原点回帰で大復活!激動のケンタッキー
ケンタッキーが好調らしいです。
新型コロナウイルスで外食産業が前年同期比の70%付近で大苦戦している中、⽇本KFCホールディングス(※以下「ケンタッキー」)は9月30日までの決算で、売上高は13.8%増、営業利益は37.7%増でした。
飲食店が軒並みコロナに影響を受けている中でケンタッキーは落ちるどころか伸び続けています。
ただし、ケンタッキーのみではなく、ファストフード業界はテイクアウトとの相性がいいせいか、他の外食業態に比べると傷は浅いように見えます。
以下は各外食業態の前年同月比の推移です。
【ファストフード】
ケンタッキー、マクドナルド、モス、どれも好調をキープ。
都心の店舗は打撃を受けていますが、郊外の店舗は売り上げを伸ばしています。
【ファミリーレストラン】
10月以降で80%を超えていますが、それでも前年マイナスが続いています。
そのため、各社、テイクアウトへ舵を切っているものの、やはり店内需要が多かったため、損失した分ほど取り戻せていない状況です。
【カフェ・喫茶店】
ドトールは苦戦していますが、コメダ珈琲は伸びています。
コメダ珈琲に関しては調べていくと興味深い内容を発見したので、いつかのタイミングで紹介したいですね。
【牛丼】
すき家のゼンショーは家族利用をテレビCMで訴求している効果か、前年同月比を超えている月もいくつかあります。
一方、吉野家はポケモンとのコラボや新商品のプロモーションで売り上げは落ちているものの、大きく割れることなく推移しています。
【居酒屋】
居酒屋はかなり厳しい。
ワタミは居酒屋だけではなく唐揚げなど新業態も行っているものの、既存店の売上は低迷しています。
忘年会や新年会も絶望的な状態で先の見通しが立てづらい状況です。
【ラーメン・中華・うどん】
中華料理チェーン店でいちはやく出前館に力を入れてたものの、ちょい飲み需要を囲っていた日高屋が苦戦しています。
【回転ずし】
かっぱ寿司がやや落ち気味ですが、9月ごろから復調してきました。
テレビCMを中心に大々的にセールを打ち出すスシローと、gotoの大胆施策で話題になったくら寿司が強い。
※引用元:フードビジネス総合研究所
他の外食産業に比べると順風満帆に見えるケンタッキーですが、実は数年前まで前年比を連続で下回るほど苦戦を強いられていました。
こちらの数字をご覧ください。
ケンタッキーの「売上高」「客数」「客単価」を5年分まとめたものです。
特に注目したいのが2017年と2018年。
この年はほとんどの月で前年同月比を下回っています。
当時のケンタッキーは利益の80%近くを12月のクリスマスシーズンで稼ぐ状態でした。そのため、どうしてもクリスマスのイメージが強く、日常的に利用してくれるお客様は少ない。
そうした中で打ち出した戦略は「メニューの大幅な改革による新規顧客の獲得」でした。
食材にこだわったハンバーガーやサーモンフライなど、これまでのケンタッキーにない姿で勝負を仕掛けますがどれも惨敗。。。
結果的に連続で前年を下回る低迷期を迎えることになります。
しかし、現在は2019年から好調をキープ。
実際に私も福岡に住んでいた2019年、東京に戻ってきた2020年とそれぞれのエリアのケンタッキーを数店舗へ行ったことがありますが、ランチの時間帯と帰宅ラッシュの時間帯はテイクアウトを求めたお客様が常に3~4人ほど並んで待っている状態でした。
では、ケンタッキーは何を行って復活したのか?
