”強力なプロダクトって実は気づかなかったりする”ってことに気が付いた「大戸屋」をマーケティングトレース
手作りにこだわった定食を提供する「大戸屋」が正念場を迎えています。
元々は激化する外食市場の中で苦戦を強いられていたのですが、先日の某テレビ番組でその実態の一部が放送され、世間にマイナスイメージが一気に広がりました。
いわゆる、炎上したんです。
僕自身、大戸屋には深い思いでがあります。
18歳で芸人を目指して依頼お世話になっており、今でも利用する大好きな定食屋です。
当時、本当にお金がなかった僕にとっての大戸屋はちょっとしがご褒美でした。
ライブでウケが良かったら、そのご褒美として大戸屋で軽く打ち上げ。
それでも、お金がないから頼んでいたのは夜だったけど大戸屋ランチ。
かぼちゃのコロッケは特に大好きで、一口で食べるともったいないから半分に切って少しずつ食べて、竜田揚げは目玉焼きにつけて食べる。
いま食べても、当時の気持ちを思い出します。
そんな思い出深い大戸屋。
近年では業績悪化以外にもお家騒動、バイトテロなどメディアに出てくるのはネガティブな内容ばかり。
さらに、追い打ちをかけるかのように某テレビ番組の取材で、より現場の苦しさを知り、胸が痛い気持ちでした。
しかし、その業績悪化の原因は他社と比較ても、その料金の割高具合だと思っておりましたが、とある記事を読んで「果たしてそれだけなのか?」を疑問を抱くようになりました。
現行のオペレーションで、あの商品のクオリティだったら、安すぎるとのこと。
大戸屋が不調の要因は値段だけじゃない、復活するにはどうすればいいのかを僭越ながらマーケティングトレースしました。
【会社概要】
・1958年池袋で「大戸屋食堂」から始まった
・1983年株式会社大戸屋を設立
・1992年吉祥寺店改装により今のオシャレな内装へとシフトチェンジ
・463店舗(国内 353店舗、海外 110店舗)
・従業員数660名
【3C分析】
Company:自社
徹底した店内調理とこだわりの店づくりで全国に店舗拡大
Customer:顧客
老若男女問わず全ての世代
Competitor:競合
格安の外食チェーン
【5Force分析】
業界内の競争:△
外食チェーンのみならずコンビニなどの小売りでも商品のクオリティが向上
新参者の脅威:△
毎年のように新たな事業形態の飲食店が生まれている
買い手の交渉力:△
牛丼チェーンなどが格安でハイクオリティな定食を次々と開発している
売り手の交渉力:〇
徹底した品質クオリティにより味の差別化を確立
代替品の脅威:△
競合の外食チェーンが定食の開発に力を入れている
【SWOT分析】
Strenghs:強み
①徹底した商品開発と店内調理で味の差別化を確立
②女性でも気軽に来店できるように1階に店舗を設置しない(視覚的要素)
Weaknesses:弱み
①慢性する人手不足
②他社の外食チェーンと比べると割高
Opportunities:機会
①主に各都市の主要エリアには出店確保済み
②海外に110店舗展開
(アメリカ、タイ、台湾、香港、上海、インドネシア、シンガポール、ベトナム)
Therats:脅威
①他社の低価格でハイクオリティな定食メニューの開発
②他社のランチメニュー開発や強化
もし、自分が企業のCMOだったら。
Strenghs(強み)×Opportunities(機会)
①複数人利用で料理をシェアして楽しむ新たな利用価値をプロモーション
②各店舗の看板スタッフや店長をアピールして店舗のファン作りを確立
Strenghs(強み)×Therats(脅威)
①宅配事業を拡大
②オードブルやケータリング事業に参入
③ランチとディナーで限定メニューを開発し、それぞれの時間帯で客層をセグメント化
Weaknesses(弱み)×Opportunities(機会)
①一部店内調理を機械化して業務の効率化
②セントラルキッチンを新設して業務の効率化
Weaknesses(弱み)×Therats(脅威)
①店舗の縮小
②「肉」「魚」「野菜」「丼もの」「麺類」に特化した独自ブランドの店舗を開業
③ディナーではお酒が飲める専用スペースを確保し、飲酒利用と食事利用を住み分けして提供
強力なプロダクトがあるからこそ、大戸屋の未来はまだまだ明るいと考えています。
さらに、プロダクトをメニューだけに絞らず、他にもお客様に提供できる価値はないかを調べるため、経営理念と基本方針をもう一度見てみることにしました。
【経営理念】
人々の心と体の健康を促進し、フードサービス業を通じ人類の生成発展に貢献する。
【基本方針】
一、私たちは心のこもった親切さ優しさでお客様に感動していただこう。
一、私たちは心のこもった美味しい料理をすばやく提供し、お値打ち価格でお客様に感動していただこう。
一、私たちは心もお店も清潔で素敵でお客様に感動していただこう。
一、私たちは社会にお役に立てる人を育て、お店を造り、地域社会に愛と感動と安らぎを感じていただくように努力しよう。
以上のことを考えると、大戸屋は「お客様に対しての提供価値をメニューにのみこだわりすぎているのではないか」という疑問が湧いてきました。
某テレビ番組でのエンディング間近、とある店舗の店長さんがイキイキと接客をしている姿を見た時に、お客様に与えることができる価値って実は接客で「また来たい」と付加価値を与えることなのではないか、そう思ったんです。
そうだとすると、手作りにこだわることも非常に重要ですが、「手作り」を再定義して、お客様に提供できる価値に時間をかけていく必要があるのではないか。
コンセプトの”もうひとつの食卓”、”「いただきます」を、もっと笑顔に”を確立させるにはメニューは一つの手段です。
さらに手段を増やすために接客でコンセプト確立させることも可能だと考えます。
例えば、、、
・来店時の「いらっしゃいませ」を「おかえりなさい」で統一
・退店時の「ありがとうございました」を「またいらっしゃい」や「いってらっしゃい」に統一
・各席にお客様に向けて大戸屋からの毎月のメッセージを配布
・瓶ビールを販売開始し、一杯目は店員が注ぐ
・お客さん同士でコミュニケーションを取れる食事会、名付けて「親戚の集り」を定期的に開催
とにかく、大戸屋が好きなので、復活に期待します。
余談ですが、1992年に吉祥寺店改装により今のオシャレな内装へとシフトチェンジしたとのことですが、店舗改装の原因は火災によるものだったそうです。
炎上して今の業態を確立させた大戸屋。
今回は違った形での炎上ですが、その不死鳥のごとく立ち上がる経営に期待します。
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