友井川拓note 〜ラグビー以外〜 Vol.3『様々な分野から学ぶ』について対談する。
ラグビーは多くの”人”との出会いをくれ、出会った人は多くの”学び”を与えてくれます。
今回は「様々な分野から学ぶ」というテーマで、競輪プロ選手を経てメンタルトレーナーとしてシャイニングアークスを支えてくれている小沼キャリアディレクターに話を聞いてみました。
【小沼健太郎】
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス キャリアディレクター
船橋整形外科グループ 船橋医療企画 統括マネージャー
小沼さんの根底には「現在の成長」だけでなく「人生においての成長」をサポートするという姿勢があります。スポーツのみでなくビジネスや教育の観点でも必須です。そんな想いを自身のキャリアと共に淡々と語っていただきました。
〜対談スタート〜
友井川:私のNoteのコンセプトは「サッカーしか知らないものは、サッカーすらも知りえなくなる」という言葉があってラグビーから多くのものを学んだんですが、ラグビー以外の他の分野から学んだことの方がラグビー含め人生において大きな影響を与えてくれたという想いがあります。小沼さんの中で自身の分野以外のものからどう学び、それが”今”の自身を形成する上でどのように影響したかをざっくばらんに教えて下さい。
強くなるために必要なのは方法論でなく本質的な部分
友井川:他の分野から学ぶということへの想いや、学ぶべきだと感じたキッカケがあれば教えて下さい。
小沼:競輪のプロ選手の時に、どうしても強くなりたいと思ったのがきっかけだね。プロ選手だと当たり前のことだよね。でも自分の場合は少しプロになる経緯が人と違って、高校時代のボクシングもそうだし競輪選手も父親の勧めでなったんだ...。
先天的な能力(肉体的な能力)が高かったこともあって、プロキャリアは順調だったんだけど、プロはやっぱり甘くなくて怪我も続いて、塞ぎ込んだりやる気になったりと結構不安定な時期が続いたんだよね。それで自分の中でもうやめようかなと考えたタイミングがあって...そしたらレースが終わって涙が出てきたことがあった。意思とは別にね...。
そこで本当は辞めたくないんだなと気がついたのが最初のきっかけかな。
友井川:挫折がキッカケということですか?
小沼:今まで周りからも天才型だと思われていたし、実はこっそり練習していたんだけどね。(笑)
バレるのも嫌だったから。それからは人に頭を下げまくった。「強くなりたいから練習を教えてくれ」とかね。そうしたら意外とみんな教えてくれたんだよね。素直にやっとけばよかったと。それからどうしても強くなりたい、強くなりたいと思った先にあったのがメンタルだった。
友井川:最初は”人”から学ぶことの方が多かったってことですか?
小沼:そうだね。どうしても上手くいかない時に先輩から「自転車に乗っているのも練習だし、マッサージを受けているのも練習、掃除をしているのも練習。全ては繋がっている。」って話をされたんだ。
それで同期で急に強くなった選手に話を聞いたら同じような話をしてくれて、そういう当たり前のことを当たり前にやっているという話をしてくれたんだよね...。
でも、「どんな練習をしてるの?」とかみんなは聞いてくるんだけど「小沼君の質問は違う角度から聞いてきますよね。」って言われたところから、こういう角度から見ることも必要なんだなとは競輪時代から思っていたことだね。
友井川:それは方法論ではなくってことですよね?
小沼:そう...視点の違いなんだよね。
友井川:小沼さんの質問が方法論ではなく本質的な部分ってことですよね。
小沼:強くなるという方法論に正解はなくて、見つけたもん勝ち。
その人にあった練習方法とかね。それが実はラグビー選手もラグビーの練習以外で強くなるっていうことがあるっていうことだと思う。
友井川:そう思います。人と同じことをしても突き抜けることは出来ないですよね。自分で何をすべきか考えることが最も大事。
小沼:俺は実はメンタルトレーナーになると決めたのは遅くて、32歳ごろなんだよね。
友井川:そのメンタルトレーナーになるって決めた入りは何なんですか?
小沼:もともと強くなりたいと思って、米田功さんの本を読んだのがきっかけで渋谷の学校に通った。そこで授業を受けている時にメンタルトレーナーになるって決めたの。
友井川:授業として学んでいるうちに、じゃ仕事にしようって思ったんですね?メンタルを仕事に選んだ理由ってあるんですか?
小沼:俺の経験を分析した結果、メンタルが不安定だったってこと。
友井川:自分が?
小沼:そう自分が...。選手当時は強い時と弱いときがあって、トレーニングチャンピオンっていう感じだったよ。本番では弱いみたいな。これって何なんだろうっていう疑問から人に聞いたり、本を読んだりして、1つの手段としてそれ(メンタルトレーニング)があったの。
友井川:結果に1番影響を及ぼしてたのがメンタルで、それはトレーニングによって後天的に鍛えられるんじゃないかって思ったってことですよね?
小沼:それは当時はわからなかったけどね。でもそれが変われば強くなれるんじゃないかと思ったんだよね。そっから自分の人生を決めていった。そこが一番の変化したポイントだね。
友井川:そこに早いうちに気付けたのはすごく良かったですよね。そこに気がつけずに終わってしまう人もいっぱいいるわけだし。
小沼:でも俺は別に早くないんだよね。今指導している子たちも自分のその時より年下だし、だからみんなはすごいなぁと思って見てるよ。実は。笑
常にアップデート。今は最新かもしれないけど1年後はもう古い。
友井川:じゃ少し話変えますけど、小沼さんは色々なスポーツにトレーナーとして関わってきましたけど(ボクシング・バスケット・囲碁・ラグビーなど)。それぞれのスポーツにおいてメンタル的な安定は必要だって言えますよね?それが結果や成長に影響しているという点ではどう考えますか?
