カジュアルでも内容の濃いベイエリア ロボティクス シンポジウム (BARS) 2020
毎秋楽しみにしている、カリフォルニア大学バークレー校やスタンフォード大学などベイエリアのロボット系研究室が研究発表を行うイベント「Bay Area Robotics Symposium(BARS)」が今年も開催されました。昨年は UCバークレー校で開催され、今年はスタンフォード大学での開催が予定されていましたが、このイベントも新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催でした。キーノートの参加者は 200名前後と少なめの印象でしたが、シンポジウムは YouTubeで後日オンデマンドでも視聴できるようになっており、11月末に確認した時にはキーノートは 2,000回弱再生されていましたので、最終的に例年以上の人がシンポジウムに参加されていたようです。
このシンポジウムはキーノートに加えて教授・教員によるセッション3つと、研究室の学生を中心としたショートトーク セッション2つという構成で、概ね教授や教員は一人 10分、学生は一人 2分という超過密スケジュールで、聞く方はメモを取るのに追われます。発表した教授・教員は 20名、学生は 40名強。それぞれの発表において各自の研究に関するレポートやサイトの紹介をしてくれますので、メモを取りつつブラウザーでネットを確認するという、毎年のことながら非常に忙しいシンポジウムでした。毎年のことながら、一つの研究テーマについてじっくり話す教授もいれば、手掛けている研究をマシンガントークで話しまくる教授もおり、とても個性的なシンポジウムです。
今年のキーノートは iRobot社において初期の Roomba開発をリードし現在はコグニティブ エンジンの開発を進めているパロアルトに本社を構える Robutst.AI社の CTOを務めるオーストラリア出身のロボティスト ロドニー・ブルックス氏による「スタートアップと学術研究におけるロボット研究への取り組みの違い」という講演でした。ブルックス氏は MIT CSAILのディレクターなど学術系の経験と、iRobot や Rethink Robotics などベンチャーの経験も持つエネルギッシュで個性的な方で、今回のイベントは学術関係者が多くとてもリラックスして講演されていた印象でした。短期の金銭的な成果が求められるスタートアップと、研究をとことん突き詰める学術系の研究に対する取り組み姿勢の違いについて、ブルックス氏の経験を紹介しながらの講演は興味深い内容でした。ベンチャーでは短期に収入を得なければ会社の存続どころか生活さえが困難なため、学術的には劣る機能であっても商品として成り立つ機能を開発しなければならないことに中々慣れなかったそうです。初期の Roomba の開発では優れた機能にこだわらず、ターゲットの利用者の利用環境に重点を置いて機能実装を進めたそうです。ブルックス氏によれば、比較的短期で結果が見えるスタートアップも魅力的であり、また特定のテーマをじっくり掘り下げていく学術系研究も魅力的で、現在所属する Robust.AIは両方のいいとこどりをした体制で気にっているそうです。
今年の研究発表内容は例年のようなぶっ飛んだ研究の紹介が少なかった印象で、比較的成果の出ている研究内容の紹介が多かったように思います。マニピュレーター操作の機械学習や、学習した結果をどのように実際に実行するかなど、マニピュレーター関連の研究内容が比較的多かったように思います。
来年は USバークレー校主催となるますが、どんな発表が飛び出してくるか今から楽しみです。(2020/12/18記)