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猫はかわいいのはどうして?(音声・言語的考察)


猫ってかわいいよね。
(猫がかわいいことに同意できない人、トラウマを抱える人は、この文章を読むのに適していません。)

ねこって、発音からしてもうかわいい。


「ネ」
ナ行 っていうゆったりとしたチル感を約束されたグループに属しているのに、母音の中で一番あいまいな力の抜けたえ段。すねわち極上の緩み。音程は高い。

「コ」
通常の「コ」とは息の勢いがだいぶ弱まっている。(例えば、単語の頭に来るコ 工事/コウジ 子犬/コイヌと比べれば違いがわかると思います)
ネから接続して、相応の安心感を与えるようなしっとりしたオ段の発音が続く。口の動きでいうと、エの形からオの形は、あまり変化がない。せわしなくない。チルである。音程は低くなり、着地の安定感を増していく。たった二音で緩急がつき、それでいて、たった二音だけで完成されたことば。ほかに何かの助けも要らない。

日常で「ねこ。」という言葉が発されたとき。
何物も不審に思わせない。それでいて、次に何が起こるんだろうか。猫という生き物はどこにいるんだろうか。かわいいだろうなあ。とほんのりと期待を抱かせる。すこし楽しくなる。
そんなさりげない力を秘める言葉である。

猫がかわいいのは発音だけではない。
ネコの語源は、「寝子」らしい。つまり、良く寝る子だ。
昔の人間の観点からするとこれは正しい。
猫の習性は薄明薄暮性と言って、明け方と夕方の暗くないが明るくなりすぎない時間帯に最も活発に行動する。猫の瞳孔が小さくなったり大きくなったりして明るさを調節する機能に優れているのも、この習性に適応したためかもしれない。
安価な照明が普及されるまでの人間は、日が出て明るくなってから活動を開始し、暗くなるまでに仕事を終える生活だっただろう。燃料となる油は高価だったから、できるだけ節約したはずだ。人間が猫を目にする日中は、おねむタイムと絶賛丸かぶりだっただろう。
そんなネコちゃんを「よく寝る子やわぁ(関西風アクセント)」と愛でた当時の貴人たちを想像できる。かえらしこやなぁ。
完全にむだ知識となるが、平安時代は猫は書物を荒らすネズミを退治するために猫が導入されたものの、かなり貴人たちに愛でられたようで、庶民には届かないVIPな生き物だったらしい。(専門家の方、こういう事情ワイに詳しく教えてください。受講します)

今まで完全に「ネコ」という言葉について語っていたが、たぶん猫好きな人なら、猫を見つけた時に「ねこ。」ではく、「ンネ↗ッコチャァン♡」と発音する。初心者の方は、日常生活での応用形にも気を付けていただくとよいだろう。

ここまで人間の言語的な面でのねこについて語ってきた。

これからは猫側の発声、つまり鳴き声について語っていきたいと思う。


今、窓の外からニャウという声が聞こえてきた。スーパーかわいい。

まず、猫の鳴き声は「ニャー」「ニャン」「ニャオ」「ニャウ」「」と表記される。あえてカタカナで書くと英語は「ミェァオ」中国語は「ミャオ」である。言語が違っても、感覚的にはあまり違いはない。
マ行もかなり落ち着く音だし、母音はあいまいだからいろんな表記(=解釈
)が出てきがちというところだろうか。「マグロ」とか「うまい」とかしゃべるような猫が前にバズっていたような気もするが、それは完全に人間の解釈の問題である。
まあしかし、「ネコ」という言葉も、その生き物が発する声も、かなり落ち着いているのは確かだ。癒される。これは解釈一致やわぁ。

もちろん、猫が怒ったら「フシャー!!」って言うし、「grrrrr」とか言う唸り声をあげることもある(猫が気持ち良い時に言う)。だが、日常生活でよく聞く猫の代名詞である「ニャ」系発声は、なんと人間に向けて、または子猫が親猫に向けてしか言わない。(NHKの番組で知った。)

つまり、子猫が親にミルクをねだるときに使う、関心を引き庇護欲を掻き立てるような声が人間にも拡大運用されているのである。これが人間にクリーンヒットしてしまう。(なお、実際の子猫の鳴き声はか弱い「に゜ー」である。かわいい。)声の高さが人間の赤ちゃんに似ているのが大きな要因な気もする。最近話題のサイレントニャーは、人間の聞き取れない音域のニャーで、猫がとっても心地よい時に出すらしい。人間の進化が猫に追い付いていない。もし自分の遺伝子をいじれるなら。サイレントニャーを聞こえるようにしてくださいと頼む。

ほかにも要因はあると思う。猫はおおよそ、鳴き声が不快になるほど(≒近所迷惑になるほど)大きすぎない。

人間の子ども含め、鳴き声や吠え声(犬とかね)は大音量になりがちだ。子ども離れた場所にいる親を呼び寄せるために鳴くのだから、親と子が離れたり仲間同士離れたりする行動様式を持っていた生き物は、声が大きくないと放置されてしまう。
ただ猫の場合は母親が甲斐甲斐しく世話を焼くので、あまり子猫から大声で知らせる必要がなかったのではないか。大人になってからは基本単独行動なので、人間のいない場所で猫同士では「ニャー」と鳴かない。
(例外的に音量が大きいのは、発情期の異性を呼び寄せたい猫の鳴き声だが、飼い猫は不妊去勢手術が行われるし、野良猫でもTNR活動が浸透してきたので、近年聞く機会が減ってきた)

このように、猫は鳴き声だけでも人間を虜にさせる強力なフォースを持っているといっても過言ではない。そして現代人はかつてないほど癒しを欲している。猫は、人類史上かつてない魅力を人間に与える生き物だ。今回は言語、音声的な面から考察したが、次回以降他の面からも考えてみたい。みなさんが猫の魅力をプレゼンするときに活用してもらえると幸いです。

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