加速する Amazonのホーム市場アプローチ -「Roomba」の iRobot買収を発表
先週の金曜日 (米国時間 2022年8月5日) に米Amazon が、規制当局の認可待ちではありますが、ロボット掃除機「Roomba」の iRobot社を 17億ドル (約2300億円) で買収すると発表しました (「アマゾン、「ルンバ」のアイロボット買収」、Impress Watch)。米Amazon にとっては家庭内の機器をインターネットでつなげて暮らしを便利にする「コネクテッド ホーム」関連製品の拡充だけでなく、様々な家庭内の情報をベースに eコマースにおいてもより的確なレコメンデーションを提供したり、コンテキストに適した Alexa の機能拡張など、iRobot買収から得られる情報には計り知れない可能性が Amazon にもたらされるものと思います。
Amazon と iRobot社の関係は、特にロボット開発分野において長い歴史があります。2020年8月に Amazon が発表した AWS RoboMaker WorldForge などは Roomba のテストために開発されたサービスと言ってもいいのではないでしょうか。WorldForge はロボット アプリの動作を検証するための住宅内環境を AWS上に自動生成してくれるツールで、住宅の間取りや床材、壁の色、ドアや家具の位置などの 3Dデータを生成します。AWS RoboMaker WorldForge に関しては以前この note にアップしていますので、興味があればそちらを参照ください。
iRobot社は家庭向けロボット掃除機 Roomba をはじめ芝刈りロボットなどを開発・販売していますが、2002年に Roombaを発売して以降ハードウェア及びソフトウェアを共に進化させてきており、今年 3月にリリースされたソフトウェア アップデート「Genius 4.0」(現 iRobot OS) では Genius 3.0で提供された特定の物体を識別して避ける機能に加え、Siri連携機能や部屋ごとのオブジェクトを詳細に認識するスマートマッピング機能などをはじめとした多くの新機能が提供されています。「Roomba j7」では散らかった室内でも衣類や靴下、靴、USB などのケーブル類やイヤホン/ヘッドホン、さらにはペットのフンなど、これまで認識しにくかった柔らかく時にペースト状のオブジェクトも認識及びユーザーへの通知が可能になり、うっかり上を通過して大変なことになってしまう状況を回避できるようになったのは嬉しい機能です。さらにもし Roomba がそのような問題を起こしてしまった場合の保証「Pet Owner Official Promise (P.O.O.P.)」も開始していて、その場合 Roomba本体の交換も行います。
また iRobot社は今年 4月から Roomba をベースとした教育及び開発者向けのモバイル・ロボティクス・プラットフォーム「iRobot® Create® 3 Educational Robot」(ROS2) を $299で発売しており、STEMや教育機関でも多く採用されています。自立移動ロボットに欠かせない各種センサーが搭載されていてこの価格は個人でも欲しくなります。搭載されているセンサーは IMU、オプティカル フローセンサー、ホイール エンコーダー、バンパー センサー、IRペアなど。
ちなみに Create3 にはお掃除機能は付いていませんので、悪しからず。
Amazon もロボット開発に関しては様々な活動を行ってきており、数年前にロボットのソフトウェア開発者向けにロボットアプリケーションの作成を支援するライブラリやツールを提供するロボット開発用のプラットフォーム「ROS (Robot Operating System)」を取りまとめている OSRF (Open Source Robotics Foundation、現Open Robotics) にボードメンバーとしても参加しており、ROS の普及に力を注いでいます。
また自社の倉庫で利用しているようなロボットフリートを運用するために必要なフリート管理アプリケーションを構築するためのインフラを提供するサービス AWS IoT RoboRunner も提供していて、AGV や AMR をはじめロボットアームなどのロボット フリートを運用している大規模な産業企業をターゲットに、様々なメーカーのロボットを統合するアプリケーションの構築やロボット アプリケーションのライフサイクル管理が可能です。
冒頭にも書きましたが、今回の買収の目的は Roomba などが収集するデータにあると思います。今後ますます Amazonに個人の生活情報が集約されることになりますので、より自分の生活が便利になることを願っています。
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