米国株投資する上で知っておきたい17個の経済指標まとめ
こんにちは、しにち(@yurukashi_yrks)です。
私は2015年に投資を始めたので、運用歴は今年でちょうど7年目に突入しています。メインの運用先は米国株のインデックス投資信託なので、個別株と比べてメンテナンスの必要がほとんどありません。おかげ様で心理的には穏やかに投資を続けることができております。
しかし追加投資するタイミングを計ったり、世の中の流れを知って行動したりするためには、アメリカ経済の変動について定期的にチェックしておくべきだと考えています。
そこで今回は、私が定期的にチェックしている「米国株投資する上で知っておきたい17個の経済指標」についてまとめてみました。
これから米国株投資をする方や、基本的な指標について知りたいという方の参考になれば幸いです!
①米国実質GDP
まずチェックしておきたいのは実質GDPです。GDPについては多くの人が学生時代に学んだかと思いますが「どんな指標か?」と聞かれると案外うまく答えられなかったりするのではないでしょうか。
あらためて実質GDPというのはいわゆる国内総生産のことで、新しく生み出された財やサービスの付加価値合計額から物価変動の影響を除いたものです。(物価変動を考慮していないものが名目GDPですね。)
具体的には、個人消費、設備投資、住宅投資、在庫投資、政府支出、純輸出(輸出から輸入を引いたもの)で構成されています。
実質GDPはその国全体の生産活動を把握することができるので、経済全体の動きを判断する材料として注目される指標です。
アナリスト予想に対して成長率がどうであったかがポイントで、予想を上回っていれば好材料、下回っていれば懸念材料として扱われます。
アメリカの実質GDPの速報値は年に4回、四半期終了後の翌月末(1-3月期のGDPであれば4月末)に米商務省経済分析局によって発表されます。
速報値、改定値、確報値という3つの発表がありますが、株価への影響は速報値が最も大きいと言われているので、四半期の翌月末には実質GDPを注目しておくと良いと思います。
※具体的な発表時間は、米国サマータイム時は日本時間で午後9時半頃、米国冬時間では日本時間で午後10時半頃になります。
ちなみにコロナ禍前である2019年の名目GDPは約21.4兆ドル、実質GDPは19兆ドルでした。日本はそれぞれ約5.6兆ドル(561兆円)、約5.5兆ドル(555兆円)なので、「アメリカのGDPは日本のおよそ4倍程度だ」と覚えておくと便利です。
②米国非農業部門雇用者数(雇用統計)
米国非農業部門雇用者数は、米国の農業部門以外の産業で働く就業者の数を示した指標であり、経済指標の中で最も市場に注目されている指標の一つです。一般的に雇用統計と言ったら、この米国非農業部門雇用者数を指すことが多いですね。
厳密に言うと、雇用統計は失業率、非農業部門就業者数、建設業就業者数、製造業就業者数、小売業就業者数、金融機関就業者数、週労働時間、平均時給など十数項目あるのですが、簡易的に「雇用統計といえば米国非農業部門雇用者数」と覚えておいて良いと思います。
この米国非農業部門雇用者数も前月比でどれくらい雇用者数が伸びたかがポイントになってきて、アナリスト予想に対して上回ったか、それとも下回ったかは注目されます。
雇用者数が増えていれば、新たな雇用が多く創出されたということなので、景気は上向いていると判断されます。逆に雇用者数が下回っていれば企業にはまだ人を雇う体力が戻っていないことを意味するので、景気は良くないと判断されます。このあたりは感覚的にも理解しやすいですよね。(表裏一体ですが、失業率も同様に判断されます)
米国労働省が毎月発表している指標で、該当月の翌月の第一金曜日に発表される場合が多いです。
③失業率
雇用統計の中で米国非農業部門雇用者数と並んで注目されるのが失業率です。
失業率とは文字通り失業している人の割合を示した指標で、この数値が高いほど仕事を探している人が多いことを意味します。逆に失業率が低いときは失業者の割合が減っていることになるので、基本的には労働市場が改善され景気が上向いている状況と言えます。
見方としては雇用者数と同様、前月比で改善されているか?予想と比較して良い水準かどうか?がポイントになります。悪化していたり予想よりも悪い結果だった場合は株価への懸念材料になり、逆に良い結果だった場合はプラス材料になり得ます。
しかしながら1つ注意したいのは、失業率は「完全失業者数÷労働力人口」で算出されている点です。
完全失業者の定義は「仕事がなく、かつ求職活動をしている人」なので、そもそも仕事探しを諦めてしまった人は数に含まれていないのです。
なのでより厳密に状況を知る場合は、労働参加率(生産年齢人口に占める労働力人口の割合)の推移もチェックすると良いです。労働参加率が横ばい、もしくは上がっていれば、完全失業率の改善は景気回復を意味していると言えそうです。
④恐怖指数(VIX)
恐怖指数(VIX)は株式市場に対する投資家の心理状態を数値で表したもので、Volatility Index(ボラティリティ・インデックス)の略です。VIXは米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、米国株価指数S&P500を元に算出・発表しています。
