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今更ながら劇場版鬼滅の刃を見たので、全力でレビューしてみた

今更ながら、鬼滅の刃劇場版無限列車編を見てきました。
日本での公開日が昨年の10月16日なので、約4ヶ月越しの鬼滅の刃でした。
(映画を見たのは2月末でした)

今回無限列車編のレビューをするに当たって、原作1巻から最終巻まで読み、アニメも1話から見直しました。
ガチファンの方には納得がいかない評になるかもしれませんが、一人の映画ファン、アニメファンとして出来ることはしたと思いますんで、一意見として見ていただけると幸いです。

もう一通りの人が見た作品と割り切って、今回はネタバレ全開でお送りしようと思います。

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光と水の表現

アニメ版でも感じましたが、映像の美しさが際立っている作品だと思いました。
原作の吾峠呼世晴先生の画力がアレなので(あくまでも前半の話ね)アニメ版での水の呼吸の表現や戦闘シーンの迫力は圧巻です。
原作を軽く読んでからアニメ版を見たので、吾峠先生の表現したかったのはこういうことかと腑に落ちました。
(エヴァのアニメシリーズ、旧劇を見てから、序を見て夜のシーンの初号機のボディーが紫と蛍光グリーンになっているのを見て、制作陣が表現したかったのはこういう事かと納得した感じに似ているかも)

話が脱線しましたが、映画冒頭のお墓参りのシーンでの木漏れ日や木々の青さの表現。
中盤、炭治郎の無意識領域の中での水や雲の表現(この部分は後述します)
プレステのゲームをプレイする時に、グラフィックの美しさに目がいく類のオタクの僕は、新作ゲームが出ると光と水の表現に目が行きます。(今やっているFF7Rのグラフィックが凄かったです)

映画冒頭の木漏れ日の表現を観て、この作品を劇場で観て良かったと確信しました。
この表現ができるのも、アニメ制作の全てを自社で賄える【ユーフォーテーブル】だからこそ。
外注せず、きちんとアニメーターに給料を払い、毎回同じチームで作品を作り続けられる。アニメ制作会社としてはかなりホワイトな会社だそうです。

きちんと調べてみたら、劇場版空の境界を作っていた会社なんですね。
空の境界シリーズ好きでした。

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※ちなみに写真は炭治郎の無意識領域のモデルになった?ウユニ塩湖です。


良くも悪くも丁寧に作った三幕構成のストーリー

ストーリーの部分ですごいと思うのが、テレビシリーズの続きでありながら、映画単体で成立するストーリーだった事だと思います。
僕が子供の頃の東映まんがまつりは、映画オリジナルのストーリーと敵役がいました。(クウラとかブロリーとかそれはそれで熱かった!)

簡単に三幕構成をまとめると
一幕目 無限列車乗車〜夢から目覚めるまで
二幕目 炭治郎、伊之助VS魘夢
三幕目 煉獄さんVS猗窩座

以下各パートを掘り下げて行きます。

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良くも悪くも丁寧すぎる一幕目

アニメ一期を見ている事を前提とした作りかと思いきや、一幕目の冒頭〜夢の中で各キャラクターの人物像や特徴を説明し、きちんと交通整理をして、いきなりこの映画だけを観た人も感情移入できる作りになっていました。

子供の付き添いで行っただけの親御さんが、この作品をきっかけに鬼滅ファンになってリピートしたなんて話を聞きますが、この丁寧な作りが影響しているんでしょうね。(ちなみに、お母さん層は煉獄さんファンになる率が高いそうです。この色男!)

アニメシリーズからそうでしたが、原作の隅に書いてある小ボケ、小ネタまで丁寧に拾って作っていますが、すでにアニメシリーズを見ている僕は、映画冒頭の人物紹介〜夢の中での掘り下げが、若干くどく感じました。

丁寧な作りがよくも悪くもまどろっこしく感じて、もう少しテンポよく進んだ方が映画全体の流れとしてまとまりがあったように思います。

特に、炭治郎が夢の中で家族と話すシーンは、原作から追加したシーンも多く、炭治郎の優しさや純粋さを見せつけられる度に、普段の自分が恥ずかしくなってきて…この部分は後述します…

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テンポアップする二幕目

二幕目からは、魘夢との戦闘シーンが中心になり、各キャラクターの派手なアクションも相まって、ここからはテンポ良くストーリーが進んで行きます。

特に、狭い車内を縦横無尽に動き回る善逸、伊之助と煉獄さんのアクションシーンが良かったです。
ちなみに、善逸は男の子からの支持が高いそうです。
縦に狭い車内で、車両の端から端まで一瞬で移動し、乗客を守りつつ列車と融合した魘夢の肉体を斬りつけていく場面をケレン味たっぷりに見せてくれます。

夢の中で家族に責められ魘夢にブチ切れたり、原作には無かった炭治郎が列車の車掌さんを担いで逃がすシーンが追加されていたり、炭治郎の行動から感情表現が多く見られたパートだと思います。

このパートでは、伊之助が頑張ってます!猪突猛進と叫びながら魘夢の肉片?を切りまくり、真面目な炭治郎と親分肌の伊之助の掛け合いも微笑ましく見られます。
映画の最後のシーン含めて、伊之助って本当に欠かせないキャラだわ。

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少しだけ残念な部分を語るなら、魘夢のキャラの掘り下げをもっとして欲しかったという部分です。
ネット民に散々おもちゃにされた鬼舞辻様のパワハラ会議の直後なんで、どうせなら魘夢のキャラを、人間でいた頃から救いようの無いブチギレサイコパス野郎にしてもらえたらもっと楽しめたんじゃ無いのか。
那田蜘蛛山編の累みたいな、敵ながら感動する話にされても違うと思うけど、もっと魘夢を活かす道があったんじゃ無いかと思います。

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この殴りたくなる表情たまんない!