それを紐解いていきます。
ブランド価値向上へ
新商品で惨敗した際、さらなる悪夢がケンタッキーを待っていました。
・煩雑化したオペレーションによる品質の低下
・絶対的な自信を持っていたオリジナルチキンへの度重なるクレーム
新商品の発売で煩雑化したオペレーションに疲弊する店舗スタッフ。
まさに経営層と現場の乖離が発生し、最悪の事態が起きました。
<絶対的な自信を持っていたオリジナルチキンへのクレームが発生>
1件だけではなく各店舗で同じようなクレームが発生しました。
それが実際に売上にも反映されてきます。
その時期が2016年~2018年ごろです。
結果的に前年同月比で売上や客数が下回る月が続出しました。
さらに、2020年は⽇本KFCホールディングス株式会社が創業50周年を迎えます。
このままだと、悪化の一途を辿る。
今の状態で創業50周年の節目を迎えていいのか。
そこで、ケンタッキーは組織として大きな改革を打ち出します。
中期経営計画『創業50周年に向けて』
ケンタッキーは創業50周年に向けて、改めてケンタッキーの価値を見つめ直す大規模なリブランディングを計画します。
2018年~2020年に向けて「おいしさ、しあわせ創造」の経営理念の下、主力のケンタッキーフライドチキンにおいては、以下3つの基本テーマを実施して、持続的なブランド価値向上を図っていく中期経営計画を定めました。
①原点回帰
②お客様目線(現場目線)
③人財育成
① 「原点回帰」
誰にも真似できない商品「オリジナルチキン」をお得感のあるメニューで提供し、期間限定の「創業記念パック」「30%OFFパック」などがヒット。
ケンタッキーフライドチキンらしい、「驚き」と「ワクワク感」のある商品を提供し続けた。
② 「お客様目線(現場目線)」
おうち時間の急増によりテイクアウトやドライブスルー、デリバリーを強化。
③ 「人財育成」
お客様に「最高の体験」を提供するために、商品の品質(Quality)、サービス(Service)、清潔さ(Cleanliness)におもてなしの心(Hospitality)をもって接する「QSC×H」活動を継続。調理技術の教科指導、サービスレベルの向上など実施。
これらの計画を忠実に再現していき、ついにケンタッキーはコロナ禍においても前年同月比を超えてきました。
特に店舗数に注目。
2016年から直営店は減っているのにもかかわらず、売上高は増加しています。フランチャイズも店舗当たりの売り上げを大きく伸ばしました。
では、実際にどんな施策をやっていたのか洗い出していきます。
特別な日から日常へ
冒頭でも述べた通り、当時のケンタッキーは利益の約80%をクリスマスで稼ぐ状態でした。
どうしても広告効果かクリスマスで食べるイメージが強く残っています。
そこで打ち出したテーマがこちら。
「今日、ケンタッキーにしない?」
このコピーは高畑充希さんのテレビCMで今ではお馴染みになりました。
さらに注目したいのがテレビCMの内容。
シーズンによって変わるものの、ほとんどが1人利用ではなく、大人数で利用しているイメージを持たせています。
1人でも充分に楽しめるケンタッキーを大人数で利用することで、自分だけではなく家族や友人が喜んでくれている姿をイメージして利用するお客様が増えていきます。
結果的に1人あたりのLTVが上昇。
さらに2018年ごろからランチメニューを導入しました。
ワンコインで利用できるランチメニューを導入することで1人あたりの来店回数も増やすことで、ケンタッキーをお客様のより身近に日常生活へと近づける施策を展開していきます。
さらに、回転数を上げることでオリジナルチキンを作り置きせずに常に作りたてを提供できる状態を生み出します。
ランチ需要でこれまでになかった顧客層の開拓に成功し、テイクアウト需要の増加で1人あたりのLTVも上昇させることに成功しました。
オリジナルチキンの見直し
ケンタッキーではセントラルキッチンを持たずに店舗でほとんどを調理しているそうです。
効率化を考えるとセントラルキッチンを導入すべきですが、どうしても味が落ちてしまいます。
絶対的な自信を持ったオリジナルチキンの味はどうしても落とせません。
さらにケンタッキーは創業者のカーネルサンダースが残したレシピを忠実に再現して調理しています。
そして、全国の店舗が均一したクオリティで提供できるように「マイスター」という独自の資格を保有したスタッフが各店舗を回って調理工程が正しく行われているかをチェックしていきます。
ケンタッキーが追い求めていること
売上が低迷した2017年ごろ、これまでにない新商品を打ち出しましたがどれも惨敗。
企業視点が強すぎてお客様がついてこれませんでした。
その反省を踏まえて、ケンタッキーでは常に「お客様がケンタッキーに何を求めているのか」を認識しているそうです。
これからのケンタッキー
今後もお客様が何を求めているかを常に追及し続けます。
そして、加速させていく動きとして主に以下5点。
・ネットオーダーや公式アプリの利用促進による日常化施策
・デリバリーやキャッシュレス決済の強化
・ピックアップロッカーやETC多⽬的サービスによるテイクアウト促進
・さらなる品質の向上
・体験価値を向上させる店舗へ大規模改装
これらに加えて目指すところは、
「やっぱり、ケンタッキー」
本当の美味しさを通じてお客様とケンタッキーの関係者をしあわせにする企業を目指していくそうです。
個人的にも月に1~2度は利用しています。
妻も大好きなので2人分を必ず購入します。
なので1回あたりは約1,500円くらい。
大きなオリジナルチキンにかぶりつく背徳感と美味しさで満足度は他の外食チェーン店に比べて圧倒的に高く感じています。
これからも利用し続けたい。
今後のケンタッキーの動向も大いに楽しみ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?