「頭文字A」に惹かれるワタシがいる?
マーケティングとは商品の戦いではない。
「知覚」の戦いなのである。
これは「あたるもマーケ 売れるもマーケ」の中に示されている普遍的なマーケティング法則のうちの一つだ。
この法則は、マーケティングの世界に存在するのは、ただ顧客や見込み客の心の中にある「知覚」のみで、知覚こそが現実、その他のものは全て幻であるとするものである。
平たくいえば、
「私たちは信じたいと思うものを信じ、味わいたいと思うものを味わう」
「ベストな商品などありっこ無い」というものだ。
また、経営学者のピーター・F・ドラッガーは、
「人は自分自身が"期待"する事象しか知覚できない」
として、知覚を促すための「期待」こそがコミュニケーションを促すための鍵だと考えた。
実際、私たちが今まで試したことがないものを試すのは
「面白そう」
「美味しそう」
「楽しそう」
このような「期待」があるからこそである。
この二つを合わせて考えると、マーケティングコミュニケーションにおいては「いかに期待をしてもらい、そして知覚してもらうかが勝負になる」というウルトラ重要な視点を持つことができる。
以前私が勤務していたマーケティングファームで指導をしてくれていたコンサルタントは、
「顧客を"買う気"にさせるのがマーケティング」
「そのために一番大事なのは顧客の理解」
そう言ってとにかく「顧客を知ろう」と努めていた。
思うに「顧客は何に"期待"をするのか」を徹底的に分析していたのだ。
商品やサービスの「自己紹介」の一丁目一番地となる「名前」は、顧客の期待を生むファーストピンになり得る。
したがって、マーケティングコミュニケーションの施策上、最重要な項目といっても過言ではない。
メディアプランナー草場滋氏の著書「買う5秒前」には、
「人はこういうことに"期待"を持つのではないか?」という仮説が、
「本能」や「ソーシャル」など6つのカテゴリーに分類され載っている。
私たちが顧客の「期待」を想定するのにとても役立つ参考書だ。
例えば、
「Bコースを選ばされるワタシ」
「小ネタが欲しいワタシ」
「作り手になりたいワタシ」
「終わりがあるから楽しいワタシ」
このような仮説が約60個ほどのケーススタディと一緒に紹介されている。
本の初版は2015年でもう5年以上も前のものだが、その中身は今でも通用する本質的なものが多い。
経営、R&D、マーケティング、ブランディング、広報PR、営業まで幅広い人にとって参考になるだろう。
私からはこの中から、こと「ネーミング」の参考になりそうな「頭文字A」に惹かれるワタシがいる?という一つの仮説をご紹介したい。
この仮説は、私たちが「惹かれる商品・サービス」を並べてみると、奇しくも「頭文字A」のものが多く並ぶというところから来ている。
・Amazon
・Apple
・ARASHI
・AKB48
・ANA
・アボガド
・アスパラガス
そして、いずれも「優れたもの」だが、惹かれる理由は本当にそれだけなのだろうか?という問いを発している。
この問いに対する草場氏の仮説は以下の通りである。
「頭文字A」は、
・世界中のありとあらゆる言語の最初の一音(アルファベットも五十音もフランス語もアラビア語もそう)
・人間がこの世に生を受けて発する最初の言葉(アー→マー→ママン)
・ゆえに私たちが最も「馴染みの深い言葉」なのではないか
・少なくとも「ラ行」や「ヤ行」からはじまる言葉よりも馴染みは深い
・ネーミングの良し悪しがヒットに結びつくケースは少なくないが「頭文字A」にはそれとはまた違う次元で、何か人間の「本能的な部分」に訴える力があるように思えて仕方ない
確かに、
・Audi
・A BATHING APE
・American Express
・Adobe
・アイアンマン
・アントマン
・アベンジャーズ
・アフター6ジャンクション
・ANTCICADA
・アルビレックス新潟
・アクセンチュア
・アース製薬
・アルクアラウンド
・アグリイノベーション大学校
こんな具合に「頭文字A」のものは悩まずとも結構スルスルと出てくることを考えると「頭文字A」に惹かれるワタシはあながち間違いとは言えない。
むしろ、精度の高い仮説と言える。
「頭文字A」に惹かれるワタシ。
ネーミングをする時の視点として所持しておくと、いつか役に立つ時が来るかもしれない。
そんな草場氏は、今販促会議で「買う5秒前2」として、最新の「〜なワタシ」のコラムを書いている。
いずれも「何か面白そう」と「期待」をしてしまうタイトルだ。
有料会員限定の記事だが、読めば何かの参考になるかもしれない。
よろしければ。
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