました。
いつからそんなことが起こるようになったのか、それは誰も知りません。
看護師の一人がおかしいなと思ったときには、すでにもう何人も亡くなったあとでした。
もちろん病院ですし、入院が必要なくらいの言ってみれば重い病気の人が集まります。
それはそうなんですが、そのベッドに限って言えば、退院の見込みの高い治療可能な患者さんでも例外にはなりませんでした。
いったんは回復してどんなに元気になったとしても、例の誤作動があった患者さんは一月か二月後には病状が悪化して再入院し、そのまま亡くなってしまいました。
ときには全く因果関係のない病気に突然なった方もいたそうです。
あまりにも気味が悪かったので、あるとき友人が看護師の一人に思いきって「ベッド、処分しないんですか?」と提案しました。
しかし、看護師からの答えは「そんな余分なお金はありません」の一言だけでした。
年配の看護師さんだったそうですが、文字通り、眉一つ動かしませんでした。
その言い方があまりにも素っ気なくて、いっそ看護師のほうが怖かったと友人は言っていました。
結局、友人はほどなくその病院を辞めて別の介護施設に移りました。
だから、その後もそのベッドが使われているのかどうかは友人も分からないのだそうです。