一生懸命考えたネームが、一瞬にして燃えてなくならないように、今持っておきたい視点。
ワークマンが、神奈川県横浜市にオープンした「作業服・作業用品」を扱わない新業態「 #ワークマン女子 」が連日大盛況のようだ。
当初は1店舗だけの「コンセプトストア」という位置付けだったが、評判が高いことから、今後10年間で400店舗出店の全国展開をすることを決定したとワークマンは発表している。
密を回避しようという空前のアウトドアブームの渦中において、もはや成功は既定路線のようにも思えるが、当のワークマン女子本人たちからは懸念や批判などのネガティブな声も多いようだ。
「たくさんの作業着が並ぶ中から、女子でも着られそうなものを探すワクワク感がこれでは味わえない」
「愛用者だけど、彼氏とワークマンに行ってお揃いのウェア探してキャンプ行く予定を立てたりするのが楽しい。あえてメンズを着たいのが女心」
「ワークマン好きだからこそ、一時の流行で○○女子人気にあやかって大量出店は心配」
そして、ワークマン女子たちからは「女子」と冠した「ネーミング」に対しての不満も見受けられる。
「あえて女子と性を区別する表現は必要なのか」
「ジェンダー観が古い」
過去にも「美術館女子」が激しく燃えたこともあり、ジェンダーレスが叫ばれる昨今では「○○女子」を企業が打ち出すことに対して、批判的な意見が多く集まり、炎上するケースも少なくない。
ワーク「マン」なのに、ワークマン「女子」。
たしかに私自身も、名前からして矛盾を感じないこともない。
しかしおそらく、「ワークマンプラス」の成功を前にして、「ワークマン」の知名度を活かさないという手はない、と考えてのことだろうと察する。
結局、サイゼリヤの正垣氏のいう「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」のとおり、「いい名前が売れるのではない 売れる名前がいい名前だ」であるため、このネーミングの成否の答え合わせはまだ先になるだろう。
最近、英国発のナチュラルコスメブランドの「LUSH」が、「ダイバーシティ&インクルージョン」の観点から一部の商品名を変更したというリリースがあった。
性別や人種、年齢、多様なライフスタイルなどへの配慮が十分にされているか、という視点に重きを置き、すべての顧客により楽しんで心地よく商品を使ってもらうために全商品名に対してレビューを行ったのだという。
人魚姫は「BB シーウィード」に代わり、恋する十字架は「パフィー」に代わり、リズム&ブルースは「バランス」に代わる。
名前を変えることによって今までの顧客が離反してしまう恐れがある一方、名前を変えることでブレイクしてきた商品も数多い。そういう意味では不安と期待の両方が入り混じっているような混沌とした状況なのだろう。
それにしても、私の知る限りでは、これだけの数の商品名を「同時」に変更するという企業行為はかつてなく、「LUSH」というブランドの確固たる意思を感じる。
これからのネーミングにおいては、顧客ニーズだけでなく、社会ニーズの捕捉がより求められるようになる、と感じさせる一件でもあった。
最近も社会のニーズの補足を誤った結果、アツギのタイツやタカラトミーの取った動きが炎上の真っ只中である。
今までにも、社会(下の場合、特に女性)のニーズの補足を誤った結果、燃えた商品や広告は数知れない。
一生懸命考えたネームが、一瞬にして燃えてなくならないように、今の時代「ジェンダー炎上」や「ダイバーシティ&インクルージョン」は欠かせない視点と言っても過言ではない。
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