リンク薬局ができるまで (11)
【薬剤師会費】
年が明け、内装工事も無事に終わった。
と言っても、前も薬局だったテナントなので、
クロスと床を張り替える程度で、大きな工事ではない。
商売繁盛の神様、恵比寿さんにも行ってきた。
神頼みにも抜かりない。
1月21日、保健所へ開設許可申請書を提出しに行った。
業務手順書と指針の提出もあったので、併せて持っていった。
以下、保健所とのやり取りだ。
保健所「では、申請手続きに入ります」
稲田「お手数おかけしますが、よろしくお願いします」
保健所「ところで、薬剤師会さんには入りますか?」
稲田「会長と副会長にはご挨拶に伺いました。入れていただけるなら、入りたいと思っています」
保健所「強制ではないですが、何かあれば助けてくれることもあるので、入っておいて損はないと思います。
ただ、結構高いらしいですよ」
僕の開局する○○市と隣の□□市は薬剤師会費がそこそこするという噂は聞いていた。
(今さら隠したとしても意味がないことはわかっているが、
誰かに怒られる可能性もゼロではないので一応隠しておく)
ただ、他の県で開局している知り合いに聞いたところ、入会金30万円、それに月々12000円程度とのこと。
せいぜい高くて入会金も50万円くらいだろうと予想していた。
薬剤師会に入会の意向を伝えに行くと、
僕の予想を大きく上回る90万円近くの入会金がかかると言うのだ。
僕は愕然とした。
組織が嫌で独立するのに、
組織に属するために90万円ものお金がかかる。
しかも、今は一番お金がない…
薬剤師会に入らないという選択肢もあったが、
そこまでの度胸はない。
できれば皆さんと仲良しこよしでやっていきたい。
僕は何とか入会金のメドを立てた。
開局希望の方は薬剤師会費も事業計画にしっかり盛り込んでおいた方がいい。
のちのち効いてくるから…
【薬局事務員のお仕事】
保健所との話に戻す。
保健所「たった一人で、ほんとに患者さんゼロ、門前ナシ、施設ナシでできるんですか?」
稲田「やらないと仕方ないですよね…」
誰かにやらされてるわけではない。
自分で選んだ道だ。
患者さんがいないのも門前がないのも施設がないのも、全て僕の責任だ。
一切の言い逃れはできない。
そのかわり、リターンは独り占めできる。
そしてそのリターンがお金でないことはわかっていた。
報酬は薬局業務全てを一人でこなせる技術と経験だ。
これまで勤めてきた薬局では自分が管理薬剤師にも関わらず、
「明日から事務員が来なかったらどうしよう?」
という不安が常にあった。
勤めていた頃の僕は保険やレセプトについて、無知だった。
それが怖かった。
あらかじめ経験者を採用して任せることも可能だったかもしれないが、
それでは根本的な解決にはならない。
これまでと何も変わらない。
仕方ない。
自分でやるしかない。
自分をその状況に追い込むために事務員も雇っていない。
格好良く聞こえるかもしれないが、勘違いしないでほしい。
経営的にも事務さんを雇える程の余裕がなかったのだ。
いくら本で勉強したところで、
レセコンメーカーが変わったらわからなくなるとも聞いていた。
友人のアドバイスもあった。
「やってみたら、意外と何とかなるよ」
今から考えればかなり無責任なアドバイスだったが、
当時の僕が一人で始めるには十分だった。
僕はたった一人で始めることによって、大きな報酬を得た。
のちにこれが
「リンク薬局の稲田さん。たった一人で薬局やってるの」
という謎の?プラスの評判に繋がることになる。
続く
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