ボラティリティは価格変動率のことなので、VIXが大きいほどボラティリティが大きい、つまり株価の変動率が大きくてリスクが高い状況であることを意味します。
通常は10~20の間で推移することが多いですが、相場の先行きに対して不安材料が生じた際などには、この数値が大きく上昇します。ちなみにリーマンショック時は70超え、記憶に新しいコロナショック時は80を超えました。
VIXは投資家の心理状態がいち早く掴めるし意味もわかりやすいので便利な指標だと思っています。自分はiPhoneのウォッチリストに入れて日々変動をチェックしています。
⑤貿易収支
貿易収支は文字通り、貿易による収入と支出のことです。より詳細に言えば、海外へ輸出した財・サービスの金額と、海外から輸入した財・サービスの金額の差額ですね。
これがどう株価に影響するかというと、一般的には貿易収支が良くなるとその国の経済状況が良いと判断され、株価の上昇やドル高に繋がるとされています。
とはいえ、現代ではアメリカは貿易赤字が続いていて、今もなお拡大していることから、株式相場への影響はそこまで大きくないようです。
なので私も参考程度でたまにチェックしている感じですね。米商務省経済分析局が前々月の貿易収支について毎月20日前後に発表しています。
⑥新規失業保険申請件数
新規失業保険申請件数は、失業者が初めて失業保険給付を申請した件数です。この失業保険申請の数が多いほど、当然ですが仕事がない人が多いわけなので不況を意味することになります。
捉えるポイントとしては雇用統計と似ているので、雇用統計だけでいいのでは?と思うかもしれませんが、発表が月に1回の雇用統計とは違い、新規失業保険申請件数は米労働省雇用統計局によって毎週(木曜日)に発表が行われます。
そのため、この新規失業保険申請件数は景気先行指数として用いられています。
⑦ADP雇用報告
ADP雇用統計は、米国の大手給与計算アウトソーシング会社であるADP(Automatic Data Processing)社が発表している雇用に関する指標のことです。
一企業の雇用報告を重要視するのはどうなのか?と思うかもしれませんが、ADP社は大手企業だけあり約50万社もの雇用企業データを保有しています。そんな超大量のデータを保有するADPの指標だからこそ、経済全体の動きを表していると言えるのですね。
また発表タイミングは雇用統計が発表される2営業日前であることから、先行指標としても注目されています。
⑧消費者信頼感指数
消費者信頼感指数は、全米産業審議会(コンファレンスボード)が消費者に対するアンケートを実施し消費者の視点を調査・指数化した指標です。
毎月5000世帯を対象に、現在の景気・雇用情勢、6ヶ月後の景気・雇用情勢、家計の所得見通しについて回答を依頼し、基準年である1985年を100と定めて指数化して算出されます。
消費者信頼感指数は、消費者の側の心理を反映した指数とみなされるので、個人消費の先行指標として使われています。
一般的には、消費者信頼感指数が上がれば消費者の購買意欲の高まり景気が向上するとみなされ、株やドルが買われやすくなります。
ちなみに似た指標でミシガン大学消費者信頼感指数という指標もあるのですが、消費者信頼感指数と比べると調査対象が少なく、ばらつきも大きいとされているようです。私も全く見たことがないので(笑)、参考までに知っておく程度で良いと思います。
⑨アメリカ小売売上高
アメリカ小売売上高は、米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を集計した値です。米国のGDPは個人消費が約70%を占めていることから、個人消費の動きが景気全体に与える影響も大きく注目度の高い指標となっています。
主に指標として見られるのは百貨店やスーパーなどの小売サービス業の月間売上高(コア部分)です。
個人消費全体おいては自動車やその関連部品の割合が最も大きいのですが、自動車の場合、販売店セールなど景気と直接の関係ない要因で月ごとのブレが大きくなってしまうため、指標として見る際には除かれる場合が多いようです。
小売売上高の指標が伸びていれば景気は上向きと見られますが、これも予想に対してどうだったかが株価への影響に関わってきます。
発表のタイミングは毎月第2週ごろで、前月の結果が米商務省センサス局によって通知されます。
⑩消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数(Consumer Price Index)は、消費者が購入する商品やサービスの価格変化を調査し指数化したもので、米労働省労働統計局が毎月発表しています。
消費者物価指数はニュースなどでもよく流れるので、言葉としても馴染みがあるのではないでしょうか。
消費者物価指数によってモノやサービスなどの物価の動きを把握できるので、国民の生活水準を示す重要な指標の1つとされています。(具体的にはインフレ率を分析するための最重要指標として活用されています。)
物価が上がる、つまりインフレになると消費者は早めにモノやサービスを購入したいという消費意識が高まるため、一般的には消費者物価指数が上がれば企業収益が上がりやすくなり株価にはプラスに働くと言われています。