小沼:まず、どの競技でも動作に移る前にまずは感情のコントロールができているっていう状態が大事。囲碁もそうだし、ラグビーもそう。セルフマネジメントが出来ていないと他のことはマネジメントは出来ないよね。
コミュニケーション、コミュニケーションっていうけどセルフコミュニケーションが大事だよね。ベクトルを自分に向ける。トップになればなるほど身体能力は高くてそのレベルまできているから、あと差を決めるのはメンタルコントロールだよ。
友井川:そういう意味では、スポーツ選手ってベテランになればなるほど落ち着いたプレーが出来るっていうけど、自分はその言い方がすごく勿体無いと思っているんですよね。例えば、メンタルコントロールやレジリエンス(逆境力)、コーチアビィリティとかそういうものって若いうちに学ぶことで知識を得ていたら成長スピードは格段に上がりますよね。
30歳にならないと逆境力ってつかないのか?とか・・学ぶことで成長のスピードは圧倒的に上げられるってことだと思っている。ビジネスも同じですよね。
例えば今までのトップアスリートで、自ら学ぶことで知識を得てスポーツで試してってことを実践している選手ってどのくらいですか?
小沼:ほぼいないよね。
友井川:トップアスリートでもほぼいないですよね...。
小沼:でも、本当の超一流って言われる人はやっぱりそういう観点は持っているよね。
友井川:それは経験から学んでいるのか、知識として学んでるのかどっちかでいうと?
小沼:一流であり続ける人はもうスキルになっているよね。習慣が決めているってよく言っているけど行動の習慣・思考の習慣だからね。コア・コンピテンシーじゃないけど、言語化出来ているよね、そういう人は。
そうじゃない人は「感覚ですかね〜。」みたいな。笑
友井川:学ぶことが出来る世の中じゃないですか?いくらでも。そういう意味では圧倒的に学んだ方がいいってことだと思います。色んな知識を。そこにどう気付けるかですよね。
小沼:学ぶことが出来る世の中だから知った気になっているって弊害はあるよね。
友井川:ダニング・クルーガー効果に近いですよね。笑
*ダニング・クルーガー効果: 能力の低い人物が自らの容姿や発言・行動などについて、実際よりも高い評価を行ってしまう優越の錯覚を生み出す認知バイアス。
小沼:まぁ近いよね。あれは評価の話だけど。
学ぶという観点とか、視点をどう上げたり下げたり広げたり出来るかだよね。
友井川;でも自分が正しいと思ってやっていることが、統計上だったり科学的に間違っていることもありますよね?でもそれって学ぶことがなかったらそれをやり続けるってこともある。それって新しい学びがあればそれが正しいかどうかはわからないけど、自身の中で取捨選択出来ますよね。
小沼:だからこそ常にアップデートしないといけないよね。今は最新かもしれないけど1年後はもう古いよね。今までの君はうまく言ってたけど、これからの君はわからないよねって。
友井川:指導者にも同じことが言えますよね。
「学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない」っていうのをいつも思っている。そこに気付けなくなったら本当に指導者としては難しいと思う。
『学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない』
ロジェ・ルメール(元フランス代表監督)
小沼:それは感じる。選手でいうとA君もそうだった。それまではA君も俺と話さなくても大丈夫だって言ってた。話をして見たら、あれっみたいな。だから自分は今まで通用しなかったんだって。笑
彼はそこでアップデートしたんだよね。そういう視点を持つことができたそうしたら自然と成績が良くなったんだよね。
よい人に出会って、よい本を読んで、よい言葉を話す。
友井川:じゃ最後に。アップデートしていくことは絶対必要で。とはいえ方法論はアップデートされていくけど本質的なことは変わらないですよね。例えば、自分だったら「サッカーしか知らないものは、サッカーすらも知り得なくなる」という考え方は個人的には絶対に変わらないこと。小沼さんの中でそういうものはありますか?言葉とか経験とか学びとか。
小沼:「よい人に出会って、よい本を読んで、よい言葉を話す」だね。真実は常識の外にあるっていうことを大事にしている。普通はとかって本当?って思っているし。自分のことは信じているけど疑っている部分もある。常にしなやかで柔軟でなければならないと思っているよ。
”Be Proffetional”って言葉をみんなで使っているけど、「自分のことを自分で変えられる人」が大事だと思っている。今の正解が本当の正解かはわからないよね。だから『色んな人に会って、色んな本を読んで正しい言葉を話す』ことが大事だと思っているよ。
友井川:小沼さんは、色んな人に出会うってことを大事にしているんだなとは、近くで見ていて感じますよね。そういうところでヒントをもらえる選手や読者の皆さんが少しでもいてくれたらいいですよね。本日はありがとうございました。
小沼:はい。
〜対談おしまい〜
本日、対談いただいた小沼さんのオススメの本
『2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史伝説の東大講義』
瀧本哲史 (著)
出版社 :星海社新書
『永守重信の人材革命 実践力人材を育てる!』
永守 重信 (著)
日経トレンディ
『知的生産術』
出口治明(著)
出版社:日本実業出版社
あとがき
『学ぶ為に頭を下げまくった。』ということは今回の私の1番の学びです。教えてもらうには謙虚な姿勢が必要です。上に立っていたら学ぶことは出来ない。それは指導者も同じ。スポーツならコーチと選手、ビジネスなら上司と部下、教育なら教師と生徒、などなど。それぞれが、それぞれから学ぶことがあります。
前述しましたが『学ぶことをやめたら、教えることをやめなければならない』この言葉に尽きると思います。立場・役職は違えど平等だということを知る。年上年下は関係ない。学ぶ為には謙虚たれ。それが一番大事ですね。
それが一番大事。 大事MANブラザーズ