ただただ見惚れる三幕目

さて、三幕目は煉獄さんVS突然降ってきた猗窩座戦。
この作品一番の見せ場のシーンです!

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このパートでは、煉獄さんと猗窩座の火花が出るような(炎は常に出ているけど)死闘を見られます。

アクションシーンは楽しめますが、内容としては猗窩座がひたすらに『鬼になれ!』煉獄さん『断る!』の繰り返し。
きっと猗窩座は、自分がより強くなる為に煉獄さんが鬼になる事を求めたんだと思います。
自分が強くなって、上弦の鬼の上位に入れ替え戦を挑むために、不死の鬼同士ひたすら殺し合いをして力をつけたかったんだと思います。

前半の炭治郎達の掘り下げの少しでも、魘夢と猗窩座のキャラの掘り下げに使ってくれればと思わずにはいられません。(魘夢の過去は描かれないし、猗窩座の過去のストーリーは原作後編で明かされるので仕方ないですが…)

最後は炭治郎と伊之助の助太刀もあり、煉獄さんの奥義で猗窩座に致命傷を与え、太陽の光から逃げ退場してエンディングに向かいます。

最後に煉獄さんが、お母さんに会えた瞬間はグッときました。


炎柱 煉獄杏寿郎

ここで煉獄さんの生い立ちや家族構成を紐解いていこうと思います。
幼い頃にお母さんを亡くし、元炎柱のお父さんは飲んだくれ、剣の才能が無かった弟はコンプレックスを抱いている。
鬼殺隊の中では柱として後輩を引っ張っていかなければいけない立場で、誰にも甘える事ができなかったんだと思います。

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母親から教わった「弱き人を助けることは強く生まれた者の責務です」
この言葉が煉獄さんの行動原理であり、死の間際でもブレる事の無い信念でした。

この背中を見た炭治郎達は、物語の最後まで煉獄さんの意思を次いで鬼と戦って行きます。(煉獄さんの日輪刀の鍔は、炭治郎の新しい日輪刀に付けられ最終的に鬼舞辻無惨と戦います)

そんな煉獄さんが命をかけて自分の責務を全うし、炭治郎と伊之助そして乗客の命を守り切り、最後の最後でお母さんに会うことができました。
子供の頃から誰にも甘えることができなかった煉獄さんが、死の間際にお母さんに見せた子供のような笑顔。(この部分で泣きました)

れんえがお


性格は真っ直ぐで裏表がなく、誰からも慕われる兄貴肌の人物。
『よもやよもや』や『柱として不甲斐なし!穴があったら入りたい!』など若干の天然要素はあるものの、常に堂々としている人物です。
作中では20歳だそうです…常に瞳孔開気っぱなしだけど、カッコ良すぎるぜ兄貴!

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煉獄さんの死後、カラス達によって訃報を聞いた他の柱のリアクションからもその人柄が伺えました。
原作確認しましたが、カラスは涙を流していませんでした(ありゃやりすぎ感ありましたね)

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サイコパス 竈門炭治郎…

今回の劇場版の前評判や既に見た友人の話を聞くと『涙が止まらなかった』『バスタオルが必要』と聞いていましたが、前半〜中盤は泣けませんでした。

理由は炭治郎です…

魘夢が見せた夢の中での家族との優しさに溢れたやり取り、純粋さを嫌というほど見せつけられ、挙げ句の果てには無意識領域のウユニ塩湖…結核の少年の心を救った光の小人…
あのシーンは、上映中思わず『うわ〜』と声が出ました。

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ここまでくると、陰で万引きやカツアゲでもしててくれないと、同じ人間と思えなくなり、感情移入できませんでした。

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少年漫画として、子供が憧れる対象として、優しさや純粋さを強調したいのはわかるんですが、限度ってもんがありまっせ炭治郎さん!
(僕が子供の頃は、心の清らかな人間じゃないと筋斗雲に乗れないとか、純粋でいないとスーパーサイヤ人になれないくらいだったんだけど、ここまでくるとちと説教くさい感じがしました)

無惨様より鬼より怖いぜ炭治郎さん…


総評

映画オリジナルストーリーで無く、原作の中のストーリーを、映画としてきちんと描き切り、初見の人にも配慮し、コロナ禍の中しっかりと興行収入も伸ばしていく。(3月8日時点で384億円でした)
原作とアニメ版の前評判があったとしても、中々に高いハードルだったと思います。(グッズやDVDの売り上げも入れたら、400億超えるんでしょうね)

鬼滅の刃のテーマの一つに【継承】があると思います。
1000年続く鬼舞辻無惨様と鬼達との戦いの中で、鬼殺隊の意思や技を継承していく。
今まで何度も繰り返されてきたであろう【継承】と【別れ】が今回の無限列車辺の炭治郎と煉獄さんのエピソードに集約されていると思います。

不死者である鬼と命に限りのある人間の対比を、列車という一方通行に走る舞台装置の中で、夜の闇と不可逆的に迎える夜明けを使い、人間賛歌をドラマチックに描き切った作品だと思います。

今年始まるテレビシリーズ2期や今後の映画版も楽しみです。
最終章、無限城辺を映画版で前後編なんて考えると、胸熱過ぎて…

長々と書きましたが、今後もにわかファンとして鬼滅の刃楽しみにしていこうと思います。
お付き合いいただきありがとうございました。


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