とはいえ、インフレには他にも色々な影響があり、例えばインフレによってFRB(米連邦準備理事会)が金利を引き上げる判断をするかもしれず、株価にとってはマイナス要因にもなりえます。
他のすべての指標にも言えることですが、消費者物価指数が上がったからこうなる、下がったからこうなる、というルールがあるわけではないので、指標の変化によって何が起きそうかを判断する必要があるわけですね。
⑪生産者物価指数(PPI)
生産者物価指数(PPI、卸売物価指数とも言われます)は商品・サービスの売り手側の価格変動を指数化したものです。
物価動向が分かるため、景況感、インフレ率、消費動向を予測する材料になっています。また、消費者物価指数よりもこのPPIのほうが景気を反映させることが早いと言われており、上昇していればインフレの傾向ありということで、一般的にはドルは買われやすくなります。
⑫自動車販売台数
自動車販売台数は文字通り自動車の売れ行きを示す指標です。「なぜ自動車?」と感じるかもしれませんが、自動車は小売業全体の販売額の多くを占めるので、経済全体への影響が大きい商材です。また消費者にとって高価な買い物でもあるので、消費動向を見る上でも重要な指標となっているのですね。
ちなみに日本のデータソースについては、自分が調べた感じだと日本自動車販売協会連合会が毎年出している統計データがまとまっていて良さそうでした。
⑬住宅着工件数
住宅着工件数は米国内で建設された新築の住宅戸数を表す指標です。住宅購入はそれ自体が消費として大きいですし、また住宅購入に伴って家具や家電などの大きな買い物も行われるため、個人消費への波及効果が大きいという理由から注目されています。
建設許可件数が上がると景気は上向きと判断され、ドルが買われやすくなる傾向があります。雇用市場や消費者の景気への信頼感などと相関があるようです。
ちなみに住宅着工件数と同時に、建築許可件数という建設を行う前の許可申請の数も発表されます。許可件数は実際の着工に先駆けた数値なので、住宅着工件数の先行指標として見られています。
⑭鉱工業生産指数
鉱工業生産指数は、鉱工業部門の生産活動状況を指数化したもので、米連邦準備制度理事会(FRB)が月に1度発表しています。
私も知らなかったのですが、この鉱工業生産指数は景気全般の動きとかなり密接な関係を持っていてGDP推移と強い相関があるらしいです。GDPは3か月に1度しか発表されないのに対し、鉱工業生産指数は毎月発表されるため、GDPの速報的位置づけで注目されています。
ちなみに設備稼働率という指標も同時に発表されており、こちらは生産能力に対する実際の生産量の比率です。設備投資やインフレの先行指数で、80%を超えると投資が活発化するといわれているそうです。
★アメリカ・鉱工業生産指数
★日本・鉱工業生産指数
⑮ISM製造業景気指数
ISM製造業景況感指数は、製造業の景況感を示す指数です。
製造業の購買・供給管理責任者を対象に、受注や生産、価格などの項目について「良くなっている」「同じ」「悪くなっている」の3通りのアンケートを実施し、その結果を集計して指数が算出されます。50%水準が景気の拡大・後退の分岐点で、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示しています。
※ちなみにISMというのは指標を算出している全米供給管理協会(ISM=Institute for Supply Management)の頭文字です。
⑯ISM非製造業景況感指数
上記のISM製造業景況感指数に関連して、ISM非製造業景況感指数も重要です。こちらは製造業ではなく非製造業の景況感を示す指標で、指数のロジックや意味合いはISM製造業景況感指数と同じく、50%を上回ると景気拡大、50%を下回ると景気後退を示します。
毎月第1営業日に発表されるので、ISM非製造業景況感指数と一緒にチェックすると良さそうです。
⑰シカゴ購買部協会景気指数(PMI)
シカゴ購買部協会景気指数(PMI)はシカゴ購買部協会が毎月公表している製造業の景況感を示す指標です。指数が50を超えると景気拡大、50を下回ると景気後退を示していると判断されます。
製造業の景況感については上で書いたISM製造業景況感指数もありますが、指数を出している機関が異なるので、ISM製造業景況感指数と合わせてチェックしておくことでより慎重な判断ができると思います。
まとめ
以上、米国株投資する上で知っておきたい17個の経済指標をまとめてまいりました。
これらの指標については、正直なところ私も常日頃からすべてチェックしているわけではなく、何か大きな話題やニュースがあったときや、追加投資を考えているときなどに見るようにしています。
なので「重要指標については毎回必ずチェックしなければ・・!」と意気込みすぎず、必要に応じて指標を活用するスタンスで、ときどき見るくらいがちょうどいいのかなと個人的には考えています。
資産運用は「退場しないで続けること」ことが最も重要なので、指標に一喜一憂せず、長期目線で続けていきたいですね。
それでは、また!
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